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「やはりか……だが」
「ん?」
ロックオンの申し出を受けたティエリアは、考える素振りを見せた。
少し、驚く。自分の時のように、すぐにでも了承を出すと思っていたのに。
どうしてかと目をやると、彼はちらりとこちらを見て、その後再び視線を戻してから口を開いた。
「刹那・F・セイエイと同居する、というのならば、町長に話をつけておいてもいい。この町に住むのなら、彼女からの許可がいる」
「……待て、ティエリア・アーデ」
何だそのイヤガラセのような提案は。自分が基本的に人と触れ合うのが苦手だというのは、重々知っているはずだろうに。
だいたい、この屋敷に住まわせず、彼の所持している貸屋に押しやるのが問題なのだ。この屋敷には、有り余るほどに部屋があるのだから。
……が、家賃無料で住まわしてもらっている以上、こういうことに関しては強いことが言えないのが現実だ。
もしかしたら、そういうところも計算して、無料にしているのかも知れない。ずっと不思議に思っていたが、ようやく答えが分かった気がする。
さすが、ティエリア・アーデ。こういう悪巧みにはよく頭が回る。
と、そこでふと、思い出した。
そういえば、あの貸屋地帯で明かりが点かない家は二軒ある。なのに、どうしてわざわざ自分とロックオンが一緒に住まないといけないのか。
「空き家はあと二つだろう?」
「そのうち一つは、あの三兄弟が入る。ロックオン・ストラトスよりも先に言ってきたからな。優先順位は彼らが上だ。それから、あと一つは……物置だ」
「……?何で、わざわざ屋敷から離れたとこに?」
その通りだと思った。ロックオンの言ったとおり。物が必要になったとき、それでは取りに行くのは大変そうだ。
そこを取っ掛かりに、反論を始めようと考えて、その瞬間。
ティエリアに先を越された。
「刹那・F・セイエイ、ロックオン・ストラトスと共に住めば、家事を全般を押しつけられるが」
「ちょっと待て!」
ロックオンの叫びが聞こえたが、それどころではない。
屋敷の主の言葉は、刹那にとってあまりにも魅力的だったのだ。
刹那は、料理を作るのが酷く苦手だ。それはこの町に来るまでは自分でやったことが無かったこともあるだろうが……何よりも『作る料理がほとんど黒炭になる』という隠されていた才覚による物が大きい。お陰で、ちゃんとした物は一週間に五回、食べられればいい方という食生活だ。もちろん、こちらに来て食べるときは除外して考える。
…とまぁ、そういうわけだったので、刹那は思わず頷いていた。