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IF展開の起承転結・転っぽいもの。
呂布と曹操様のお話です。
案外、楽観的に見ていたのかもしれない。
放っておいても、あれならば勝手に自力でどうにかするだろうと思っていた。そもそも、袁紹ごときに負ける事はないだろうと思っていたのだ。
だというのに、実際は玉璽の力を得た袁紹に負け、二週間経っても何の動きも見せない。
そこでようやく、分かったのだ。
放っておいたら、いずれあれは死ぬかもしれない。
戦場でもない所で倒れる様な奴など、相手にする事はない。いつもはそう思っている。そんなもの、ただの弱者だ。……だが、あれに関しては少し違う。
惜しい、と感じた。
同時に、苛立たしくもあった。
何が惜しいのかは流石に分かる。まだ、ちゃんとした決着がついていない事が心残りなのだろう。だが、どうして苛立たしいのかは分からなかった。少しばかり時間を割いて考えてみはしたが、それでも答えは見つからなかった。奇妙な話ではあるのだが。
……ともかく。
その感情たちは、自分を動かすのに十分な力を持っていた。それだけは間違えようも無い事実だった。
故に。
「……呂布? 何故貴様がここに……」
鍵のかかった鉄製の扉を蹴破り。
呂布は、曹操が閉じ込められている部屋の中へと足を踏み入れる事になったのだ。
部屋の奥の壁際で床に倒れ伏している曹操の傍らに立てば、驚愕と困惑の視線が向けられた。どうしてここに、と言わんばかりの表情が、先の言葉よりもありありと彼の心情を語っている。
が、そんな物に興味はなかったので、その問いは黙殺した。それに、今の質問に対する答えはその内に分かるのだから、今自分が言う必要などどこにだって無いだろう。
思い、ただ目的のために手に持っていた戟を振りかぶる。
その様を見たためだろうか、一瞬、傍らに在る気配が突如鋭さを増した。それは他者を射抜き、燃やし尽くそうとせんばかりの気配。普通の人間ならば、これを浴びせかけられた時点で動けなくなっているだろう。
あぁ、成程、これが貂蝉が褒めていた殺気か。
この部屋に入るまでにも感じ続けていたそれだが……ここまで近づいてから感じると、一層その苛烈さが理解出来る。故に、改めて思ったのだ。成程、と。
そう得心している間に、感じていたそれが、ふ、と搔き消えた。恐らく、こちらの意識の先を見取ったが故だろう。
少し、残念ではある。
だが、そんなこちらの思いも知らず、相手はいたって普通に言葉を紡いだ。
「……何を、するつもりだ?」
「ふん。言わずとも分かっているのだろう」
「今から、何をするのかは、な。その後は、知らん」
「しばらく経てば分かる。待て」
「……貴様、説明する気が、無いな?」
まぁ、そんな事だろうとは、思ったが。
そう言って息を吐き、当然の様に彼は続けた。
「破片は出来るだけ、こちらに飛ばすな」
「知らん」
同じく当然の様にそう答え、
呂布は、戟を壁めがけて振りおろした。
雨や風からは人を守ることが出来るそれも、武器が相手ではどうしようもない。少なくとも自分は、自分の攻撃で壊れない壁を見たことが無いが……何はともあれ。
いつもと変わらずに壊れた壁は、外へと通じる大きな穴をそこへ作りだした。
穴へ近寄り外界を見下ろせば、思ったより遠い所に大地があった。ここは六階なので、それはそれで当たり前なのだが……まぁ、飛び降りるのに無理がある高さでは無いだろう。問題はない。
ならば、あとは実行あるのみである。
くる、と視線を曹操に向けると、彼は素早く視線だけ逸らした。その様が、まるで『今から嫌な事が起こる気がする』と言わんばかりのもので、そこに若干の奇妙さを覚えたが……直ぐに気にするのを止めた。何にせよ、やる事は変わらない。ならば考えるだけ時間の無駄だ。
いくらここに来るまでに見かけた一般兵たちを全て叩き伏せているからと言って、何者かがここに駆けつけてくるまでの時間がそうあるわけでもないのだ。無駄にできる刻は一寸も無い。
