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一年生の体育の時間、です。
登場……刹那、アレルヤ、ハレルヤ、ティエリア、アリー
「ね……どうして、僕らはここにいるんだろ……?」
「は?そりゃ、なっちゃいけねぇ組み合わせができちまったからだろ?あー、嫌だねぇ……こういう面倒なの」
「なら、君は教室に戻って大人しく授業でも受けていればいいだろう、ハレルヤ・ハプティズム。もともと生徒会メンバーでもない君だ。別に俺たちと共に任務にあたる必要性はない」
話ながら眺める先では、一人の教師と一人の生徒が防具も着けず、竹刀を持って対峙していた。両者の間に漂っているのは緊張などという生やさしい物ではない。敵意、という中途半端な物でもなく、本気の……殺気である。
見れば、小柄な生徒の方は体のあちらこちらに痣を作っており、対して教員の方は余裕綽々の表情で、その上無傷の状態だ。二人の力量の差は、この様子を見るだけでも歴然としている。
あの教師が嫌いだということだが……いい加減、諦めればいいものを、と生との方に呆れにも似た感情を抱く。その根性は認めてやってもいい、のかもしれない。
まぁ、教師の方のあの表情を目にすれば、確かにムキにもなるだろう。余裕なのはおいておくとして、バカにしたようなあの笑みは腹が立つ。他人事と観察している立場の自分とは違い、あの一年生はあの表情を向けられている張本人なのだから、なおさらそうなのだろう。
「てーか、他の教師どもはどうしたよ。いつもみたく、代理ってのはいなかったのかよ。ほら、ダリルとかいうのとか」
「残念だが」
と、ティエリアが口を開いた。
それくらい考えれば分かるだろう、という目でこちらを見て。
「ダリル・ダッジは今日は出張だ。他にも体育教師がいないわけではないが……普通の教師に、このクラスの面倒を見るという重責を負うことができるとでも思っているのか?」
「無理……だよね」
力なく笑う片割れに、心の中で激しく同意する。
全く持って彼の言うとおり。このクラスには刹那だけでなく、ネーナまでいるのだ。刹那だけならまだしも、さらに一人追加というのはなかなか。しかもその上、単品では問題はないが、ネーナと組み合わさったら騒がしいことこの上ないルイスまでいるのだ。手に負えるものではないだろう。
ティエリアのクラスだって、この生徒会長がいるだけでも充分問題なのだ。一人でも十分な脅威成り得るこの三年生は、彼の隣のクラスのマリナ・イスマイールとコンビを組ませたら何気に最凶である。
……などと思っているハレルヤのクラスも、彼とミハエルがいる時点ですでに、問題を抱える教室の一つに数えられているのだが、それを自覚しているようなら彼ではない。
「そういや、他の一年坊は?」
「ネーナは……いないね。どこに行ったのかな?」
「どうせこの機に乗じて学園外にでも出たのだろう。今日は新作のブランドバッグの発売日だと、ヴェーダが言っていたからな…」
言いながら、どこか遠くを見るティエリア。
いけ好かないヤツではあるが……色々と、学園所有者関係で苦労しているようだ。一応、彼女の保護者的な立ち位置にいるのがこの眼鏡だから。
アレルヤも何かを感じ取ったらしい。慌てて話をそらすように言った。
「えっと……フェルト、は?」
「……フェルト・グレイスはあそこで寝ている。他は全員ギャラリーと化しているようだな。褒められた行動ではないが……今の俺たちにとっては好都合だ」
「だな。ゴチャゴチャしてっと、いざってときに動きにきぃし」
ハレルヤは、ぐっと伸びをした。
今回、生徒会メンバーのティエリアとアレルヤに下されたミッションは、この授業で起きる可能性の高い事柄を止めることである。それから、場合によっては周りへの被害を抑えることも。
そして、その『起きる可能性の高い事柄』というのが学園という場所では問題なもの……というか、実はわりと今でもそんな感じであるというか。
命令を下した女性曰く「教師が生徒を病院送りってのは、さすがにマズイと思うんだ。だからヨロシク」ということで、ミッションの内容はつまりはそういうことである。大事になる前に、あの二人の決闘というか死闘を止めろ、と。ただし、ギリギリまで待つようにという面倒な条件付きである。
