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 ギィ、という音と共に扉が開いた。
 何?と顔を向けてみたら、そこにはボロボロの黒いロングコートを身に纏っている、長い黒髪の子供の姿が。屋敷の人…だろうか?

「えっと……こんにちは」
「あ、こんにちは……」

 ペコリと礼をすると、子供もペコリとお辞儀を返した。
 ルイスは今、喋ることが出来ないから微笑むだけ。だけれど子供は気にした様子もなく、扉を閉じてこちらにやってきた。

「お客様、ですか?」
「僕らは……そういうものになる、のかもしれないけど…」

 子供の問いに、曖昧な返事しか返せない。ある意味では『お客様』で正しいのだが、実際は『逃亡者』であり、しかしそれを幼く見える子供に言うのは一体、どうしたものかと憚られたのだ。
 絶対に、子供に言うようなことではない。

 だが、嘘をつくのも……沙慈は嘘をつくのが苦手で、だから今でも表情は苦いものであろうと推測された。相手に、嘘をついているという罪悪感を持っているから。
 どうしようかと迷っていると、先手を打つかのように子供が口を開いた。

「逃亡者……なんでしょう?」
「……!?どうしてそれを……」

 思わず立ち上がると、子供はクスクスと笑った。
 イタズラが成功した時のように。

「引っかけですよ。僕は知りませんでした。けど、こんな人が来そうにない部屋に入っているのだから、何らかの事情を持つヒトだとは想像できます……で、どこから?……というのは、今更ですね。逃亡と、今の周辺事情からしたら…」

 ……全く、何という子供だろう。
 関心しながら、もう、沙慈は嘘をつくのを止めることにしていた。言ったところで、きっと子供には分かってしまう。先の通り、自分は嘘をつくのが苦手なのだ。賢い人、相手を見ることに長けているヒトの前では、そんなものは無力に等しい。よく知っている。いつもいつも、姉やルイスにはすぐにバレるから。

「うん。都の『狩人』と一緒にいる傭兵の所から逃げてきたんだ」
「傭兵…ですか。特徴は?」
「貴族の人を一人、従者の人を一人連れていて、リーダーは赤い髪の人。確か名前は……」

「もしかして、アリー・アル・サーシェス?」

 ポツリと呟いた子供の言葉に、どうして知っているのだろうと、酷く驚く。
 まさか、あの人たちの知り合いや仲間、というわけでもないだろうに。

「そうだけど……どうして知ってるの?」
「昔、ちょっとだけ会ったことがあって」

 そう言って微笑む子供の表情に、僅かに翳りが見えたのは……気のせいだろうか?何か、嫌な思い出でもあるのかも知れない。
 あそこの人は過去に、傭兵以外の仕事もしていたと聞くから、その時に何かがあったのかも…あくまで、想像の域を出ないが。

「そっか……あ、この話、刹那って言う人には言っちゃダメですよ?」
「え……?」
「絶対、です。じゃあ、僕は行かなきゃいけない場所があるので。さよなら」
「あ、さよなら……」

 来たときと同様、急に去って行く背中を見送って、それからふと、疑問に思った。
 あの子供は、どうしてここに来たのだろう?偶然通りかかって、というのは部屋の場所からして有り得ないだろうし……自分たちを部屋に入れた人が、教えでもしたのだろうか?

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