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ちょっとした用を思い出し、雑貨店に向かう途中。
最短ルートでは時計塔の傍を通るのだが、青い髪の最近知り合った結構な危険人物らしい『異端』の三兄弟の次男が、塔の下で腕を組んで悩んでいる姿を見て一瞬、遠回りでも別ルートを行こうかと考えた。
が、それも何だかバカバカしいし、どうして彼のために自分が無駄な労力を労しなければならないのかという思考の末、そのままの道を進むことにする。
「お、ガキじゃねぇの」
「俺の名前は、刹那・F・セイエイだ」
ハレルヤといいコイツといい、どうして人の名前をちゃんと呼ばないのか。ガキ、というのは事実なので『チビ』よりはマシだと思うが。
それでも、出会い頭に『ガキ』は無いと思う。
これで本当に自分より年上なのだろうかと呆れる。
いや、別に歳を確認したわけではないが。けれどもこの身長差だし、間違ってはいないだろう。年下だったら一種のミステリーだ。
「どうかしたのか」
「……笑うなよ?」
「物による」
答えると、彼は口を開いた。
少しばかり、躊躇いながらも。
「なぁ……この町に神殿みたいな場所ってねぇよな」
「そんな物があるのなら、今頃スメラギ・李・ノリエガが観光場所にしているだろうな。ここも観光客という旅人で溢れるのではないか?」
「スルメギ?」
「スメラギだ。この町の町長」
というか、どうやったらそんな聞き間違いをするのか。本人に言ったら……むしろ喜ばれるような気がする。名前の中に『スルメ』とあるから。もしかしたら『スメラギ』よりも『スルメギ』の方があっているかも知れない。酒好きの彼女にはお似合いだ。
……話を戻そう。
「それで?」
「信じられねぇかも知れないけどな、俺、さっきまでそんな場所にいたんだ」
「……頭でもおかしくなったのか?それとも、幻でも見たのか?」
「……………そう思われるだろうから、言いたくなかったんだよ」
ミハエルはハァ、とため息を吐いた。
それを言うならこちらもだ。聞くのではなかった。そんなバカバカしい物語なんて。そんな場所がない以上、彼の見た光景は幻以外の何者でもない。
時間の無駄だったな、と思いながら、彼の傍を通り抜けようとしたとき。
彼の唇からこぼれた音。
「つーか、あの鬱陶しい黒髪の子供は何だったんだよ…あれが気になってしかたねぇ…」
その言葉を耳にして、刹那は足を止めた。
……今、彼はなんと言った?
鬱陶しい黒髪の……『黒』の髪?
「……もっと詳しく話を聞かせろ」
「…?どうしたんだよ、急に」
「いいから話せ」
「…ま、いいけど…」
そして聞いた『記憶が遠ざかる』という話。今もそうで、何とか繋ぎ止めていること。
刹那はそれで、ミハエルが嘘をついているのではないと分かった。
何故なら、それは自分自身も経験した事柄だったから。
そう……『黒色』にまつわる記憶と同じ。
首からかけている首飾りの、指輪の青が、陽を受けて明るく光った。