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久方ぶりの罪歌さんのお話です。
学校内に侵入して。
普通に帝人たちに近寄って行った時の反応はまちまちだった。
「げ!?臨也さん!?」
正臣は少しだけ恐怖の混じった、実に嫌そうな顔をして。
「あれ!?何でこんなところにいるんですか!?」
帝人は驚きのあまりか目を大きく見開いて。
「えっと……これって…?」
杏里は、説明を求めるようにこちらを見た。
「…私を放ってでも、いなくなればよかったのに」
ぽつんと呟かれた罪歌の言葉を無視して、臨也は苦笑を顔に張り付けて正臣を見た。
「出会って直ぐに『げ!?』は無いと思うんだけど」
「あ…すんません」
「怒ってないから別に良いけど。ていうか、俺、今回は君たちに用事があるわけじゃないからそんなに身構えないで良いよ」
「…?えっと、じゃあ、この子ですか…?」
帝人が指し示した先には罪歌がおり、彼女はちょっと不機嫌そうにこちらを見ていた。先の言葉通り、本当にいなくなって欲しかったらしい。まぁ、目付役を欲しがる人間はそういないし、それは妖刀も同じだと言う事なのだろう。
しかし人間という種のためには、それはやってはならない事。
にこりと嘘の笑いを張り付けたまま、臨也は罪歌の腕をつかんだ。
「そうなんだよね。急にここに入って行くからどうしようかと思ったんだけど……そういえば先生っぽい人がいないね。あとどのくらいいないか分かる?」
「えっと…多分、授業が終わるくらいに……もう一度、顔を出すんじゃないでしょうか」
おずおずと答えたのは杏里だった。
その事実に帝人も正臣も少なからず驚いたようで、目を丸くしていた。答えるんなら自分だとでも思っていたのかもしれない。けれどまぁ、そんな反応は予測通りに過ぎたので気にしない事にする。
彼女の言葉にほんの少しだけ安堵を覚えつつも、罪歌の腕を引いて校外に出るように促す。たとえ教師がやって来ないにしたって、早く出ないと厄介事に火種になるのは間違い様がないだろう。
「行くよ」
「…仕方ないわね」
その辺りの危惧は通じたのか、やけにあっさりと妖刀は応じた。
頷いた彼女はくる、と宿主の方を向いて、お別れとばかりに口を開いた。
「じゃあ杏里、私たちはもう行くから。昨日は帰れなくてごめんなさいね」
「あ……うん。…ちゃんと大人しくしてるなら……良いんだけど」
「してるわよ。ちゃんと」
先ほどまで思いきり暴れていたくせに、さらりとそんな事を言う罪歌。
そんな彼女に杏里は疑惑の視線を向けた。
「…怪しいけれど」
「貴方……私の事信じてないわよね」
「…ちょっと心配なだけ」
「どうだか」
鼻で笑って、罪歌はひらりと手を振った。
「じゃあ、本当にまたあとで」
「あ、ちょっと待って!」
…けれども、それを止めるように声を上げた人物が一人。
「名前、何て言うの?」
紀田正臣だった。
早く帰らせてよと内心では苛付きながら、臨也はしかし、罪歌が何と答えるのかほんの少しだけ興味を持った。まさか本名を喋ることなど出来ないだろうとは思うが……もしかしたら気にも留めずに彼女はそれを口にするかもしれない、と。
「私?私は、」
そんな視線に気づいているのだろう。罪歌の腕をつかんでいる臨也の手の甲を摘みながら、彼女は微笑む事も無く言った。
「園原歌子、よ」
「そのはら…うたこ?」
「えぇ。杏里とは従姉の間柄なの。…じゃあ、本当に行くから」
さよなら、と。
一言口にして、罪歌は呆気にとられている三人から遠ざかる。
当然それに臨也もついて行く形になり、校門を出たところで………吹き出した。
「…何よ」
「良いや別に?まさか歌子なんて言い出すとは思わなくてついつい」
「本名を言うとでも思った?そんなことして杏里を怒らせたら困るじゃない」
「宿主だから?」
「えぇ、その通り。追い出されて捨てられたらたまったものではないもの」
「…それにしても結構簡単に嘘をつくね。もしかして愛してるって言うのも、嘘?」
「貴方と同じよ、折原臨也」
「へぇ……じゃあやっぱり俺はお前の事大嫌いだね」
「奇遇ね。私もよ」
そんな会話をしながら。
二人は、来良学園から遠ざかって行った。
ということで、罪歌の偽名は「歌子」に決定しました。
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