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拍手再録です。
027:刈り取る者
「やっちゃったねー、運び屋」
『……煩い。っていうか何だ「やっちゃったねー」って!何の事を言ってるんだ!?私が逃亡中に影の鎌で駐車違反の車両を二個三個、軽く切り裂き捨てた事に対してか!?』
にこやかに嫌な笑みを浮かべている情報屋にPDAを突き出して、セルティは叫んだ。……いや、正確に言うと叫びたい気分に襲われた、なのだが。
……何にしても、ともかく、相手に対して憤っている気持ちは変わらないわけで。
素早くPDAに新しい文章を打ち込んで、臨也の眼前に突きだす。
『だいたい、あれの原因はお前が提示していた輸送ルートを突然変更するからだろう!そのせいであの白バイに見つかって追いかけられる羽目になったんだからな!』
「ごめんごめん、悪かったと思ってるよ。いやさ、変更後のそのルートを通った方が早くこっちに着けると思ったんだけどさ、まさか白バイ集団が偶然ばったり今の時間帯にそこを巡回ルートに入れてるなんて思わなくってね」
『……』
「沈黙まで打ち込まなくてもいいんじゃない?」
怒りと不快さと苛立ちを込めた三点リーダーに肩を竦めた彼は、セルティのPDAを持っていない方の手に提げられていた鞄をひょいと取り上げた。
それからニッコリと笑って手を振って、じゃあねとも言わずに彼は立ち去った。
その遠ざかっていく背を見て、セルティは……静かに肩を震わせる。
……何が『思わなくってね』だ。情報屋である彼にそんな語尾を付けられたって信じられるわけがない。彼はどんなことであれ、知っているか知っていないかと尋ねられたら、十中八九『知っている』と答える側の人間なのだから。
そしてそんな彼のこと。どうせ偶然手に入った巡回ルートを手に、運び屋の仕事をしていた自分の事を思いだしたりして、自分を白バイにぶつけてみたら面白いかななんて思ってくれたに決まっているのだ。先まで搬送していたあの荷物がそれほど重大な物ではない事も、多分その思いつきの実行に一役買っている。
あぁ……何て酷い奴なんだろうか。
息の代わりに影を吐きながら、セルティは呻くように思った。
折原臨也にはあまり関わりたくない。彼と相対していると、精力とかが思いっきり刈り取られて行く気がする。……本当に疲れるのだ。
(2010/10/12)
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