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三人でサイクリングなお話です。とはいっても、こいでるのはお父さんだけなのですが。



 歩いている時とは全然比べ物にならないくらい速く、周りの風景が後ろに後ろに流れて行く。そして、冷たいけれど冷たすぎない風が、去っていく風景を追いかけるかのように傍をすり抜けたりぶつかったりしながら、後ろへ後ろへ流れて行く。
 そのどちらも、彼女にとっては好ましい物だった。
 一人では決して味わうことのできない感覚に目を細めながら、彼女は直ぐ後ろにいる父の方を見る。振り向かずに、背を逸らして。
 彼女の父は、とても優しげに笑っていた。
「楽しそうですね、凪」
「うん。なんだかね、すてきなきもちなの」
「そうですか……それは良いことですよ。素敵だと思うのなら、もっと感じておきなさい」
「わかった!」
 にこ、と凪が笑うと、骸はさらに笑みを深くして、その表情のままちらりと後ろを向いた。そちらには彼女の義兄であり、彼女の父の養い子である彼が座っている。
「恭弥、貴方はどうですか?素敵だと思いますか?」
「……さぁね」
 不機嫌そうな声音は、しかし不機嫌さを現しているのではないと凪は知っていた。いや、不機嫌ではあるかもしれないが、少なくともその不機嫌さの所以が実父ではない事は理解していたのである。
 雲雀は、自分が運ばれていると言う状況に機嫌を傾けていた。
 仕方が無いと、彼自身分かっている。まだこの大きさの物に乗るには足の長さが足りないし、腕の長さも足りない。体も全然成長していない。小さな物には乗れても、それは遠距離を移動する事に不向きだと言う事を理解している。
 だから、文句を言いたくても言えず、黙って乗せられるがままになっているのだ。
 しかしどうやら義妹が喜んでいる事よってか若干、苛立ちを和らげたらしい。
 雲雀は凪からも骸からも見えない顔を、少しばかり緩めてそっぽを向いた。
「でも、凪が良いって言うなら良いんじゃないの?」
「そうですか。だそうですよ、凪」
「じゃあ、いいんだとおもうよ」
「えぇ、そうですね。良いのでしょうね」
「……」
 かくして。
 自転車は素敵だなと思いながら、かごを改造して作った前部座席に座る凪。
 子供たちに喜んでもらえるなら外に出るのもいいかもと思い、運転席に座る骸。
 成長したら普通の自転車をもらって、二度と運ばれまいと誓い後部座席に座る雲雀。
 それぞれの思いを乗せたまま、自転車は三人を運ぶ。
 






出来るだけ客観的に、と思って書いてみた結果がこれ。
まぁ、とにかく、サイクリングな六道さんちを書きたかったのです。
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