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人には意外な特技があると言うけども……。
これは…意外どころの話ではない気が…。
チビスターズ第四話 ⑨
ゴトリ、というある程度の重量を持つ何かが倒れた音を耳にして、アレルヤは顔を上げた。間違いでなければ、その音は階段の方から聞こえてきたが。
くるりと振り向くと、そこには地に伏した女性の姿。それからロックオンとフェルトの姿があった。
「ん?お前らどうしてこんな所にいるんだ?」
「それはこっちのセリフですよ、ロックオン。貴方たちこそ」
「俺ら?怪しい行動を取ってたこの人を付けてきた」
指されたのは、倒れている女性。
目をそちらに移し、僅かに眉根を寄せる。どこかで会ったような気がするのだが……しかも、ごく最近。誰だろうか?
首をかしげていると、隣の刹那がポツリと呟いた。
「昨日のコンビニの……」
「え?あぁ…本当だ」
言われてみればその通り、である。
何故、というのはあまり思わなかった。昨日コンビニの立てこもりに巻き込まれた人が偶然、爆弾の仕掛けてある地下倉庫へ来たとは考えにくい。つまるところ、彼女は被害者を装った実行者だったのだろう。立てこもり犯がそれを知っていたかは分からない。だが、それは恐らく事実だ。
「じゃあ、昨日のアレは……やっぱり囮かなぁ。これを運び込むリスクを減らすための。ハレルヤはどう思う?」
「俺に訊くな俺に。昨日はこっちにゃ居なかったんだからよ」
「あ……それもそうだね」
「って待て。運び込むって……何かあるのか?」
「えっと……爆弾が。スイッチ押したら爆発するタイプ、みたいですけど…。今、ティエリアが解体中ですよ」
ほら、と示した先では、ティエリアが手を止めて腕組みをしていた。眉間にはしわが寄っている。躓いてしまった……のだろうか?独学だと言っていたので、どこかで限界はあると思ってはいたが。
しかし、彼でさえ出来なかったとなると、どうすれば良いのだろうか?アレルヤにはそういう知識はない。ハレルヤだってないだろうし、刹那もこれは管轄外だろう。ハロが居たら何とかなったかも知れないが、あのAIは家で留守番中である。
出来ることはないだろうか……そう、真剣に考えていたので一瞬、目の前に現れた物が何なのかを把握できなかった。
それは、スイッチだった。
「……え」
「これじゃないか?そのスイッチって。預かってくれよ」
「茶髪……テメェ、これをどこで見っけたんだ?」
「人混みの中。いやぁ……危なかったんだな…俺が拾わず誰かが踏んでたら……」
「全員サヨウナラ、だね」
笑えない事を真顔で言うフェルトに少々顔を引きつらせ、では何故彼はこのスイッチを自分に渡したのかと思ったときには、すでにロックオンはティエリアの所にいた。
ふぅん、と一瞥した彼は、ティエリアが持っていた道具を取り、隣に腰掛けて、慣れた手つきでさくさくと事を進めていく。
え、と言う間もなく、処置は終わったらしい。
立ち上がった彼を、思わず呆然と見てしまった自分は、決して変だとかそういう事はないと確信できた。刹那でさえ驚いている。
「えっと……何でそんなに慣れてるんです?」
「ん?いやいや、昔に色々あってな。その時に覚えた」
……一体、どんな『色々』なのだろうか。
「んじゃ、残りのも片付けてくる。ティエリア、やり方教えるから手伝ってくれ」
「……分かりました。というか、貴方はどうしてそんなに…いえ、いいです」
「初めて意見があったな、ティエリア・アーデ」
「…?」
「言わなくても分かる。どうしてこんな事を出来るのかと思っているだろう」
「その通りだ。まさか、君と分かり合う日が来るとはな」
「二人が仲良くなってる……後で、スメラギさんに報告しよ…」
「ねぇハレルヤ、あの倒れている人たちはどうしよう…警察を呼ぶべきだよね」
「爆弾の処理が終わった後でいいんじゃね?」
さすがは頼れるお兄さん……?
(こんな括りで言っていいものか怪しいけどね…)
裏社会に属していたのではと言われるロックオンです。
時限爆弾だって、きっと処理できるんじゃないかなとかなんとか。