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「うっぐ…えっぐ……」
「あー、もういい加減に泣き止めって、キュリオス……な?」
「で…でもっ……えぐ…」
「……すまない、キュリオス。やりすぎた」
何度も何度も腕から手首の方へと少しずつ広がる袖の、その端で涙を拭っていて、なおも泣き続ける橙色の人形を見て、ヴァーチェは多大な罪悪感を感じることとなった。あれは報復なので当然の行為だとは思うが、まさかここまで……。
今まさに、いじめっ子の気分を味わっているヴァーチェだった。
一体、どちらがいけなかったのだろう…。
見つけた瞬間に、エクシアとキュリオスの頭を続けざまに蹴ったことか。
その後に二人にこんこんと恨み言を言い聞かせたことか。
……どちらも、かもしれない。
蹴った瞬間に涙目になっていたから、多分、恨み言でトドメを刺した形になるのだろう。気が弱すぎるほど弱い彼だし、納得である。
ただ、対してエクシアに全然堪えた様子がないのは如何様な物だろう。
「ヴァッ…ヴァーチェ……もう、蹴らない?恨み言も言わない?」
「君が大人しくしていればな」
「本当だよね!?本当……だよ、ね…?」
「本当だ。だからデュナメスの後ろに隠れながら話すのは止めろ」
やはり……脅かしすぎたか。
どうやって元気づけようと考える内に、エクシアの足元を転がっている球体が目に止まった。
この球体は先ほどからいる。
どうやら意思があるようだ。動力源は不明だが……人工物であるのは『システム・ナドレ』発動時に知ることが出来た。いやまぁ、こんな天然物があってたまるかと、そう思うわけだが……だって、見るからに機械だし。
「キュリオス、そこの球体は?」
「えっ…えっと……橙君はハロ、っていうんだって。紫君はHAROだそうだよ?」
「どこが違…いや、いい。ニュアンスで何となく分かった」
少し、いつもの調子に戻ったキュリオスに満足しながら、オレンジ色の方を手にとって持ち上げてみる。
「貴様、何者だ?」
「ハロ!ハロ!」
「名前ではなく、存在について訊いているんだがな…まぁ、いい」
溜息を吐きながら放してやれば、ハロと名乗ったその球体は紫の球体の所へと向かった。
それを眺めながら、呟く。
「どうせ、俺たちのようにワケの分からん存在理由を持っているわけではないだろう」
「……ヴァーチェ、軽々しくソレを口にするな」
「構わないだろう?聞いているのはそこの球体だけ。屋敷においていけば問題はない」
エクシアの言葉へと答えた返事は、ある意味では正しかった。
知られなければいい。知られたとしても、実行できるかさえ分からないその『存在理由』だし、それほど問題ではないと言えるだろう。
だが、ソレが存在するという事実、生み出されて何年も経つ自分たちが未だにソレに縛られているという事実……それらもまた歴然としてあり、エクシアの言葉も正しくはある。
つまるところ、どちらが正しいとも言えないのだ。
ベストは……まぁ、言わないことだろうが。
「けどま、確かにワケは分かんないよな。何だっけ…そう、『神が生まれ落ちた瞬間に、』」
「『神を殺せ。そして、世界を壊せ』、だ。方法さえ知らないのだし、やりようもないな」
デュナメスの跡を継いでヴァーチェが言葉を紡ぎ、キュリオスが悲しげな表情を浮かべる。エクシアは、無言にして無表情だった。
「一体、何を思って…僕らを作ったんだろう、作った誰かは…」