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最近気づいたのですが、私は罪歌が好きすぎるみたいです。罪歌が好きだってことは分かってましたが。
そこは、既に何にも使われていないだろうしこれからも使われはしないだろう、それでも壊される事も無く存在している、ごくありふれた倉庫の中の一つだった。
誰も訪れないだろう、寂れた場所。
しかしそんな場所に、今日ばかりは人の群れがあった。
その集団の中央にいるのは二人の少女。
二人は、倉庫の中にあった木でできた少し大きめの箱の上にいた。片方は立ったまま下に集まる人の群れを眺め、もう一人は箱の縁の部分に腰をおろしていた。足は、当然ながら集団の方に投げ出されてしまっている状態だ。
二人の少女を見上げる集団には統一性が無かった。背広を着た男もいれば主婦に見える女もいたし、小学生や中学生、果てには小さな子供も存在している。
ただ一つ、特徴としてあげる箇所があるとしたら。
それは、彼ら全員が瞳を赤く発光させている事だろうか。
無数の赤い視線を受け止めて、立ったままの少女は口を開いた。
「貴方達に集まってもらったのは他でもない、私からの命令があるからなの」
発せられた言葉は高校生程度に見える少女から告げられるには、あまりにも相応でない内容だった。この場には少女よりはるかに年上に見える者もいれば、喧嘩慣れした不良と言った態の青年もいるのだ。見た目どおり高校生であったとしても、いざ揉め事が起これば少女ごときの力では歯もたたないだろうことは、目に見えて明らかだ。
そんな状態であるにもかかわらず……
集団は沈黙を守り少女の言葉を受け入れていたし。
口を開いた少女はそれを当然として受け入れていた。
ただ一人、座っている少女だけはその状況に何とも言えない表情を浮かべ、心の中にたまった何かを吐き出すように息を吐いた。
もちろん、そんな少女に構う事無く、もう一人の少女は言葉を繋ぐ。
「命令は、そんなに難しい内容ではないはずよ。簡単な事なの。私の愛しい人をこっそり見守って、いざという時には気付かれない程度に手を貸すだけ。簡単でしょう?」
微笑みを浮かべて少女は言い、手を打った。
「あぁ、それと、どこかのうざやが静雄にちょっかいを掛けようとしたら殺しても良いわ」
「それは……どうかな……」
晴れやかな笑みに対してポツリと言葉を零し、今まで黙っていたもう一人の少女……園原杏里は、呆れを多量に含んだ視線で立っている少女を見やった。
「そんな事勝手にして、静雄さん……嫌がらない?」
その言葉に、今まで喋っていた少女はあっさりと答える。
「大丈夫よ。そうならないために気付かれないように、って言ってるんだもの」
「一応マズイかなって自覚はあるんだね……」
「まぁ、ストーカーまがいの事だものね」
「ねぇ、罪歌……それが分かってるんだったら何でやるのかな……?」
「だって心配じゃない!」
罪歌と呼ばれた少女はぐ、と拳を握った。
「考えても見て頂戴!静雄ったら、他の人よりもちょっと頑丈だから大丈夫だとか思ってて、どうしようもなく警戒感が低すぎるのよ!?……あと、少し思考がずれちゃってるし。ダラーズの集会とやらがあった日の前後だったかしら、確かボールペンで刺された傷を接着剤で塞ぐなんて普通は考えたりしてるのよ?これは私たちがどうにかしてあげないといけないと思うじゃない」
「いや……そう熱弁を振るわれても……それよりも、ボールペンの話なんてどこから聞いて来たの……?私、知らないけれど」
「子供たちを集めて静雄について知ってる事を片っ端から語らせたの」
「子供の人たちから無駄に貴重な時間を奪っちゃダメだよ……」
「良いのよ。だって子供は親に従うものだもの」
理不尽さの塊をさらりと体外に出し、罪歌はやれやれと肩を竦めた。
彼女からすると、そもそも杏里の意見の方がおかしいのだ。子供たちから時間を奪った事は認めるが、それは全く無駄な物ではないと思っているのである。何せこれは愛故の行動で、ならば何の問題もないという結論に至るのは至極当然のことだったから。
杏里からすると、これこそおかしい。愛だろうが命令だろうが、結局時間をそんな事で消費させていると言うのは妙な事だと思っている。もちろん非常事態ならば自分だって似た様な事をするだろう自覚はあるが、今回の集会は流石にどうだろうと思っていた。
一般人を連れて来て判定させれば確実に杏里が正しいとジャッジされるだろう思考内容だったが、それすらもどうでも良い事と、罪歌は子供たちの方に向き直った。
「うざや……別にボッチと呼んでもりんやと読んでも良いけれど、とにかく折原臨也を殺害する方法は何でも良いわ。撲殺殴殺刺殺絞殺射殺焼殺薬殺、何だってかまわないの。とりあえず息の根を止める事に全神経を注ぎなさい」
「あれ……?静雄さんを見守るとかいう集会じゃなかった……っけ?」
「そうよ。だからうざやを殺すんじゃない。……以上!この命令を忘れずに、今から元いた場所に返って我に返りなさい」
「『「「「『「はい、母さん」』」」」』」
ぱんぱんと手を打つ罪歌に子供たちは答え、ぞろぞろと倉庫から出ていく。
それを見送って、杏里は半殺しで済めばいいけれど、などと思いながら新宿の情報屋に思いをはせていた。
とりあえず言える事は一つ。臨也逃げろ。
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