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夏と言えば海ですよね。伊達さんとチカさんです。



05:海までの道
 
 
 
「海に行こうぜ!」
 開口一番、そう口にした政界の鬼を前に、政宗は一瞬言葉に詰まってから、言った。
「お前、それ言うためだけに俺を呼んだとか言わねぇよな」
「え?いや、その通りだけど」
「……っ…一度死んでこい俺が手伝ってやるッ!」
「わーっ!?待て!六爪は待て!」
「待たねぇっ!」
 叫び声を切り捨てて、抜き放った六本の刀を殆ど同時に丸腰の相手に振りおろす。
 しかしそれはひらりとかわされ、かわした張本人は少し眉を寄せてこちらを見た。
「別に嫌がらせとかじゃねぇぞ?」
「そんくらい分かってる。嫌がらせだったら容赦なく殺すところだけどな」
「……今も割と本気だったよな?」
「気のせいじゃねぇか?」
 未だ六爪を納めずに獰猛さを含めた笑みを浮かべてやると、彼は困り切った表情を浮かべて軽く頬を掻いた。
「まさかそこまで怒るたぁ思わなかったぜ……」
「普通は怒るだろ」
 奥州と四国とではどれだけ距離があると思っているのだと言外に含ませながら言うと、彼の困り顔がさらに困った様な顔になった。それを見て、困り切った顔のさらに上位に位置する困り顔があるのかと、ほんの少し場違いな感慨を覚える。
 もっとも、感慨を得たからと言って怒りが消えるわけでもないが。
 とりあえず、何で怒っているのかを理解はしているらしい鬼は、でもなー、と言い訳をするように……というか完全に言い訳として言葉を繋いだ。
「何か海に行きたかったんだよ。でも秋とかだと海月出んじゃねぇか。冬になったら普通の奴は入る気になれねぇくらい寒くなるし、春は俺が寝てぇし」
「一人で行け」
「そいつは……寂しいだろーがよ」
「……」
 どこからどう聞いても本心だとしか思えない声と、どこからどう見ても嘘をついていないとしか思えない表情を見て。
 政宗は苦笑交じりのため息を吐いた。
「仕方ねぇな……アンタってやつは」







ほだされ政宗さん。しかし、本当にあの距離を経て訪ねて来たのかと思うと、なんともいえない感じが。おつかれさま、って感じですか。
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