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懐かしの「風巡る地」設定でございます。すっごい昔のお話っぽい。竜さんの一人語り。



003:風の吹く場所
 
 
 
 外に出る事は出来なかった。
 正確に言うと、出来なくなった。
 けれども、外を知ることくらいは、容易くできた。
 故に、閉ざされた紙の戸の向こう側を視透かす事は、数少ない暇つぶしになっていた。
 始めは、何も無かった。
 あったのは、自分を封じるこの屋敷だけ。
 それが、気付けばその少し離れた場所に人間が住みつくようになった。その人間は、意外な事に妖と共に暮らしていた。
 普通そんなことなど起こり得ないと識っている身としては、その様は衝撃でもあったし、また同時に、たまに人間と妖の間に友情やら絆やら……とにかく何か繋がりが生まれる事を知っている身としては、その姿は微笑ましくて、見守りたいと思う物でもあった。
 だからなのかもしれない。
 それからずっと、気が向く限りは彼らの事を見続けていた。
 二人はとても親しくて、喧嘩もするし殴り合いもするし蹴り合いもするし怒鳴り合いもするが、最終的には何があっても絶対に、仲直りをしていた。
 羨ましいことだと思う。
 仲を直せる時間が、彼らにはあるのだ。
 自分たちはどうだっただろうかと思い、苦笑して首を振る。直すも何も。自分たちの関係は何一つとして壊れる事が無かった。ずっとずっと、いっしょだった。変わらなかった。喧嘩もしたし文句の言い合いもしたけれど、仲が壊れる事は無かったのだ。
 だから、彼らが羨ましい。
 仲を壊せる程の時間と、それと、余裕があると言う事が。
 とてもとても、羨ましい。
 羨ましいから、助けてやりたいと思うようになる。
 とはいっても。
 自分はここから出れないし、だから助けてなんてやれないのだ。
 ……でも、まぁ。
「竜に見守られて暮らすなんて、滅多に出来ねぇ経験だろうよ」
 くつくつと笑って、政宗は、彼らの、この場所に始めてきた人間と妖の、二人の持つ未来が明るければいいと思った。






こうして界風は出来上がっていくのです。
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