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地獄から舞い戻ってきました……
(by A)
チビスターズ第五話 ⑥
「まぁまぁの出来だったな」
「そ……そう、かな……」
他のメンバーより一足早くお化け屋敷から出た刹那とアレルヤは、近くにあったベンチに隣り合って座っていた。アレルヤの腕を掴み、一緒に入った他のメンバーを追い越して、そのままダッシュで出て行ったのだから当然と言えば当然か。
そんな行為の理由は酷く簡単で、つまりは怖がっているアレルヤが見ていられなかったのだった。ちらりと見たときの彼の顔は真っ青で、本当に怖がっていると分かったから尚更のことである。多分、あのままおいていたらハレルヤのちょっかいの関係もあって、完全に気絶でもしていたのだろう。
一応でも助け出せたことにホッとしながら、よしよしと頭を撫でてやる。何というか……そう、こういう状態だと、彼がどうしても年上に見えないから不思議だ。おっとりしている性格も関係しているのだろうが。
とりあえず安心させるべく、刹那は口を開いた。
「アレルヤ、あれは単なるプラスチックだ。それに幽霊役のバイトがいるだけ。本物はどこにもいないんだぞ?」
「かもしれないけど……暗いし突然だし…」
「まぁ、驚かせるのが目的のアトラクションだからな」
驚かせなければ、お化け屋敷として存在できないような気が。
それに暗くて突然でなければ、そんなに驚かすことが出来ないのではなかろうか。やり方、というのも大きく関係はしてくるだろうが…実際はどうなのだろう。
「こうしているのも何だな……缶ジュースでも買って、」
来る、と言って立とうとして、服の裾の辺りを引っ張られて後ろを振り向く。
いたのは、申し訳なさそうな顔のアレルヤ。
「えっと……出来れば…一人にしないで欲しい……んだけど」
「……了解した」
きっと、どうでもいい誰かなら放っていたのだろうが…アレルヤがこうまでして頼むのだ。聞かない理由はどこにもない。
……にしても惜しいことをした。今ここに端末が有れば、頬を赤く染めているアレルヤの写真が撮れたのに。しかも子供verで、今限定。次があるかさえ分からない。……本当に残念だ。
もう一度彼の隣に収まって、刹那はお化け屋敷の方を見た。
丁度出て行く影があったのだが……一般人のようだった。さっき何番目かに追い越していった誰かである。ということはつまり、残りのメンバーが出てくるのはあと少し先だろう。さすがに大きな彼らが走っていくのは無理がある。
大きいのも善し悪しである。
ちなみに、刹那は大きい方が良い。
「でもさ…曲がり角でいきなり人が出てきたときはビックリした…」
「あぁ……あのゾンビみたいのか」
「うん。一瞬触れられかけたんだけど、ドロッとしてて気持ち悪かった…」
「だったな…」
あれは確かに。ドロともグチャとも表現し難い感触だったのは覚えているのだが。どうやったらあぁいうメイクが出来るのか、参考がてらに聞いておけば良かったかも知れない。
「そういえば入って直ぐに、僅かに距離を置いて待ちかまえていた女がいたな」
「あ、あの人?ニコって笑って消えちゃった人だね?どこに行ったんだろ…うぅ、怖いよ」
「どうせ、どこかに隠し通路でもあったんだろう」
と言うものの、残念ながら刹那にはそれを見つけることは出来なかった。本当に入ったばかりで、そこは単なる狭い通路だったから簡単に見つかるかと思っていたのだが……天井は見ていないから、もしかしたら飛び上がったのかも…いや、有り得ないか。そうだったら流石に気づく。
「走ってる途中、誰かの体を透け通って行ったような…あれは何だろ」
「気のせいかホログラムだろう。後者なら、良くできていたと褒めるところだが」
「……だよね」
そして、二人で顔を見合わせて笑い合った。
~実は、後ろの茂みにいた他メンバー~
「…なぁ、ティエリア、ゾンビみたいなのっていたっけ?」
「……俺の覚え違いでなければいませんでしたが。通路で待ち伏せていた女性は?」
「悪い、俺………心当たりが無いわ…」
「そうですか…フェルト・グレイス、君は?」
「私も見てないけど…幽霊?」
「まさか…んな、」
「あ、アレルヤ霊感有るから」
「はぁ!?そんなの初めて聞いたぞ!?」
「いやまぁ、アイツ自覚ねぇし。聞いてる限りじゃチビも霊感あるっぽいな」
「刹那も自覚ゼロかよ……ってことは、ハレルヤには見えてたわけか?」
「当然だろ?俺を何だと思ってんだよ」
アレルヤが出来る=ハレルヤも出来る
ハレルヤが出来る≠アレルヤも出来る
…だと思っています。