お題：黄 05.夜逃げ

ＡＥＵの大佐様の誕生日は、今日でよかったでしたっけ？
今回は、そんなお話です。

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05．夜逃げ



「大佐！夜逃げしてみましょう！」
「……はぁ？」
　いきなり来て（……というのは毎日のことだが）、一体何を言い出すのだろうか。あまりにも唐突すぎて、戸惑うというより……むしろ呆れる。
　持っていた書類とペンを置き、机に肘をついて来訪者の方を向く。
「……パトリック、突然何なんだ」
「いえ、夜逃げって『愛の逃避行』みたいで良くありませんか？」
　……なるほど。どうやら今回は、彼のふとした瞬間の思いつきからの行動らしい。こういう時が一番行動を読めなくて、少し困るというか……まぁ、そこが少しおもしろいのかもしれない、が。
　…できれば、仕事中にそれは止めて欲しい。
　溜息を吐いて、コーラサワーの目を見据える。
「お前はもう少し仕事と日常のメリハリを付けるべきではないか？」
「そうですか？」
「…そうなんだ……」
　不思議そうな表情の彼に、もう何も言う気が起きなかった。言っても無駄という諦めが強いせいだろう。一体これまでに、何回似たようなやりとりをしてきただろうか……あまりに不毛で無意味だ。
　これでは、本当に犬のようではないか。しかも子犬。気に入った相手にじゃれついて、しかもまだ幼いような。
　その場合は間違いなく、飼い主は自分なのだろう。ということは……躾を付けるのは、こちらの義務なのだろうか？酷く大変な作戦になりそうなのは……気のせいではない。
　まぁ、今という時代の変わりようについて聞いたとき、即答で「（考えたことが）無いです」と言った張本人だ。このくらいの表現では、まだまだ生やさしいほうだろう。やろうと思えば、いくらでも言い募ることが出来る。だが、あの時感じた脱力感は、言葉にして表すことはできないだろうと、漠然と感じていた。
　真面目に色々考えていた身としては、それほどあの答えは衝撃的だったのだ。
「大佐？」
「ん？あぁ、何でもない」
　いつの間にか黙っていたことを訝しく思ったらしい。彼は少し、不安そうな顔をしていた。怒られるとでも思ったのだろうか。
　なら言いに来なければ良い……のだが、そこを我慢できないのが彼という人間なのだろう。まだ短い付き合いだが、そのくらいは分かる。
「で……俺…じゃなかった、私の誘いは…」
「却下だ。私にはまだ仕事が残っている」
　そう言って再び書類に目を向けると、しょげた気配が発せられるようになった（発信源は勿論目の前の彼）が、気にせず仕事を再開する。いつまでも構ってやるわけにはいかないのだ。
　しばらくコーラサワーはそこにいたが、断念したらしい。
　遠のいていく足音、ドアの閉まる音を聞いて顔を上げると、やはりそこには誰もおらず
　かわりに、ラッピング済みの小さな箱が机の端に置いてあった。
「これは……」
　手に取ってみると、小さなカードがひらりと落ちる。
　見れば、そこにはメッセージが記されており。
「……あぁ、そういえば、今日が私の誕生日か」
　読んでみて思い出した。最近は忙しいから、すっかり忘れていた。夜逃げ、の話は半分は本気だったろうが、ここに来て話す事柄としてあらかじめ計画していたのかも知れない。こっそりと、これを渡すために。
　マメなヤツだと苦笑して、カードと箱を机に置き、それから新しい書類を手に取った。
　今日のノルマを達成したら、少しは会いに行ってやるかと考えながら。



　……というか、どうして彼は自分の誕生日を知っていたのだろう？
　教えた覚えは無いのだが。

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　炭酸は、同僚に話しかけまくって聞き出しました。
　すごい執念だ（笑）！

　大佐の誕生日記念に。

　これでほとんどオールキャラ？ラグナとか池田さん（笑）とか、出てないけど…アリーさんは庵の方で少々活躍してもらう予定で。ラサーはあれだけ、じゃぁ可哀想な気もする…。