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変身って言うか、万華鏡みたいなイメージだけど…
05.変身
ちょっと大きな、部屋。
その中央にポツンと、丸いテーブル一つと、椅子が一つ。
座っているのは、ツインテールの女の人。
「あら、お客様なんて珍しい」
その人はこっちに気づいて、来るようにと手招き。
断る理由もなかったので行くと、どこからか二つめの椅子が現れた。
……座れ、ということだろうか?
ちらり、と彼女を見ると、笑んだままで。
まぁ、いいか、と思って腰掛ける。
小さな背丈のせいで、そんなことにも一苦労。
まったく……夢の中では、どうして、こんなに小さくなってしまうのだろう?
「紅茶でいいかしら?」
はい、大丈夫です。
そう返すと、彼女はカップを一つ、こちらに渡してくれた。
受け取って、一口、それを飲む。
暖かくて、おいしい。
「貴方はどうしてここに?」
散歩を、しているんです。それで、ここへの扉を見つけました。
答えながら、思う。
……そう。ここに来れたのは、結構、偶然によるものが大きい。
扉はそれほど見つけにくいところにあったから。
「そう……なら、その偶然に感謝しましょう」
微笑む彼女に、こちらも微笑んで返す。
と、そこで、この部屋の変なところに気がついた。
内装が、少しずつ、でも確実に、変わっていっているのだ。
しっかり見ないと分からないくらい。でも、本当に。
どういうことだろう?
「私、今の世界が、あまり好きじゃないの」
訊けば、こういう答えが返ってきた。
なるほど、納得する理由だ。
世界なんて、簡単に変わるわけがない。大きすぎるから。
だから、世界に変わって欲しいという願いが、夢の中で実現される。
部屋の中が変わっていくという形で。
それでこそ、夢だ。
夢は、現実ではどうしようもない願いを叶える場所。
あぁ……それから、罪を背負う人の、ちょっとした安息地。
万華鏡のようにクルクルと変わっていく部屋を、ぼんやりと眺める。
興味は尽きないのだけれど……。
そろそろ、散歩を再開しよう。
「行ってしまうの?」
残念そうな彼女に、一言。
紅茶、おいしかったです。また飲みに来ます。
それから椅子を降りて、扉の方へ。
「待っていますわよ」
出る間際、後ろから彼女がこう、呼びかけた。
振り返って、アレルヤは笑った。
分かってます。
一度来た場所へなら、また、来ることが出来ますから。
では……次の邂逅まで。
そう残して、今度こそ扉から出た。
今回の人は留美。分かり易かったかな…?