忍者ブログ
式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

56


56


「……はぁ」
「どうかしましたか?」
「都の人たち。やっぱり、目的は……だよね」
「でしょうね」

 明確に何が目的かは言わなかったけれど、ソーマはちゃんと分かってくれたようだ。
 それに対して、ほんの少しの嬉しさを覚える。屋敷の住人だけでなく、彼女もとても付き合いやすい性格だ。とても感謝している。

 屋敷の壁の中に結晶を二つ入れながら、ため息を再び。
 全く、どうしてこの屋敷は力を受け付けにくいのだろう。いや、理由は知っているけれど。でも、やはり思ってしまう。これが無かったら、結晶は一つで十分すぎるほどなのに。だけれど様々な力の効力が薄くなってしまうせいで、二つほど入れなければいけない。
 不便な話である。結晶も、無限にあるわけではないのだから。

 理由を……地下の鏡を取り除くわけにもいかないし。実行してしまったら、まず間違いなくティエリアから怒りの声が上がる。それはかなり恐ろしいので無理。それに何より、あの鏡に近付きたくない。

「後は客室の方だね」
「にしても、随分と埋め込みますね。ここまでする理由が?」
「まぁ…ここが落ちたら負けだから。僕が居場所を大切にするのは知っているよね?」
「あぁ、なるほど……ここが消えれば、戦う理由が無くなるという?」
「ある意味、だけどね。みんながいたら多分、大丈夫」

 そんなことを話していたら不意に、すぐ横にあった扉が開いた。
 現れたのは……トリニティ三兄弟の長男、ヨハンだった。

 突然の邂逅に思わず呆然と見つめ合って、固まる。
 不自然な膠着状態。
 そんな中、最初に動いたのはソーマだった。

 我に返った彼女は速かった。裂け目を手元に作り出して、そこから別の場所に保管してあったのだろう金槌を取り出して……投げつけた。ヨハンの顔面めがけて。
 普段ならば軽く避けられただろうそれも、いきなりならば避けるのも難しい。金槌はクリティカルヒット…と呼んでも過言ではないくらい綺麗に彼の顔に収まった。

 倒れ行く彼を見ているしか無く、倒れる音がしてようやく、自分は我に返った。
 返って、物凄くこれは大変な状況だと気がついた。

「ソソソソソソーマちゃん、どどどうしよう……っ…声、絶対聞かれてる…っ!」
「落ち着いてくださいっ。ほら、深呼吸ですっ。吸って吐いてー、吸って吐いてーです!」

 ……彼女も慌てているらしく、『吸って吐いてー』などという、いつもならば言わないようなことを口にした。
 それを聞いて、ようやく落ち着く。他人がパニックに陥っているのを目にすると、気を静めることが出来るというのは本当らしい。覚えておこう。

「……でも、本当にどうしよう…いつもみたいに声を変えてないよ…今」
「ドア越しですから、そんなに深刻な状況ではないのでは?それに、私が金槌を投げつけましたし。前後ぐらいの記憶は飛んでいるかと」
「………かなぁ」

 ならば、良いのだが。
 不安に思いながら、床に伸びているヨハンを見る。


 …ごめんなさい。
 でも、まだダメなんです。

 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
カウンター
プロフィール
HN:
式ワタリ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
ガンダム大好き生物。キャラも好きですが、機体も大好きです。実は(?)、今は軽く三国伝にすっ転んでます。
最新CM
[09/28 ナワ]
[06/15 オシロマミ]
[11/02 banana]
[11/02 式ワタリ]
[11/01 犬っぽい]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
フリーエリア
忍者ブログ [PR]