式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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というわけで実験スタートです。
「まぁ、そんなに難しい事をするわけじゃないよ」
放課後。
幸村呼び出しメールを送信し終えた半兵衛は、そう言って携帯を制服のポケットの中へと戻した。
「実験という言葉を使ったけれど、別に彼の体にメスを入れるわけでもない。怪しげな薬を投与するわけでもない。彼に体を酷使させるわけでもない。……今回頑張ってもらうのは彼の胃だよ」
「つまり……何かを食わそう、っつーことか?」
「ご名答」
首を傾げながらのこちらの言葉に、彼は満足そうに頷いた。
「ところで政宗君、最近寒くなってきたと思わない?」
「……は?藪から棒に何言い出しやがんだ」
「唐突なのは分かってるよ。だから『ところで』って言ったんじゃないか。で、どうかな?」
「……寒くなっては来たが、エアコン使うほどじゃねぇな」
「流石北国育ち。僕は数週間前からエアコンに頼った生活を送ってるよ」
「それがどうかしたのかよ?」
「いや、ね。こんな寒い季節に、果たして腹いっぱいアイスを食べようという奇特な人がいるのかなぁと思ってね」
……あぁ、そう言う事か。
何となく彼が何をしようと……否、させようとしているのか理解して、政宗は呆れた表情を浮かべた。確かにそれは、気になる所ではあるかもしれないけれども。
つまり、半兵衛は幸村にアイスを与えようとしているのだ。肌寒いこの季節に、甘いものを好んで食べる幸村が、果たしてアイスに手を付けるか否か……そして、手を付けるとしたら一体どれほどの量を消費できるのか。恐らくそこまで彼は見ようとしているに違いない。そしてこの場合、確かに酷使されるのは幸村の胃袋である。
明日、果たして幸村は健康状態で登校できるのだろうか。
そんなことまで思いながら、政宗は教室のドアの方に視線をやった。
「そろそろか……?」
「竹中殿っ!真田幸村、ただいま参り申した!」
果たして。
こちらの呟きをかき消すほどに勢いよくドアを開け放ち、ドアを開ける時の音を己自身の大声でかき消しながら、現れたのは間違いなく真田幸村その人。
来たか……とため息を吐きながら、軽く手を上げる。
「Hey、真田幸村」
「む?政宗殿が何故このような場所に?」
「半兵衛に色々言い含められたんだよ。そう言うお前は?」
訊くまでも無く分かり切った事を敢えて尋ねると、幸村は嬉しそうに笑った。
「竹中殿が、腹いっぱい甘いものを食べさせてくれると言うのでござる!」
「……あー、そうかい」
自分の想像を裏付ける言葉を呼び出された張本人から受け取り、政宗は重く息を吐いた。どうやら、彼は『甘いもの』が何なのかまでは聞かされていないようだが……さて、アイスの山(……になるのだろう、やはり。腹いっぱいとか言ってるのだから、山ほど無ければ観察のしようが無い)を見た時、彼は一体どのような反応を見せるのだろうか。
そんなこちらの不安をよそに、幸村と半兵衛の会話は開始された。
「竹中殿、して、甘いものはどこに?」
「あぁ、それならここにあるよ」
と、どこからともなくカップアイスがたくさん入っているスーパーの袋を引っ張り出して、ニコニコ笑顔のまま半兵衛は言う。
「チョコアイス、イチゴアイス、バニラアイス……期間限定のブルーベリーアイスやブロッコリーアイスまであるよ。ここに入ってる分が尽きるまで、好きに食べてくれたまえ」
「おぉ!感謝の言葉もありませぬ!」
「ふふっ、喜んでくれるというなら僕も本望さ。さぁ、たんとお食べ」
「では、遠慮せずにいただくでござる!」
半兵衛から差し出されたスーパーに置いてある様な無料の木製スプーンを受け取り、嬉々とした表情を浮かべて幸村は机の上にドン、と置かれたアイスカップの山を崩しにかかった。
そんな彼を満足げに見てから、この実験の責任者(仮)がこちらを見て笑みを浮かべる。
万事うまくいっているよ。
そう言わんばかりの彼の表情に、肩を竦めて見せる。
「コイツの限界見るのは難しいと思うぜ」
「僕もそう思ったから、予測より多めのアイスを購入してきたさ。大丈夫だよ」
「あぁ、そうかよ……で、一つ訊くが」
「何かな?」
「ブロッコリーアイスって何だ?」
「さぁ。この間ふらりと街を彷徨ってる時に偶然見つけたんだよね。誰かに食べさせようと思って買ってたんだけど、まさか役に立つ日が来るとは思わなかったよ」
「自分で食え」
「嫌だよ怖い。それで変な味だったらどうするのさ」
ブロッコリーアイスってなんだろうね……ブロッコリー味のアイス、本当にあったら凄いなぁ。あるんだろうか。
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