だから、了承を取る、という面倒事は省く事にして。
呂布は、ひょい、と曹操を武器を持っていない方の腕で荷物の様に抱え、その荷物から何かを言われる前に、己が開けた大穴から外に飛び出た。
その後に感じたのは一瞬の浮遊感。
次に、落下。
そして最後に、着地である。
結果的に足に微かな痺れが走ったが、所詮はその程度だった。やはり、問題は無い。
と、そこで、脇に抱えている荷物が小刻みに揺れているのに気づいた。それはまるで、何かに耐えているようで……何故か、少し体も強張っているような気がする。
「どうした?」
「どうしたもこうしたもあるか貴様……」
「……奉先」
と。
ため息交じりのその声は、直ぐ背後から聞こえてきた。
「曹操は怪我人だ、とあれほど口を酸っぱくして言っただろう。どうしてこう、気遣いとか配慮とかが出来ないのかな、お前は……」
「貂蝉か」
「あぁ、私だ」
振り向きもせずに応じれば、彼女の方からこちらの司会に入って来た。それから貂蝉は、曹操の方を向いた。
「すまないな、曹操。昆布は無理だった。脱出の手引をするから許してくれないか」
「……話が見えん。どうして、今になって、こんな事を」
「今だからこそ、さ」
肩を竦めて彼女は言い、こちらを指さして薄く笑った。
「奉先が、そろそろ待ちきれなくなったようでな。だから、お前の事を助ける事になった。ここから出れてお前の城に戻れば、療養でも治療でも何でもできるだろう?」
「……全快したら、また戦えと、そう言うことか」
「その通り」
頷いて、しかし、と貂蝉は首を傾げる。
「お前、本当に大丈夫か? 六階から飛び降りた衝撃は割と強いと思うんだが、傷に障っていないか、もしかして。先から喋るのもつらそうだし」
「…………そう言う事は、一番最初に言え」
「こんな話よりも事情説明の方がお前好みの話題だろう?」
「……それはそうだが」
貂蝉の言葉に、ふ、と曹操が息を吐く。
そんな二人のやり取りを見て、随分と親しくなったものだと思った。二週間もの期間、毎日毎日顔をつき合わせていては否が応でも親密さは生まれるという事なのだろうか。
不思議な話だ。そう感じながら、貂蝉に問いを投げる。
「赤兎馬は」
「裏口に置いてる。あちらには高順と陳宮がいるぞ」
「袁紹は」
「毒を盛って来た。即死とか解毒方法皆無のとか、色々と。脱出するまでの時間くらいなら稼げるだろう」
どうやら、さしあたっての障害はないらしい。
それは本来喜ぶべき事柄なのだろう。しかしこの事に対して自分が感じるのは、つまらなさ、それのみである。難題を突破する事に喜びを感じる様な性格ではないが、手ごたえの無さを歓迎する様な性質でもない。
まぁ、事が早く済むと言うなら、そのつまらなさも今は歓迎しておこうか。
思い、踵を返して一歩を踏み出す。向かうのは部下と愛馬が待っている裏口である。
「貂蝉……色々と言ったが、何をどう盛った」
「危なそうなのを適当に盛り合わせたからな……正確なところは私にも分からない」
「……そんなのでいいのか」
「あれを摂取して死なない生物はまずいないから、多分これで良いんだと思うぞ」
当然の様に背後に着き従う貂蝉と、未だに抱えられたままの曹操とで交わされる会話を聞き流しながら、呂布は建物の角を曲がった。
そして見えたのは、地に伏している高順と陳宮の姿と、少し離れたところで威嚇の気配を見せる赤兎馬と。
四つの武器を携え、一人立っている袁紹の背だった。
「貂蝉」
「……すまない、奉先。失敗したらしい」
「……袁紹」
問うように言葉をかければ、緊張感に塗れた声が返ってきた。そんな自分たちのやり取りとは関係なく、曹操がぽつりと呟きを零す。
そのどれかに反応したのだろう。四つ手の巨躯が、ゆっくりとこちらを向いた。
「わしが大人しく、逃がすと思うたか……?」
そして、その様を見て、呂布は目を細めた。
本来と違い、赤く、血走った様な眼。そこから感じられるのはひたすらの怒り。戦場を得るためにと一時的に主従を結んだ侠は、我を忘れるとまでは行かなくとも、それに近い状態になりうるまでに激昂していた。それは自分たちが裏切りにも等しい行為を成しているからではないだろう。
