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W組のお話です。死神さんが怒ってる話です。




 弁当のふたを開いて、見えた色が白一色と言うのはどんな地獄だろうか。
 おかずが一つも入っていない白米オンリーの弁当箱に視線を釘づけにされながら、ウイングは、それでもどうにか言葉を絞り出した。
「デスサイズ、これは……」
「見たまんま」
「……そうか」
 あんまりにも見事な即答にそれ以上何も言えないでいると、横から困った笑みを浮かべた助けの手が差し伸べられた。
「自業自得とはよく言ったものだけど……これはちょっとやりすぎじゃないかな」
「どこが?」
「どこが、って……いや、全体的に」
『せめて一品くらいは入れるべきだと思う』
 ヘビーアームズもサンドロックに加勢する様に頷き、しかし、そんな二人の様子を見てもデスサイズは全く現状をどうこう思う事も無いらしく。
「ンな事言われてもさ、これくらいしないとオレの気が収まらないわけ」
 さらりとそんな事を言って、現惨状の形成者は卵焼きをぽい、と口の中に放りこんだ。
 ……これはまずい。三人の話を聞きながら、ウイングはこれから起こり得るであろう事態を想像して体を震わせた。デスサイズの先ほどの言葉はつまり、彼自信が満足するまでこの事態が延々と続くと言う事で。それは最早地獄では無く拷問だろうと、とりあえず今晩の夕食が抜かれる覚悟はしておくことにする。
 何で昨日あんな事をしてしまったのだろうと後悔を強く抱きながら白米(のみ)を口に運んでいると、不意に、す、と弁当のふたが差し出された。その上にはいくつかのおかずも存在しており、顔を上げればそこには同情心あふれたナタクの顔があった。
「とりあえずこれでも食え」
「……すまない」
「こう言う時はお互い様だ……というか、」
 何故だか熱くなった目がしらを抑えながら礼を言うと、彼はふいと明後日の方向を向いて、続けた。
「……流石に見ておれん」
「だろうな……表情にありありと書いてある」
「……そうか?」
「お前も顔に出やすいタイプだからな」
 首を傾げる彼に苦笑を返し、とりあえずもらえる物はもらっておこうと、ウイングは差し出されたものに箸を伸ばした。
 のだが。
「……何やってんの?」
 がし、と掴まれた腕に、箸の動きもぴたりと止まった。
 頭は丁度そちらに後頭部を向けるような形になっていて、自分の右腕を掴んだデスサイズの表情は見えない。けれども、見えなくて良かったとウイングは本気で思った。ひしひしと感じる彼の纏う肌に痛い気配の事もあるし、目に入ったナタクの引きつり切った表情が彼の表情がろくでもない物ではないと言う事をはっきりと証明している。
 冷や汗をだらだらと流しつつ、一体何を言うべきだろうかと必死で頭を回転させている間に、右腕を握っていた手はするりと右肩まで這い上がり、ぐ、とそこを掴んだ。
 みしみしと音が鳴りそうな程に強く掴まれたそこに、痛みを感じている場合では無い。必死で現状回避のための術を模索して言う内に、かたん、という音が聞こえた。どうやら肩を掴んでくれている彼が、弁当箱と箸を一緒に下に置いたらしい。
 それは、今の彼は両手が空いていると言う事で。
 つまり、さらなる窮地に陥る可能性があると言う事で。
 夕食の心配なんて随分と余裕なまねをしていた物だと、つい先ほどまでの自分をどこか羨ましく思いつつ、覚悟を決めて振り向く。
 そうして見えた彼の表情に、思わず凍りついた。
 石の様に固まったウイングを前に、その手に籠っている力の強さからはとても想像でき無い程に朗らかに微笑むデスサイズは、口元を弧の形に歪めたまま、言った。
「お前さ、罰ゲーム的な物の存在理由分かってる?」
「……あ…あぁ」
「分かってんだ。じゃあ、何でもらおうとしちゃってるわけ?」
「くれるというなら……もらっておこうと」
「ふーん。ま、分かんなくもない言葉だけど」
 笑みは絶やさずその上からまた笑みを張り付ける彼を前に、そろそろ逃げても良いだろうかと冗談抜きで思う。彼の笑みの仮面がはげ落ちる前には彼の前から立ち去っておきたいのだが、だめだろうか。
 そんな思いはどうやら自分だけのものでは無かったらしく、他のメンバーがひっそりこそりと自分たち二人の傍から遠ざかって行くのが目の端に映った。薄情者、と叫びたかったけれども、そんな事をしたら間違いなく自分が大変な目に遭うまでの期間が短くなるので実行など出来るわけもなく。
 結果、何も出来ないまま去って行く三人組を見送るしか自分に出来る事は無かった。
「覚悟、出来てるよな?」
 どうとでもなれと、最終的に開き直るしか無くなった自分の耳に、今は怖いのであまり聞きたくない気がしなくもない、という結構複雑な声が滑り込む。
 その名の通りか……と、彼の纏っている雰囲気に息を吐き、ウイングは応えた。
「……出来るだけ加減してくれ」







二日以上白米しか食卓に出ないという目に遭う可能性が高い翼さんの話でした。
それにしてもウイング、一体何をしたのでしょうか…。
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