式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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二期設定だったはずなのに、すっかり一期どころかそれ以前の話になってしまいました。書きなおそうかとも思ったんですけど、もう書いちゃってたのでそのままupることにします。
13.リクエスト
「上手く笑うにはどうすればいいと思う」
お昼時、昼食を取ろうと食堂に足を踏み入れて、アレルヤはティエリアを見つけた。
食堂であると言うのに食事を取らず、ひたすら手鏡を見つめて難しい顔をしていた彼は、多分、その時はこちらに気付いていなかったと思う。ただひたすらに眉間にしわを寄せて、じぃ、と鏡の方を見ていたのだから。
鏡面に映る自分の顔以外、眼中に在るものは無い。
そう言わんばかりの態度と、妙に危機迫っている表情に、思わず声をかけるのを止めてしまったのは仕方のない事だっただろう。
だから言い訳の様に、取り込み中なようだし邪魔をしてはいけないだろうと思いながら、音をたてないように静かに歩いて食事をとりに行こうとしたのだけれど。
『……何だ?鏡ばっか見やがって……ナルシストにでもなったのかよ?』
「そんな事無いと思うけど……」
いつもの様に何の脈絡もなく内側から聞こえてきた片割れの声に、いつもの様に答えてしまったのがいけなかった。
返答の数秒後、音を立てるどころか声を発してしまった事に気付いて、慌てて口を両手で押さえたが……当然の様に手遅れ。
鏡を見ていた仲間の方に視線を固定したままだったアレルヤは、自身の声に反応して顔を上げてこちらを向いたティエリアと、ばっちり顔を合わせてしまったのだった。
……そんなわけで現在、アレルヤは机を挟んで彼の向かい側に腰を下ろし、ティエリアから相談を受けているのである。ちなみにハレルヤの声はもう聞こえない。黙った……というよりは、眠ってしまったのだろう、きっと。
……薄情者。
そんな風に思いながらも、どうやったら笑えるのだろうと真剣な表情を浮かべて尋ねてくる彼に、一体何と答えればいいのだろうかと考え悩みつつ言葉を選ぶ。
「……うーん……上手く笑うって……そうやって考えて浮かべる物じゃないと思うんだけどな、笑顔って。楽しいと思ったり嬉しいと思ったりしたら、笑えるんじゃないかな。……っていうか、ティエリアだって笑ってるじゃないか」
「確かに笑顔を浮かべる経験が一回もないと言うわけじゃないんだが、肝心な時に笑えないと言うのは少々考えものだと思ってな」
「肝心な時?」
「我々の戦術予報士の良く分からない思いつきに付き合わされる時だ」
「……あぁ」
そういう事かと、納得の息を吐く。
たまに、思い出したように実行されるスメラギの悪ふざけの様な思いつき。今回の犠牲者はどうやら彼だったらしい。
それは大変だっただろうと思いながら、首を傾げる。
「でも、それで何で笑う方法なんてきいてきたの?」
すると彼は少し躊躇うようなそぶりを見せ、しかし、わりとハッキリとした声音でこちらの問いかけに応じた。
「……よりにもよって俺に、笑えと彼女が言って来た」
「……突然?何の前振れもなく?」
「突然、何の前振りもなく、だな」
「……それは無理だよねぇ」
「やはりそう思うか?」
「うん。笑え、と言われると逆に笑いづらくなるものだしね」
その上、相手はティエリアなのだから、普通に無茶だろう、その要求は。
もしかしたら、そう理解した上で彼女はそんな要求をしてきたのかもしれないとは、思うけれども。けれど……だとしたら、その要求はまだちょっと早いのではないだろうか。
どうせならもうしばらくしてから、言った方が良い。
もう少し、自然に笑う回数が増えた頃にでも。
そして、その時には是非とも刹那にも一緒に『笑え』と言ってあげて欲しいなぁなんて。
……もしも本当にそんな時が来たら、とても幸せなのだけれど。
「来週にでもって言うのは無理だよね……」
「……?来週?何がだ?」
「うぅん。単なる一人事だから気にしないで」
「……君は思った事を口に出し過ぎだ。多少、控えるべきだと思う」
「…………うん、気を付ける事にするよ」
自覚がある事だけに強く言い返すこともできず、苦笑を浮かべて頷くにとどめる。
「……あ、そうだ。今度、笑う練習でもする?」
「必要性を感じないが」
「ほら、またスメラギさんい似たような事を言われた時のためとかに」
「その時も拒否するから問題ない」
「出来ないかもしれないよ?」
くす、と笑いながらの言葉に、彼は一瞬言葉に詰まった様子を見せながら、それでも言った。
「……それでもするんだ」
まだまだ堅いティエリアの話…になったかな?
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