「ったく……今すぐ止めりゃ問題ねぇだろーが。学園所有者様は、一体何を考えてんのかねぇ?」
「それもそうだけど……けど、彼女は彼女なりに考えていると思うよ?」
「例えば?」
訊けば、アレルヤは少し悩んで、それからポツリと呟いた。
若干、自信無さそうに。
「この方が、刹那に目標ができて……ためになるから…………かなって…」
「それはどういうことだ?アレルヤ・ハプティズム」
「えっと……力の差をハッキリさせて、もっと頑張れっていう…………?」
「何で疑問系だよ、お前」
「……有り得ない話ではないかもしれない。が…」
腕を組み、ティエリアはため息を吐いた。
「こうした方が、後々おもしろいことになりそうだ……などと思っている可能性の方が高い気がするのだが?」
「……成長と娯楽と…半々くらいかな?」
「むしろ3:7じゃね?」
まぁ、おもしろいこと、といってもどういう風にかは分からない。けれども、あの学園所有者のことだ。ありとあらゆる手を尽くしてうまく調整し、より楽しくおもしろい方向へと誘導していくのだろう。
なんというか……敵にしたら恐ろしいが、味方にしてもそれ以上に恐ろしい存在というのは、どういうものだろうか。自分たちよりも強いから、切り離して捨てていこうというのも不可能で、実に厄介だ。
果たして、あの女性と対等に渡り合える存在が、学園建設者以外にいるのかどうか……いるのだとしたら、今すぐにこの学園へと就職して欲しい。生徒会に所属しているアレルヤの負担が減る。
などと思っていると、ちょんちょん、と腕を軽くつつかれた。
隣に目をやると、アレルヤが心配そうな表情で戦っている二人を眺めていた。
「ね……そろそろ…」
「ん?あぁ、そうだな」
「そうだなって……そんな悠長な!?」
「慌てんなって」
言いながら、ハレルヤはすぐ傍らに立てかけていた竹刀を手に取った。
アレルヤの言うとおり。止めに行かなければマズイことになりそうだ。病院送りはいいとしても、全治一週間……以上は困る。アレルヤの仕事が増えるから。
本当は刹那が怪我をしようと、捻挫をしようと、痣を作ろうと、骨を折ろうと、脳しんとうを起こしたとしてもどうでもいい。止めに入ろうとする今でさえ、それを面倒だと思っているハレルヤだ。
なのに行くのは、やはり片割れをあんな危険な場所へと送り出せないという、そういう思いがあるからだ。怪我でもさせてしまったら一大事。だからこそ、ティエリアに文句を言われながらも耐え、二人についてきた。
もしも自分が来なかったら……生徒会長直々のお出まし、だったのかもしれない。彼だったら両者の間に割り込んだりはせず、ただ竹刀を投げ……いや、それは無いだろうか。いくら彼でも。有り得そうな気はするのだが。
そう考えたことを、あるいは気づいているのか……ティエリアが不機嫌そうな顔でこちらを見た。
「早く止めにいけ、ハレルヤ・ハプティズム」
「テメェが命令すんな。催促されねぇでも、行くっての」
「そうでなければ困るな。でなければ、ここまで連れてきてやった意味は無い」
「とっ……とにかく!」
ケンカに発展しそうなハレルヤとティエリアの間に、アレルヤの声がするりと滑り込んだ。
「早くしないと刹那がっ!」
「あー、はいはい」
気のない返事の後、ハレルヤは床を蹴った。
~そして、授業終了の一幕~
A「アリー先生、やりすぎは本っ当に止めてください……見てるこっちが怖いですから」
庸「んなこと言うなって。いいだろ別に」
T「良くないから言っているんです。もう少し、手加減という物を覚えてください」
庸「堅ぇなぁ」
A&T「貴方が悪い意味で自由すぎるんです」
H「痣の数は減ったみてぇだな。少しは進歩してんのか」
S「次こそは必ずアリー・アル・サーシェスを……ッ」
H「お前、本当にあの教師嫌いだな…ま、せいぜい頑張れよ」
やっと途美学園でアリーさんを出せた…次は目指せ、紅龍です。ラグナも書きたいけどキャラがイマイチ掴めてません。出番が少なかったからなぁ……。