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森の中で。
森の中にて。
スクアーロとディーノは、まだに学校に戻ろうと彷徨っている最中だった。
思ったよりも遠くに連れて行かれたらしい。屋敷を調べていたら地図があったので、それを確認して学校の方向を調べたのは良いのだが、そこまで辿り着くのに時間がかなりかかると言うことまで判明したのである。
そんなわけで強行軍。
当然のように、ディーノは泣き言ばかりだった。
そして今も。
「スクアーロ、俺そろそろ疲れた」
「そうかぁ。そんなら大人しく森の動物の餌にでもなってろ」
「え」
「じゃあな、へなちょこ」
ひら、と手を振って去ろうとすれば、彼は慌てて駆け寄ってきた。
「ちょ…ちょっと待ってスクアーロ!」
「何だよ走れるじゃねぇか。そんなんならもうちょい頑張れるなぁ?」
「って…それ鬼…」
「巻き込まれただけの人間にンな事言うのかよ」
「いや、お前自分から巻き込まれたんじゃ…」
「あれで見過ごせってか」
そんな無茶をよくも言ってくれるものだ。
流石に、あれを放っておくのは寝覚めが悪い。いくら無抵抗で誘拐される相手とはいえ、殆ど戦闘能力がない知人を放って去るほど自分はまだまだ冷酷になった覚えはない。
だからそのままそう伝えると、どこか安心したような、落胆したような表情をされた。
少し予想外の表情だったので、少したじろぐ。
「…んだよ」
「いや、やっぱりかぁって思って…さ。何て言うかスクアーロ、俺の保護者みたいだよな、ってさっきも思ってたりして」
「保護者になったつもりはねぇ」
「だとしてもほら、色々世話焼いてくれてるし」
言われて、思い返す。
…そういえばディーノの私物をきっちり片付けたこともあるし、食事をボロボロと落とす彼の隣で色々と世話を焼いていたような気もする。だが、あれらは全て自分がやりたいと思ってやったのではなく、何もかもが成り行き故の物だったのだけれど。見ていられなかったというか。
しかし、世話を焼いていたというのは間違いようがない。
それもこれも結局は、彼がしっかりとしていないせいなのだが。
「つーか…突然何だぁ。妙に改まってんじゃねぇか」
「俺はさ、スクアーロ。対等になりたいと思ったんだ」
「…対等?何だそりゃ」
「だから対等。世話焼く焼かないとかじゃなくって、友達として同じステージに立ちたいと思ったりとかして」
「…おい、へなちょこ。テメェ一つ間違ってるぞぉ」
「……へ?どこが?」
「たとえ対等になったとしてもなぁ…」
こればかりは間違いようもなく。
「…俺がテメェの世話とやら、やらなくなることはねぇだろうよ」
「……それはそうかもしれないけどさ」
「てかテメェが言ってるのは、要は心の問題だろうがぁ。世話云々は今回ばかりは関係ねぇだろ。そんなのあろうとなかろうと、心が対等なら良いんだろうが」
「あ、成る程」
「成る程じゃねぇよ」
自分で気付け。というか知れ。
呆れながら隣を歩く金髪を眺めていると、じゃあ、と彼が顔を上げた。
「今」
「あ゛?」
「今はどうなんだよ、スクアーロ」
「……知らねぇよ」
そんなこと、考えたことさえもない。
だからそう答えると、そっか、と彼は呟いて、それから続けた。
「じゃあ一つ質問。俺みたいに、お前の隣を歩けるやつっているの?」
「んな馬鹿はテメェ以外にいねぇよ」
「やろうとしてきた人は?」
「いねぇな。いても、面倒だったから直ぐに切った」
「なら、俺はどうして切られてない?」
「切る価値もねぇからな」
「嘘だな」
どこか楽しそうに笑って、ディーノは言う。
「お前、価値がないと思ってる相手でも面倒だったら切るだろ?」
「…」
言われてみればそうかも知れない。
が、それを認めてしまうと言うことは…いや、まさかそんなことがあるはずが。
スクアーロは思い切り首を振り、ただ進むことだけに集中することにした。
受け入れてるけど受け入れてると認めたくない鮫さん。
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