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「ティエリア・アーデ」
「分かっている。説明、だな?」
アレルヤとロックオン、二人の背中が完全に見えなくなってから口を開いたところは、一応評価してやろうかと思いながら、ティエリアは四人(+α)を振り返った。誰も彼も……というワケにはいかないが(一人気絶中である)、物訊きたげな表情でいる。
さて、まずは何から語るべきか。
考えて後、質問の方から片付けていくことにする。
「では、刹那・F・セイエイ…君が訊きたいことは?」
「ミハエル・トリニティは撃たれた。だというのに銃痕が無いのは何故だ」
「他は無いか?」
「無い」
即答。ならば本当にないのだろうと、今度はトリニティ三兄弟の方を向く。質問はあらかじめ、全て承っておこうと考えたのだ。その方が面倒が少なくて楽である。
「ヨハン・トリニティ、ネーナ・トリニティ……貴方たちは?」
「ミハエルが何に操られていたのか、私はそれが知りたい」
「え?ミハ兄、何かに操られてたの?」
驚いた様子のネーナ。どうやら、彼女の兄の一人がどうなっていたか、知らなかったらしい。ぱっと見ただけで、何の事前説明もなく気付というのも無理な話だが……少しは疑うか考えるかするべきだろうに。あるいはしていたのかもしれないが、ティエリアには知りようもないことだった。
仕方がないことか、と思いながら最後にソーマの方。
といっても、彼女はほとんど全てを知っているので訊く必要も、無いのだが。
「君は」
「有りました……が、考えたら分かったのでお構いなく」
「そうか」
彼女ならば、返答はそんなところだろう。
一人納得して、刹那の問いに応えるべく口を開く。
「白い銃弾は、魔を払う力だ。そして、それがロックオン・ストラトスの銃に入っていた。それだけのこと」
「あくまで……魔を払うだけ、か」
「その通り。それしか出来ない」
だからこそ、血は出なかった。ミハエルは異端で悪魔ではあるが、少なくとも『魔』の領域の住人ではない。もし仮にそうだった場合、酷いダメージを喰らうことになるが……それは、別に言う必要もないだろう。
それから……と、ティエリアは三兄弟の方を向いた。
「彼に取り憑いていたものは…精神体しか持たない存在だ。眠りという名の封印が行われていたが……何らかの弾みで起きてしまったのだろう。その際、彼が近くにいた可能性がある。ようは、ミハエル・トリニティは不運な被害者ということだ」
「うわぁ……すっごい明け透けに言いにくいこと…」
「事実だからな」
苦笑いを浮かべるネーナを一瞥し、ヨハンに視線を向ける。
これで説明は良いか、と。
しかし、彼は首を振った。
「まだ……その精神体の彼が『何者』なのかを教えてもらっていません。貴方は知っているのでしょう?ならば…」
教えろと、そういうことか。
知る権利はあるのだろうが……生憎、それを話す気は毛頭無かった。
これは、自分が話して良いことではない。
それを伝えようとして、だが、驚きに目を見張ったティエリアの動きは止まった。他のメンバーも同様に。
一度は落ちた刃物たちが、再び宙に浮いていた。