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淋、と鈴が鳴る。
悲しげに、哀しげに。
「ねぇ、アリオスたちはどこにいるのかなぁ……」
「何を突然」
「だって……」
石のベンチの上で両膝を抱えて座っているキュリオスは、恐る恐る、ヴァーチェの方を見た。……もう怒っていないのは分かるのだけれど、やはり何というか…さっきの今なので少し怖い。
そこは分かったらしい。テーブル傍の椅子に座っていた彼は手にしていたカップをカチャリとテーブルに置き、溜息を吐きながらこちらを向いた。
今、エクシアとデュナメスは居ない。ハロとHAROを送り返そうとしたら帰ってくれなかったので、仕方なく庵に入れようと悪戦苦闘しているのだ。自分たちと違ってあの球体たちは許可を得ていないために入れない、らしい。
悲しいと思う。折角の新しい『友達』なのに、このままでは、こっちで一緒に眠ったり出来ない。庵の外にはあまり出ない方が良いのは事実らしいから、外で眠るなんて事はヴァーチェもデュナメスもエクシアも許してくれないに決まっている。
寂しいなぁと、思う。思ってしまう。
いつも隣にいた彼が居ないから、尚更。
「…だって、僕らとアリオスたちは二人で一組でしょう?だから、欠けてると……とても悲しくて、寂しくて、辛いんだ……みんなも同じなのに、何で我慢できないんだろう…?」
「それは仕方ないと思うが」
優しげな声色に、え、と顔を上げる。
そこにあったのは苦笑を浮かべつつも、瞳に優しさと理解の光を浮かべているヴァーチェの姿だった。
「俺たちより、おそらくは君たちの方が繋がりが強いからな。セラヴィーは杖、ダブルオーは剣、ケルディムは銃の形をしているが、アリオスだけは人型……しかも容姿は君と瓜二つだ。特別な結びつきを感じても無理はない。双子のような物だろう?」
「けど、アリオスは後ろのはねてる髪が上向きだよ?目つきも鋭いよ?」
「誰が同一だと言った……」
眉間を揉みほぐしているヴァーチェにを見て、キュリオスは首をかしげた。
双子というのは性格はともかく、どこもかしこもそっくりな物だと思っていたのだけど……違う、のかもしれない。
「少しの違いは無視できるだろう……」
「……少し、なの?」
「絶対に少しだ」
「そっか……」
力強く断言されて、ではそうなんだろうなと納得する。そもそもヴァーチェは間違いを言うことが滅多にないのだし、無条件で信用しても問題はないだろう。
そっか……と何度も頷いて、じゃあ、このままで良いんだと思って嬉しくなった。
本当に、嬉しい。このまま未来を楽しみに想っていても良いと分かって。
それが顔に出ていたのか、呆れ顔でヴァーチェが一言呟いた。
「…再開したら、抱きついて頬にキスでもしてやればいいだろう」
「なななななななななっ!?」
「……冗談だ。だが、まぁそのくらいまでなら許す。唇にしてみろ、アリオスのヤツ…ただではおかん」
「え?アリオス!?アリオスの方なのヴァーチェ!?」
頬を紅く染めながら叫ぶが、あんまり効果は無かったようだ。
ヴァーチェも、楽しそうに笑っていたから。
凜、と鈴が鳴る。
楽しげに、愉しげに。