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自動販売機の前で。政宗と慶次。
「あ、間違えた」
「え?」
政宗の唐突な呟きに顔を上げたのと同時に、ガタン、という音が耳に届いた。
何かと思って視線を先ほど向けていたのよりも下へと下ろすと、そこは自動販売機の商品とり出し口であって。
ちらりと見えるのは、可愛らしい桃色の紙パック。
それと彼のボタンを押す指先を見比べて、そのボタンの隣のボタンの商品を見て、成程、と慶次は手を打った。
「あぁ、押し間違えか」
「だから間違えたっつってんじゃねぇか。ったく……どうすんだこれ。…飲むか?」
「いや、ちょっと遠慮する」
いちご牛乳を取り出し眉を寄せる彼の言葉を笑いつつも丁重に断って、自分は自分で飲みたかったものを手に入れるべく硬貨を自動販売機に入れる。
そうしてボタンを押す、その寸前にピ、という音が鳴った。
明らかに鳴るのが速かったその音に疑問を抱く前に、ガコン、と耳にするのが二度目となる音を聞いた。
見れば、それの色は政宗が先ほど取り出したものと同じ物であり。
「残念だったな」
横から聞こえてきた至極満足そうな声音に、ようやく何が起こったのかを悟る。
政宗だ。彼が、慶次がボタンを押す前に他のボタンを勝手に押したのだ。つまりまぁ……道連れ認定された、と言う事。
二個目のいちご牛乳に思わず頬を引きつらせていると、若干勝ち誇った様な、くつくつという笑い声が聞こえた。
「笑いやがった仕返しだ。……ま、だとしても飲めねぇこともないわけだし、どっか適当にだれにも見つからないような場所に行って飲もうぜ」
「仕方ねーか……」
実際、買ってしまった物は買ってしまった物なワケだし、飲まずに捨てると言うのも勿体ない。それに、飲みたかったものを二個目を買うのも何だか馬鹿げている気もする。さらに付け加えて、こんな可愛らしい物を飲む姿を知り合い……特に半兵衛とか秀吉とか……に見られたら学校生活が完全に終わる。
諦めの息を吐いて、慶次は政宗と共に自動販売機の前を後にした。
いちご牛乳のボタンのそばには、きっと別の何かがあったりしたんでしょう。何なのかはご想像に。
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