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結局、今まで出番のないスローネを。でもドライはいないよ。名前が多分変わってるし。
スローネツヴァイ……いや、アルケーガンダムはいじけていた。
言葉のアヤでなく、本当に。
「何で俺だけ敵サイドなんだよ……何でドライと敵対すんだよ……ていうかドライって今も機体あんのか?……名前変わってるかもなぁ……ていうか何て言うか……」
「分かった分かった。とりあえず落ち着け」
アインはそう言って、席に着いているアルケーの前に紅茶のカップを出した。茶菓子は既に出しているので、わざわざ新しい物を出す必要はないだろう。
四つの席の内一つだけ空いていた、アルケーの隣の席に腰掛けて、ションボリとしている弟の頭を撫でてやる。中途退場してしまった自分には無い気苦労を、弟妹たちにさせてしまっている事が少し悔しい。
ならばせめて駆け込み寺ぐらいにはなってやるべきだろう。
「ツヴァ……じゃなくてアルケー……大変、だね」
「だろ!?」
カップの中に入っていたスプーンでクルクルとかき混ぜてから、机を挟んで真ん前に座っていたキュリオス改めアリオスを、ビシ、とそのスプーンの先で指した。
「いやぁ、やっぱアリオスなら分かってくれると思ってたぜ…」
「ちゃんと俺らも分かってるからな?」
「あ、知ってる知ってる。じゃねーと俺たち兄弟の様子を身に来ねーだろうし。で、ダブルオーとセラヴィーは?」
キョロキョロと室内を見渡して、首を傾げる。
「アイツらいねーの?からかって遊ぼうと思ったのに」
「あの二人はミッション中だそうだ」
「ミッション?」
こんな夜中に何が。
困惑していると、苦笑しながらケルディムが口を開いた。
「潜入捜査だ。セラヴィーのマイスターが、自分から参加するって言い出したらしくてな」
「それでバックアップとかの話もあって、二人は一緒に出かけていったんだ」
「ふぅん…てーかよ、お前ら、そういうこと言って大丈夫なのかよ?」
一応仮にも喋る気はないのだけど、自分は『敵』側なはずなんだけども。
するとキョトンとした表情になって、アリオスが頭を少し傾けた。
「アルケーは喋らないよね?」
「ん?まぁな」
「なら大丈夫だよ」
ホンワカとした微笑みを浮かべて、彼は続けた。
「僕、そのくらいはアルケーのコト、信頼してるつもりだよ?」
「うわ……俺、凄く泣きそう……兄貴、泣いて良い?」
「泣け。好きなだけ泣いて良い。が……後でな」
今はお客様がいるからと付け加えられ、少し赤面する。
確かに、彼らの前で大泣きするのは些か問題だろう。アインならば兄だし、別に自分としても問題はないのだけど……やはりアルケーも男子であり、格好は付けたいと思う物なのだ。たとえ優しい言葉を兄弟以外から掛けられて、酷く感動していたとしても。
「……泣くほどのことか?」
「お前に分かってたまるか……ミハエル殺されてパイロットかわって、勝手に本体は改造されて……挙げ句の果てに、お前らに追い回されるんだぜ!?そんな状態で他人に優しくされて、涙ぐまないヤツっているのかよ!?」
「あー、うん、分かった。悪い」
ポリポリと頬を掻いて、ケルディムは明後日の方向を向いた。
その後、ハッと思い出す。彼の元パイロットを殺してしまったのは、そういえば自分だった。正確には自分に乗っていたアリーなのだが。
……こうしてみると、自分の立ち位置の悲しさが良く分かるという物だ。
自分じゃ何もやる気は無かったのに、パイロットの操縦一つで……しかもそのパイロットが戦争中毒者…悲観したって誰も怒らないだろう。ここら辺はMSやMAの悲しい宿命だと諦めるしかないのだろうが。
クッキーを取って口に運び、一つ、溜息。
「ホント、俺らの立場って不便だよなぁ…」
「そこは言ったらダメだよ、アルケー」
アリオスは困ったように笑いながら、紅茶を一杯飲んだ。
「僕らは変わらずそういう存在なんだから」
「……だな」
変わらないなら、それも抱きかかえて楽しむしかない。
ふっと笑って、ふと顔を上げる。
「……?アルケー、どうかしたのか?」
「んー…俺の出番っぽい。行ってくる」
そして、アルケーは立ち上がった。
数分後、ダブルオーとセラヴィーを目にして、来るんじゃなかったと本気で後悔した。
中々アルケーも大変だろうね…。