式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
何度でも言う。
私は罪歌が好きらしいです。本当に。
彼女は人間を愛していた。傍から見ればそれは迷惑な押し付けでしかないし、正直、自分もそうだと思っていたけれども、それでもやっぱり彼女のそれは愛だった。他に彼女のそれを言い表す言葉はどこにもない。
まるで雨みたいに人間全体に降り注ぐ、それ。
しかし、それは恵みでは有り得ない。
紛う事無くそれは『災禍』だった。
彼女の名前と等しく、サイカだった。
だから、思う。
「杏里、どうかしたの?」
「え?」
「私の顔見てぼうっとして。もしかして私の顔に何か付いているのかしら」
「ううん……そういうわけじゃ、無いよ」
「ふぅん……じゃあ何よ」
「考え事、してたの」
素直に答えると、へぇ、とだけ呟いて彼女はそれ以上は突っ込んでこなかった。プライバシーとか言う言葉が浮かんだのかもしれないし、興味が無かったのかもしれないし、面倒だったのかもしれない。多分、正解は三番目。一番目は絶対に無い。
退屈そうに頬杖を突く彼女を見て、つらつらと思う。
彼女が人間じゃないと言ったら、何も知らない人はどんな反応をくれるのだろう。笑われて終わりな気がする。知っている人は驚き、警戒でもするだろうか。今の自分みたいに、彼女の愛が勝手に暴走しないか不安がるだろうか。
けれども考えてみれば彼女にとってそれは暴走では無い。
自分たちから見たその暴走状態が、彼女にとっては常態なのだから。
だからそうかと頷いて、暴走していない彼女を暴走していないからと放り出すわけにはいかない。愛は素敵な物だと人は言うけれど、愛を振りまく存在が無害だとは限らない。それに、愛を理解していない自分でもわかるくらい、愛にはいろいろな種類がある。
澄んだもの、優しいもの、柔らかなもの、穏やかなもの、真っ直ぐなもの、輝いているもの、綺麗なもの、清らかなもの、美しいもの、暗いもの、歪んだもの、曲がったもの、どろどろしたもの。
執着心も愛だと彼女は言うだろうか。奪い取る事まで愛だと言うだろうか。愛と名付けられたものを彼女は全て、肯定するだろうか。
切り裂く以外に愛を伝える術を手に入れてしまった刀は、何を思うのだろうか。
何かを思ったにしても、やはり彼女は危険なのだろう。切り裂く事でしか人と触れられなかった彼女が、それ以外の方法無くして人を愛せなかった彼女が、今から別の愛し方を手に入れる事が出来るとは思えない。手に入れる事が出来たとしても、今までの愛し方を棄てることなど出来るわけが無い。それは、彼女の存在意義と呼べるものだ。
彼女の愛は、愛し方は、きっと罪だ。
だから、彼女の愛は一方通行。
いつまでも、向こう側からの返事は来ない。
けれどもそれでも良いと思う。
だってそれは、罪が広がらないと言う事なのだから。
でも、ほんの少し、それが悲しい事だと思う。
「ねぇ、罪歌」
唯一彼女が振りまく災厄から逃れる事が出来る立場にいる宿主である自分は、尋ねる。
「悲しく……ならない?」
「何が?」
「貴方は愛されないから。貴方は私に愛せと言ったけれど……私は貴方を愛してない」
「知ってるわ。けど、関係ない。私は愛せれば良いの」
「寂しくない?」
「全然」
きっぱりと彼女は言った。
それを自分は、見ているしか出来なかった。
彼女は人間を愛していた。傍から見ればそれは迷惑な押し付けでしかないし、正直、自分もそうだと思っていたけれども、それでもやっぱり彼女のそれは愛だった。他に彼女のそれを言い表す言葉はどこにもない。
まるで雨みたいに人間全体に降り注ぐ、それ。
しかし、それは恵みでは有り得ない。
紛う事無くそれは『災禍』だった。
彼女の名前と等しく、サイカだった。
だから、思う。彼女を受け入れる事が出来るのはとても大きくて強い人なのだろう、と。
その人は、彼女がもたらす災いをものともしないような、それを受け入れた上で彼女の頭を撫でてくれるような人なのだろう。彼女と共に在ったとしても彼女の子にならないような人なのだろう。そしてそんな人に一人、心当たりがあった。
彼女はそれに気付いているのだろうか。気付いているからその人の事を、他の人よりも気にしているのだろうか。それとも気付かずに、強いからと想いを寄せているのだろうか。
分からないけれど、ふと思った事が一つだけ。
もしかしたら彼女も愛されたいのかもしれない。
だから、愛してくれる可能性を持つ人を、気にかけているのかもしれない。
だとしたら彼女はなんて。
なんて、愛しい罪の歌なのだろう。
罪歌だって愛されたいよ、きっと。今のままじゃ殆ど一方通行だけどさ。
…なんて思いから出来たお話です。
それにしても「罪歌」って綺麗な名前だと思うんですけれど。罪の歌、って。とっても罪歌のあり方に似つかわしい名前ですよね。
PR
この記事にコメントする