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「…………………何だコレは」
「何って、見て分かりませんか?」
「分かったから訊いてんじゃねぇか…」

 アリーの視線の先には、従者の少年に吊されている依頼主の姿があった。しかも『吊す』というのが言葉のアヤでも何でもなく、本当に木にくくり付けられたロープに足首を繋がれ、頭を下にして宙に浮いていて。
 これはどういう主従関係だと、思わず考えてしまったのは仕方がないだろう。

 例えば、自分の部下は隊長であるアリーに忠実だ。命令ならば多少は危険なことでも、キチンとこなす。そうでなければチームとしても成り立たない。
 そういうわけだから当然、命令を聞かせることができるようにと、普段から威厳ある態度を取ることも必要になる。まぁ、そんなことをしなくても、言うことを聞かせるくらいはお手の物だが。だが、そうしていたほうが何かとやりやすいのだ。

 だからこそ、下の立場のハズの少年が、上の立場であるハズの依頼主を吊し上げるという行為に、思わずツッコミを入れてしまったわけだ。
 絶対にコレは、一般的に見ても変だろう。

 が、何を言っても無駄だろう事は彼の受け答えから理解できたので、黙って成り行きを見ておくことにする。現実を受け入れてしまえば、存外コレを眺めるのは楽しい。

「泥様?僕は都に残ってくださいと言いましたね?」
「しかし『異端』を狩る現場を見たいと思うのは、人間としてとうぜ…」
「だから何です?」

 ニコリと微笑みながら、主の言葉を遮る彼の名はリボンズ、というらしい。それから『泥様』と呼ばれているのはアレハンドロという貴族。
 ……本当に、これだけ見ていたら、どちらが主か分かったものではない。

「危険な上に足手まといなんです。貴方分の食費も勿体ないし、食事を配る係の僕の労力だって無駄なんですよ、一人分。あぁ、酸素ももったいないですね。息を止めてください」
「リボンズ……それは私に死ねと言っているのか?」
「まさか。そんなわけないじゃないですか。僕は泥様が大好きですよ?」
「なら『泥様』は止めてくれ……」
「歪んだ愛情表現ですから。あきらめてください」

 いい加減、アレハンドロが憐れに思えてきた。
 が、何もする気はない。こんなおもしろいショー、ここで見逃してしまえば当分……いや、一生見ることは出来ないだろうから。
 それだけ有り得ない光景なわけだ。

 もう少し続きそうな二人のやり取りを眺めながら、あることを思い出してため息を吐く。
 折角、使える能力を持っていた『異端』を捕らえていたというのに……部下の不手際で逃がしてしまった。ここからは歩いていかなければいけない。面倒な話だ。時間の短縮もかなわなくなった。

 再度ため息を吐いて、標的のいる町の方に視線を投じる。
 早く会えないものだろうか……。
 今から、その邂逅が待ち遠しい。



 ちなみに。

 失敗をした部下は今頃、森の動物の餌にでもなっていることだろう。

 

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