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心配性なお父さんの話です。骸さんと雲雀さんですよう。
「恭弥、お願いがあるのですが」
「嫌だよ」
目線を合わせられた状態で、がっ、と肩に乗せられた手を、素早く力一杯出来うる限りの拒否感をもってバチンと容赦なく払い落とす。
そして手を払った手を軽く衣服で拭ってから……雲雀は、妙な程に焦っていた、けれども今はどこか悲しげな表情を浮かべている養父の方を見た。
「一応聞くけど、何かあったの」
「そんな思いっきり人を拒否した後に、普通に話を進行させようとしないでください……」
「ふぅん……そんな事言うんだ」
じゃあ聞かない。
そう言い捨ててから骸の傍から離れようとしたら、想像以上の素早さで腕を掴まれた。
……聞いて欲しいらしい。
腕をやんわりと振りほどきながら、ため息を吐いて、促す。
「……言ってごらんよ」
「ありがとうございます。……犬です!あの子供が危ないんです!」
「危ない?……どこが?」
凪と同じ組の犬とは何回か会った事があるけれど、危なさを纏うような相手ではなかったと思う。少し乱暴なところもあるけれど、それはあくまで一面で、本当は優しい人なのだと凪も言っていた。だから多分、その通りの人なのだろう。
故に、骸の最初の焦りようは全く理解できない。凪は問題ないと言っているし、自分も特には危険を感じなかった。警戒をする必要も危ないと思う理由も存在しないのである。
どうしても養父の考えている事……というか懸念事項が理解できず、雲雀は訝しさを込めた視線を骸に送った。
「目がおかしいんじゃないの?眼科行く?」
「……ですからそういう他者をズタボロに傷つける類の言葉はあまりポンポン出さないでくれませんかね……いえ、養父としての切実なお願いなのですが」
「安心して。貴方と比べたら、他の人にはこういう事あまり言ってないから」
「比べたら、と言う言葉に引っかかりを覚えますが」
「……気のせいじゃないの?」
実際はあまり気のせいでは無い自覚はあるが、ここは煩わしい説教を回避するべく敢えて嘘をついて、首を傾げて見せる。出来る限り普段と変わらない表情を浮かべて。
それでも、いや、それだからこそ嘘だと相手には伝わるだろうが、明確な証拠が無い限り彼が自分を責め立てる事は無いだろう。
案の定、骸はどこか苦笑気味の表情を浮かべ、口を開いた。
「ではそいう言う事に。……で、話の続きなんですけど」
「あ、続けるんだ」
「えぇ。恭弥にも聞いて欲しいですし。私が犬を危険視している理由なのですけれど……彼、凪と仲が良すぎるのです」
「……?仲が良いのは良い事でしょう?」
「えぇ。確かに良いことです。例えば、京子ちゃんとハルちゃんが凪と仲良くするのは普通に良い事ですよ。でも、犬……あの子は駄目なんです」
「何で」
たった一言。
ただそれだけで、喋る骸に最初の勢いが戻ってきた。
「凪に対するあの子の態度を見ましたか!?ツンツンしてますけど、あれは凪に対してだけだそうです!しかもどうやら照れ隠しに分類されるツンツンだそうでして!」
「あぁ、うん。それはそうだろうね」
照れ隠し、という箇所に、雲雀は同意の頷きを返す。
犬が凪に対して何らかの、しかもプラスの感情を抱いているのは間違いないだろう。それは交流回数が少ない自分にも手に取るように分かるほど明らかだ。ただ、何らかの感情と言うのがどのようなものなのかまでは、流石に少なすぎる交流からは読み取ることは出来なかったが。
そして……そろそろ、雲雀は骸が何を言いたいのか分かってきた。
はぁ、とため息を吐いて、勝手にオーバーヒートしている養父の肩に手を置いた。
「……骸」
「何です?……はっ、もしかして……凪と犬を引き離す手伝いをする気になってくれたのですか!?」
「違う。っていうかお願いってやっぱりそれなんだ」
「それ以外に何があると言うのです?」
さも『当たり前だろう』と言わんばかりの表情に、呆れと諦めを同時に抱く。
「……あのさ、人の好悪感情にまでケチは付けない方が良いと思うよ。場合によっては馬に蹴られる事になるから」
「馬に蹴られ……っ!?……な……ならばなおさら見過ごせません!どうやってでも二人の仲の発展を阻止します!」
「……お好きに」
何を言っても意見を翻さなそうな骸から視線を外しながら、雲雀は馬を手配する手段を脳裏に幾つか思い浮かべていた。
……馬ならディーノ連れてくればいいんじゃないかな。いや、蹴るかどうかはさておいて。
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