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不幸は見つけてしまったことです。
何も、遊園地に『楽しい』ものがあるとは限りません。
当然ながら『怖い』ものもあるのです。
チビスターズ第五話 ⑤
それは、見つけてしまったが故の不幸だったのだろう。少なくとも片割れにとっては。
彼はとある方向を見て一瞬固まり、その後、何でもない風を装って前方を向いた……のだが、嘘が破滅的に不得手な片割れの誤魔化しである。そんなもの、あって無いようなものだった。
「アレルヤ、何見つけたんだ?」
「え?ハ……ハレルヤ、何言ってるの?僕は何も見てないですよ?」
声を掛けてみれば後半、焦りすぎて自分にまで敬語になっていた。
これはこれで新鮮で面白いと思ったものの、やはり他人行儀な気がしたのでいつもの方が良いなと思い直す。というか、ハレルヤはアレルヤ自身でもあるので、つまり彼は自分に自分で敬語を用いて話しかけたわけで……笑い話にしかなりそうにない。
とまぁ、それはともかく。
腕を引いたり話しかけたりと、ハッキリ言うと余計怪しく思わせている、しかし本人にとってはかなり必死で注意を逸らそうとしている行動の数々を無視し、ハレルヤはアレルヤが見ていた方へと視線をやった。
そして納得する。確かにソレだったら必死になる。
……だが生憎、別に自分はソレ……お化け屋敷は苦手でも何でもないのだ。
むしろ片割れをからかうためだけでも、そこに行く価値があるとさえ思っている。
そんなハレルヤが取る行動と言えば一つしかないだろう。
「おい、次はあそこに行かねぇ?」
「ハレルヤから提案って珍しいな………………てオイ、あれは…つーかお前……」
お化け屋敷とアレルヤを見比べながら、ロックオンが呆れたように嘆息した。理由は分かったらしい。だからといって呆れられる事でもないのだが。
だから、いつもより軽く(当社比)彼の脛を蹴っておいた。
「った!?」
「イチイチ表情が苛つくんだよ、この茶髪ロリコン貧乏くじ」
「何か増えてる!?」
「で?テメェらは?」
煩いロリコンを無視して、ハレルヤは残り三人の方を向いた。まぁ意見を聞くと言ってもあくまで形式であり、反対されようとどうしようとアレルヤを引き摺って、構わず行くつもりではあるが。むしろその方が片割れを存分にからかって楽しめるし。
いっそ、今からアレルヤを抱えて走って行こうか……。
などと考えていると、フェルトがこくりと頷いて見せた。
「私は別に良いよ…?」
「フン…君の提案というのが気に入らないが、どうしてもというならついて行ってやる」
「ならテメェけは来んな。どうしてもってほど、テメェに来て欲しかねぇし」
「そんなことを言っていいのか?」
「ンだと?」
挑発的な態度に反発するように睨みつけると、ティエリアはフフンと余裕タップリとでもいった様に鼻で笑った。さらに苛つく。
「何が言いてぇんだ…?」
「簡単なことだ」
そう言って彼が懐から取り出したのは……財布?
「ってテメェッ!何でそれを持ってやがんだ!?」
「先ほどロックオン・ストラトスからスっておいた」
「え、マジで!?…………うわ本当にねぇし」
「茶髪ッ!そんな簡単にスられてんじゃねぇよ!この大馬鹿野郎がッ!」
「………で、どうするんだ?」
軽く財布を放り、受け止め、それを繰り返しながらいけ好かない眼鏡が笑う。
「俺をおいていく気か?」
「………………出来るわけねぇだろ」
あの財布には昼食代やら何やらが入っている。つまり、あの財布をティエリアのの手に渡してしまえば、彼が気に入らないと思った対象は昼食抜きは間違いなく、あと帰るのも徒歩になる。来るときは電車やバスを使ったから、金がないとそうい結果になるのだ。
結論を言おう。
これからの遊園地での動向は、ほとんど彼の考えによって決まる。
あの財布を取り戻さない限りは。
「ハレルヤもティエリアも落ち着いてよ…」
「……アレルヤ」
「…何?刹那」
「俺は、アレルヤの味方だ。怖かったら俺にしがみついてくれて良い」
「刹那………うん、ありがとう…」
「当然だ」
「そこ!何いいムード作ってんだ!チビはアレルヤから離れろッ!」
ティエリアなら、スリくらい軽くいけると思います。