今のこれにとって、大事なのはそこでは無い。
籠の中に閉じ込めた鳥が、出て行こうとしている。
これは、それが許せないのだ。
それは、酷く馬鹿馬鹿しい考えだ。鳥が鳥である以上、籠を出ようとするのは必然でしかない。生まれながらに翼を持ったものが、それを折られようと空を、籠の外を望むのを止めるわけが無いではないか。
その事を、知らなかったわけではないだろうに。
これは、許すだの許さないだのという段階の話では無い。
縛ろうと言うのが、愚かなのだ。
と、思い。
ふと、呂布は気がついた。
自分を動かす事になった苛立ちの理由、それは。
現状が気に入らない、という、ただそれだけの事だった。
「……ふん」
思い至って見れば、実にあっさりとしたものである。どうして気付けなかったのだと、過去の自分に対して呆れさえ覚えそうな程に。
しかし、まぁ。
気付いてしまったからには、先ほどまで以上に手は抜けないし、投げだす事は出来ない。
成すか成さないか。
自分に残されているのはその選択肢……ではない。
成す。
それのみである。
そうと自覚してしまえば話は早い。
呂布は、荷物から手を離した。
結果、腕を縛られ傷の痛みで体を上手く動かせない曹操は、受身も取れずにそのまま地面に落ちた。その事に対する文句は……無かった。どうせ、落ちた時の衝撃で傷が痛み、喋るどころでは無くなっているだけだろう。死にはしない。
動かない曹操から視線を外し、貂蝉の方を見る。
「貂蝉、お前がこれを連れて行け」
「何?」
「俺はあれの相手をしてやる」
だから行けと。
こちらの意図を察したかのだろうか、静かに寄って来た愛馬の手綱を渡しながら言えば、貂蝉は一瞬だけ迷うそぶりを見せたが……大人しく頷いた。
「終わったらちゃんと高順と陳宮を回収しろよ」
「知らん。アイツら自身がどうにかすればいいだろう」
「それが出来ないだろうから言ってるんだがな……」
やれやれと肩を竦めながらも赤兎馬を戦輪形態に変え、曹操を乗せ、自身も乗って。
貂蝉はうっすらと笑った。
「早く追って来いよ」
「言われるまでも無い」
軽く言葉を交わし。
呂布は地を蹴り、袁紹に切りかかった。
牽制を目的としたその攻撃は、果たして、思った通りの結果を残した。持つ武器全てを駆使して袁紹が戟を受け止めた隙に、赤兎馬がこの場から離れる方へ走りだしたのである。あちらは表門の方向だが……事態がこうも相手に把握されていては、裏でも表でも変わらないだろう。それに、何があったとて、貂蝉ならば上手くやるだろうと言う確信もある。
これで目出度く、鳥は鳥かごの外、だ。
「……何故このような事をする」
戟を払い、それのみで他者を害する事が出来そうな程の眼光を向ける袁紹に。
「知れた事」
地に着き、再び戟を構え、獰猛に笑い、応じる。
「あれは俺の獲物だ」
それを閉じ込め、奪おうなどと。
許しはしない。
~呂布と曹操様。認めた敵と言うか何と言うか。
呂布的には、曹操様は獲物みたいなもんじゃねーのと言う感じで。それを横取りされたらそりゃ苛々もするだろう。そんな感じです。それしかない感じです。
そして呂布視点は……存外難しいですね……何考えてるのか分からないから。何も考えずに衝動のまま突っ走ってそうな気がしないでもない呂布ですけども、それでも何か考えている事は考えているのでしょうし。でもそこが分かんないって……難しいです。
戦闘シーンを斬ってしまってすみません……書ける気がしなくて逃げました。そのうち戦闘とかも書いてみたいんですけれどもね。そして呂布視点は……存外難しいですね……何考えてるのか分からないから。何も考えずに衝動のまま突っ走ってそうな気がしないでもない呂布ですけども、それでも何か考えている事は考えているのでしょうし。でもそこが分かんないって……難しいです。
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