白辺高校 未来の話

十年後くらいの話かなぁとか。デュエル兄妹のお話。

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「兄さんは何時になったら結婚するの？」

　そんな言葉を唐突に口にされ、飲んでいた茶を吹きかけた。

　それをどうにか堪えた所で、今度は盛大にむせる。

「がっ……げほっ……！」

「大丈夫？」

「か…っは……………これが、大丈夫に、見えるか？」

　心配そうな顔で背中をさする妹を見て、言う。

　すると妹はきょとんとした表情を浮かべて、首を傾げた。

「全然見えないよ？」

「……お前……随分と良い性格に育ったな」

「良い見本が傍にいるから」

「……」

「冗談だよ。兄さんを見本にしたらもっと融通のきかない性格になってるよ」

「…………」

「ふふふっ、本当に兄さんで遊ぶのって楽しい」

　優しげな笑みを浮かべて妹は言う。

　……本当に、一体どうしてこんな性格になってしまったのだろう。同年代くらいで、なおかつ彼女に悪影響を与える事が出来そうなのといえば……あぁ、たんくか。

　あるいはララァあたりの影響もうけているのではないかと、今では中学校の国語教師を生業としている高校時代の元先輩を思い浮かべる。確か、ブルデュエルの担任であったはずだから……可能性は十二分にあった。

　思わず頭を抱えると、妹は楽しそうに笑う。

「こうやって兄さんを言葉で翻弄出来るのって、確かに楽しいかも。今度お礼言っとこう」

「……誰にだ」

「バスターさん」

「そうかバスターに礼……は？アイツが…見本？」

　思いもよらなかった名前に唖然とするデュエルに、ブルデュエルはこくりと頷いた。

「うん。兄さんにはどういう内容をぶつけたら良いとか、結構いろいろ教えてくれるよ」

「……アイツが黒幕だとは……」

　今度会ったらどうしてくれようか。黒幕だと言うのなら、半殺しなんて生ぬるい状態で済ませるつもりはない。生まれてきたのを後悔するくらいの仕打ちをしてやって、ようやく満足できると言う感じだろう、きっと。

　ぐるぐると妹に面倒な事を吹き込み続けていたらしい男に対する仕返しについて思いを巡らせていると、でも、とブルデュエルが少し真面目そうな声音で言った。

「…実際に心配ではあるんだよ？兄さんに関しては、そういう話あまり聞かないんだもの。三十歳も近いんだし……もうちょっと浮いた話があっても良いと思うんだ」

「オレよりもお前はどうなんだ？」

「私？私は大丈夫。結構これでもラブレターとかもらってるんだよ？」

「……そうか」

　それはそれで心配なのだが。

　自分の事よりも妹の方が気がかりな身としては、やはりそちらに不安のベクトルが大きく伸びるのは仕方が無い事だろう。というか、自分は結婚とかできなくても良いかなとか思っているわけで。実際、好きな人、なんてものがいないわけだし。

　そしてそんなこちらの気持ちでも読み取れたのか、妹はやや不機嫌そうに顔をゆがめた。

「私の方はヴェルデもついてるし、大丈夫なの。だから兄さん、兄さんは兄さんの事を考えなきゃだめなんだってば」

「いや……もう、正直どうでも良くないか？」

「良くないって！」

　心の底からの本心を告げると、思いっきり反論されてしまった。

　その勢いに押され気味のデュエルに構わず、むしろそのまま押し崩そうとせんがばかりに妹は激しくまくし立てる。

「私がいる間は大丈夫だよ？別に私だって、無理にこの家を出ていくつもりも、兄さんの傍を離れるつもりもないし。でも、もしも私が結婚したりして家を出ていく事態が起こっちゃったら一体どうするの！？整理整頓は確かに私よりも上手だけど、特に料理の腕とか壊滅的なのに！ずっとインスタントに頼るとか言ったら怒るからね、私！……というわけで、」

　急に声の調子を戻して、妹は続けた。

「兄さんの面倒を見てくれそうな人が必要なの」

「いや、言いたい事は分かったが、それとなくお前……オレには整理整頓術しか取り柄が無いって言ったな？」

「気のせいよ。……とにかくそういうわけだから、誰か面倒見てくれる人が欲しいの。……あ、そうだ」

　ぽん、と手を打ってブルデュエル。

「もういっそ結婚とか好きな人とかいう発想を止めて、そうなっちゃったら独身の友達同士で一緒に住んだらいいのかも」

「は？」

「うんうん、それが良いかも。じゃあ、そうと決まったらバスターさんに一応、言っとこっか。あの人も未だに浮いた話無いみたいだし、案外オッケーもらえそうだよね」

「待て。それは一体いつ決まった？」

「今」

　あっさりとそう言って携帯をとる妹を見て。

　出来る事と言えば、ため息を吐く事くらいだった。

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擬人化したとて、こいつら全員結婚とかできるのか？とかいう話を総括した感じ。