ちびたちといっしょ②

ちびたちといっしょ、②です。誰得だと思いつつも②です。
今回は呂布とか孫権とか。

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　このような売り物があるのだという知識はあった。
　だが、まさかコンビニで売っているとは思わなかった。
　本来ならば賞味期限間近の割引商品が入れられているカートの中に、ただ一つのみで座り、じぃ、と見上げてくるそれを黙って見下ろす。
　その姿は『人形』というカテゴリーに入れられるだけあって、どう見たところで人の子そのものだ。そんなものに値札が付けられ売られているのだから、見るものが見れば眉をひそめる光景なのだろう。もっとも、こちらとしてはそんな意見はどうでもいいし、『人形』と呼ばれる商品たちにだって何も思いはしないのだが。
　これに関しては、どうやらそうもいかないらしい。
　見た目のせいか、はたまたまとっている雰囲気のせいか。何にせよ、これを見ているとある知り合いを思い出す、というのが、これに対して無関心ではない理由なのだろう。　カートの中身を片手で抱き上げて、レジの中にいないコンビニの店員に声をかける。
「孫権、レジに入れ」
「ん、何だ？　何か買……ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ！？」
「……喧しい」
　突然の大声に、開いている方の手で肩耳をふさぐ。ちらりと見れば、腕の中の『人形』はその様な行動はとらなかったが、呆れたような表情を浮かべていた。これは、大声を上げたあのコンビニ店員に対しての顔なのか、それともあのような反応をさせた自分に対するものなのか……あるいは両方に対してか。
　何となく最後の選択肢が正解だろうと察しながら、商品の置かれた棚を整頓していた手を止め、こちらを向いた状態で硬直している孫権に、もう一度言う。
「とっととレジに入れ」
「え、えっとさ……あのさ、ちょっと待って。悪いけど確認させてくれ。お前は、何でそれを抱えてるんだ？」
「買う」
「買うってそれを！？　呂布が買うの！？　夏侯惇とかならともかく何で呂布が！？」
　など言われて、改めて腕の中のそれを見下ろす。
　見た目はやはり、子供である。戦闘力の程はぱっと見ただけでは分からないが、とてつもなく強いと言う事は無いだろう。その辺りにいる雑魚ならば簡単に返り討ちにできそうな雰囲気は纏っているが、それ以上の、それこそ自分と渡り合える様な相手ではそれも難しいだろう。問題は腕や脚の短さだけでなく、蹴れば直ぐに吹っ飛びそうなこの体もだ。
　ハッキリ言ってしまうと、これは自分が買うには妙な代物だ。いざ喧嘩をしようというときにこんな物が傍にあったのでは、足手まといにしかならない。そう考えると、孫権の反応も分からないでもないものだった。
　それでもこれを連れていこうとしている理由は。
「何となくだ」
　としか表現できない。
　こちらのその答えを受けてか、孫権はため息を吐いた。
「……お前に引き渡すのって、凄く心配なんだけど。放置したりしないな？」
「したところで問題ないだろう」
「いや、あるからな！？」
　などというやり取りの間にレジに戻った孫権は、慣れた手つきでレジを操作しながら、再び息を吐いた。
「こんな不安な状況になる前に策兄に引き取ってもらいにくればよかった……」
「貴様らが買うつもりだったのか」
　紙幣を渡しながら問えば、釣銭と共に趣向が返ってきた。
「引き取り手がいなかったら、の話だけどな。実際はお前が引き取るとか言い出したわけで、それは杞憂だったみたいだけどさ……良いか？　引き取るからには、お前がちゃんと面倒見ろよ？」
「……ふん」
　その言葉には応じず、コンビニの出入り口へと足を向ける。
「何か問題が起きたら言えよー！」
　自動ドアを通り過ぎた辺りで背中に届いた声を無視して、抱き上げたままの『人形』に意識を向ける。
　小さく、何の役にも立ちそうにないそれは、見れば見るほど知り合いにそっくりだった。
　そういえば孫権が「夏候惇ならともかく」などと言っていたが、それはまさしくその通りだろうと、今更ながらに思う。あれならば確かに、見た瞬間にこれをかっさらってレジに直行するだろう。
　何せ、こんなにも曹操にそっくりなのだから。
　連れて帰れば曹操本人もこれを目にする事になるわけだが、どのような反応をするのか。
　それを見るのが楽しみ、というわけではないが、少しばかり興味はある。
　ふ、と口元を笑みの形にすると、腕の中のそれが小さく嘆息したのが分かった。

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というわけで今回は呂布と小さなそそさま編でした。
孫権がコンビニバイトなのはなんか気づいたらそうなってたって言う。劉備とおんなじ。そして呂布は孫権が働いているコンビニの常連にやや近い感じ。なんでって、近いから。知り合いがいるとかいないとかそんなの気にしないと思うんだ。

これがもしも続いたら、次は御対面になるわけですが、とりあえずそこまでは続けたいなぁと思わないでもなく。