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「くしゅっ…」
「あれ?刹那、風邪?」
「いや……違うようだが」
真夜中、一行は都へとたどり着いていた。
閑散とした門の所で二言三言門番と言葉を交わし、馬車のままで都へ入る。
入ったら下りて、こういう時に毎回訪れる宿へと向かうのだそうだ。
何故下りるのかというと、それは宿の立ち位置による物らしい。何でも、凄く入り組んだ細い道を通っていかないと着くことが出来ないのだとか。
そんな面倒なところを……と思うが、都の異端を発見するための機器の影響が無い数少ない場所がそこらしく、つまりは選択肢がほとんどないためやむを得ず、という面もあるらしい。面倒な話だが、異端が多すぎるこの一行だったら死活問題だ。
あと、異端を発見するための機器、これも割といい加減な物らしい。
異端が力を使用しなければ気づけないこともあるし、範囲外から使って範囲内に入っていっても反応しないそうで。だからこそ、今もアレルヤは変身後の姿で都の中へと入ることが出来るわけなのだが。
「じゃあ、歩きながら部屋割りを決めようか。僕とグラハムが一緒は当然として……」
「その前に何人部屋が何部屋って言うのを言えって」
「それもそうだねぇ」
ロックオンの指摘に笑いながら、路地を歩く一行の一番後ろからカタギリが言う。
ちなみに一番先頭はソーマ。どうやら彼女の住む家は都にあるらしく、道にも精通しているようである……にしても、さっきから『らしい』だの『だそうだ』だの…自分でも何だか思うところがある。都に来た回数が少ないとはいえ……何というか…。
「刹那?どうしたの黙って……もしかして、本当に風邪?」
「いや、少し考え事をしていただけだ」
「なら、良いんだけど…」
心配してくれたらしいアレルヤに答えて、気持ちを切り替えることにする。
まぁ……知らなくても良いだろう。
死にはしないだろうし。
そう思いながらもカタギリの言葉を拾い上げる。
曰く。
部屋は二人部屋が三つ、三人部屋が二つ取れたのだそう、だが……。
「一人、入んねぇような気がするんだが?」
「奇遇だな、ハレルヤ。俺も同じことを思っていた」
「私もです、ティエリア」
「仕方あるまい。それ以上は取れなかったのだからな。まぁ、これも運命だと…」
「グラハム、君の語りは誰も望んでないと思うよ?」
カタギリの言葉に、刹那はこっそりと頷く。
同感だった。
というか、それを今決める必要はどこにあるのだろう。宿に着いたら部屋に入って、直ぐに眠りたいとは思うが……別に決める時間くらいは起きているつもりだ。眠気に勝てずに眠る、ということをする気は毛頭無い。
一体、何故……と考え、あぁ、と納得した。
確かに今、決めていたほうがいいかも知れない……宿の人のために。
絶対に部屋割りの話し合いの際、大騒動になるに違いなかった。アイツとは嫌だの、一緒は彼が彼女がとか色々と。本当に色々と。
結果として宿から追い出されても文句は言えないだろう、が……ここで大騒ぎするかもしれないというのも如何なる物だろう。むしろ、こちらの方が広範囲に迷惑が広がりそうだが。
刹那の中では「部屋割り決定=修羅場あるいは大騒動の場」という方程式確定していた。
……そして、それはあんまり外れていなかったと、結局、宿に着いてからになった話し合いの時に一人確信するのだった。