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物凄くほのぼのカタロンが書きたくなってできた文章。
ほのぼのっていうかなんっていうか……クラウスさんが可哀想小説?
02.半開きの口
子供というのは、何をやるのか分からないものだが……
「……何やってんだ?」
カタロンの基地内で、ライルは目の前の光景に思わず半眼になった。
自分は呼ばれてこの場所に来た。CBに身を寄せて情報を流したり、ガンダムの操縦練習と忙しい身なので、理由に後半は関係ないが…少し打ち合わせをしなければならない。潤滑な情報伝達ができなければ、どれほど重大な情報を持っていたところで意味はない。使うことが出来ないのだから。
というわけで足を踏み入れた部屋で…どうしてだか、子供がいた。
子供がいて……根っこのついた花を付いていた。
そして、その花を自分の呼び出した本人の方へと近づけていた。
「………いや、本当に何コレ…」
「おにーちゃん誰?」
入り口傍にいた見張り役…らしい子供が、自分を見上げて首を傾げる。
そこには曖昧に笑って、ポンと頭を叩いて問いかけた。
「何やってんの?」
「えっとね…お兄ちゃんが口ひらいて寝てたの」
「うんうん、それで?」
「だから、そこに花をさしこもうって話になって…」
何だか話の雲行きが怪しくなってきた。
しかし全てを聞かなければと思い、若干不自然になりつつも笑みを浮かべたまま、ライルは続きを促した。
「…で?」
「ちょうどいい花がなかったから……お外にあった花をぬいてきたの」
「根っこごと?」
「うん」
こくんと頷く子供は、どうやらそれが…とんでもない事であるとは思っていないようだ。そういう話ではないとは思うが、茎で綺麗に切られている市販のものならまだしも、野生の花というのは、さすがに。しかも、付け加えると花の根っこには土が付いたままである。
これは止めないといけないんだろうかと思いつつ、ライルは実行部隊らしい子供へ制止の声を上げることなく、見張り役の子供に、しゃがんで視線を合わせた。
そして、ニコリと微笑んで。
「どうせイタズラするんなら、このペンやるよ」
「……?」
「ちゃんと油性だから安心しな」
不思議そうな顔をして油性マジックを見ている子供の頭を、優しく撫でる。
「いいか?花をいけるのは止めて、代わりにこれでラクガキしてこい」
「ラクガキ?」
「ほっぺに花丸でも書いてやれ。それから瞼の上にもう一つ目を書いてやるんだ」
「おめめが四つ!」
キラキラと顔を輝かせている子供に、心の中で成功した!とガッツポーズを作りつつ、あと一押し……と言葉を続ける。
「そうそう。目が増えて、きっとお兄ちゃんも喜んでくれるだろ」
「……なワケないでしょう」
ふいに、しゃがんでいるライルの上に影が差した。
見上げてみれば……そこには、眼鏡を掛けた女性の、カタロン構成員の一人の姿が。
彼女はくい、と眼鏡を上げて、こちらを向いて溜息を吐いた。
そして今度は子供に視線を向けて、困ったように笑みを浮かべる。
「急に目が四つになったら、お兄ちゃんはきっと困ってしまうわよ?」
「こまる……?」
「えぇ。絶対に」
「……じゃあ、やめる」
シュンとうなだれた子供の頭に手を乗せた彼女は、ついとこちらを向いて油断ならない笑みを浮かべた。
「この事、クラウスに報告するわよ?」
「……お好きに」
それだけで済めばいいのだが……後でこってりと絞られそうで怖い。
とっととガンダムでトレミーに戻るべきだろうかと考えつつ、何かを忘れているような気がして首を傾ける。何か、大事なことだった気がするのだが……。
何だっただろうと考えて、もう一人の子供の方を見て思い出した。
油性ペンによる危機は去った。
だが、花による危機は残っているのだ。
「おい、お前もう止めっ……」
ライルは慌てて叫び、残りの二人もハッと向こうへ意識を向け。
そして……
クラウスがどうなったかは、皆様のご想像に。
ただし、このあと子供二人組とライルはこっぴどく叱られます。クラウスさんに。
正座までさせられます。