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生徒会眼鏡週間、三年生verです。
その光景に口をあんぐりと開けたのは佐助だけでは無かった。
かすかも、元親も、市も、その二人を見た者は一人残らず似通った表情を浮かべていた。
……無理も無い話だろう。
「……何を見ておるのだ」
「やはり似合わないのではないか?」
毛利元就と浅井長政の二名が、いつもと違うものを付けていたのだから。
唖然とした表情を浮かべる生徒の集団の中で、元就は薄いレンズ越しに元親へと鋭い視線を付きたてた様だった。そうして生徒会長は不機嫌そうな表情を隠そうともせず、そのまま何も言わずに教室の中へと立ち入って行った。
こうして衝撃の半分は視界の中から立ち去ったわけなのだが……しかし、それでもなおも、衝撃を受けた生徒の時間は止まったまま動くわけもなく。
そんな中で一番最初に我に立ち返る事が出来たらしい市が、おずおずと、元就の入って行った教室へ視線を向けていた長政に声をかけた。
「長政様……これって……?」
「……あぁ、大したことではないんだが」
と、視線を市へと向け直しながら、彼は言う。
「昨日、生徒会で『眼鏡週間』実現とやらを討議した結果、とりあえず我々が先に試しに実施することになったのだ」
「いや、それって十分大したことあるじゃん!?」
あっさりととんでもない事を口にする長政に、思わず佐助はツッコミを入れた。
すると、首を傾げられた。不思議そうな表情だが、その表情ならこちらがしたい。
「そうか?」
「そうだよ……それって下手したら俺様たちにも火の粉が飛ぶし、ね?」
仮に『眼鏡週間』とやらが実際に決行されてしまった場合、週間、というのだから一週間だけで、さらに土日は休みだから五日間だけの着用になるのだろう。たかだか五日間程度である。月間にされるよりは遥かにマシだと、そう思えなくはない。
だが、何が悲しくて視力が1.5以上もある生徒……例えば自分とか……まで眼鏡をかけなければならないのだろう。眼鏡好きとかいうわけでもないのに。それに、中には2.0以上なんていう有り得はするが、なかなか持つまでには至れない視力を持っている生徒だって、学院の中にはいるわけだからやっぱり無意味だと思う。ちなみにその視力の持ち主というのは幸村のことだったりする。
彼の場合はきっと、かけていた眼鏡をどこかに落としてそれで終わりなのだろうとため息をつきながら、佐助は肩を竦めた。
「……ま、決定されるなら従うしかないわけだけどさ、やっぱそんな馬鹿げた案は決行するべきじゃないと思うね。反発強いと思うよ?」
「ほう。あの生徒会長に普通の生徒が反発が出来るのか」
「かすかちゃーん……それを今言っちゃダメだよー」
「事実を言ったまでだ」
そう言った彼女は鼻を鳴らして、首を傾げた。
「だが……誰だ?そんな馬鹿げた案を出した阿呆は。今見た所では、どうやらお前でも毛利でもないようだが……」
「意見箱があるだろう。あれに誰かがそれを書いた紙を入れていたのだ」
「で、それを生徒会長さんがわざわざ読まなきゃならなくなった理由はどこ?あの人、そーゆーの割とスルーするでしょ」
「あぁ、それはそこにつったっている奴のせいだが」
「へ、俺?」
突然話を振られた元親はきょとんとした表情を浮かべ、自身で自身を指さした。
「俺、何かしたっけか?」
「昨日ひょこりと生徒会室に顔を出して、毛利に向かってやる前から止めるなとか言ったのは貴様だろう。……それよりも貴様、自分の発言を覚えていない、だと……?」
『何か』のスイッチが入った様子の長政に対して、ほんの少し後ずさる元親。
それを見ながら佐助が思った事と言えばただ一つ。
ご愁傷さま。
「……いや、だって絶対にそれ何気なく呟いた言葉だし、逆にきっちり覚えてろっつー方が無茶……」
しかし無事を諦めきれないらしい元親は、往生際悪く言い訳の様な……否、言い訳そのものでしかない言葉を口にしようとした。そういうのが長政に対して完全に逆効果であると言う事実は、どうやら今は忘却の彼方に去っているらしい。
故に、長政が警棒を取りだして元親に付きつけるのを見、佐助はほんのちょっと納得してしまったのである。
あぁやっぱりこうなるんだよねぇ、なんて思いながら何度か頷いていると、長政の大声が廊下に響いた。
「そのような言葉など聞かぬ!己の発言に責任を持たぬその愚行……悪以外の何物でもない!覚悟して正義の鉄槌を受けろ!」
「うわやべっ……じゃ、俺逃げるわ!後よろしく!」
「逃がすかッ!」
そんなやり取りの後に騒々しく走り去っていく二名を眺め、佐助はポツンと呟く。
「もしかして、生徒会の二年生組も似た様な目にあってるのかねぇ……」
「そうなんじゃないか?」
「……生徒会も大変だね……」
帰ってきた反応は二者二様で、この時点でとりあえず言える事は、普通の生徒会はここまで大変な事にならないだろう、ということだけだった。
元就さんのところに慶次くんを連れてきて事情説明したらどうなるかなぁ…(眼鏡週間ver二年生より)。
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