忍者ブログ
式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


三万打お礼のアンケート一位だった「ブリーフィングルームで、刹アレ」です。






 それは、廊下を歩いていたときのことだった。
 暇なのでダブルオーの所に行ってこようかと歩を進め、偶然ブリーフィングルームの前を通りかかったところで……そういえば、と思い出す。この部屋の中に通信端末を置いきっぱなしだったのに、取りに行くことを忘れていた。
 ならば忘れないうちに取っておくべきだろうと部屋に入って……固まった。
 部屋の隅で彼が寝ていたから。





~  四年ぶりの寝顔  ~





「……」
 どうしてこんな場所で。
 無言の中にそんな思いを込めて見るのだが……寝ている相手にそんなものが通じるわけもなく、彼は何の影響も受けずに、そのまま微かに肩を上下させて眠っていた。
 部屋の隅で、壁にもたれ掛かって両足を抱えて、とても小さくなって眠っている様は……何となく彼に似合う気がする。部屋の真ん中で大の字に寝るなんて似合わないし、それをするとしたら、強いて言えば今はいない彼の片割れの方だろう。彼の方もやるとは到底思えな……いや、何かやりそうな気がしなくもないが。
 とりあえず通信端末を取っていこうと辺りを見渡してみて……二度目の硬直状態が刹那を襲った。
 自分の通信端末は、彼の直ぐ傍にあったのだ。
 どうするべきだろうと刹那は頭を悩ませた。あれを取りに行くには彼の傍に近寄る必要性があり、そんなことをすれば彼が起きてしまう可能性がある。せっかく良く眠っているというのに、邪魔をしては悪い。場所が場所なので、起こさなければならないけれども。
 このままダブルオーの元へと行こうか、それとも起こすことを覚悟で彼の傍に依って端末を取るか。あるいは最終手段だが、何も無かったと言うことにして部屋に戻るか。
 さて、どれにするべきだろうか。
 少し考えて後、刹那は端末を取りに行くことにした。起こしてしまったら残念だが、もしも起きなかった場合は……こっそり、寝顔でも見てみることにしよう。その後でちゃんと起こそうとは思っているが。何せここは公共スペースだ。自分のように用事がある者も、特に用事がない者も入ってくる場所で……そこで寝続けるのはどうかとも思うわけだ。
 室内に入ってドアを閉め、歩み寄りながら思う。
 四年前は彼が無防備すぎて何度も見ることが出来た寝顔だが……四年経った今、果たして彼の寝顔に変化はあるだろうか?希望としては変わず穏やかであって欲しいが、それは無理な相談だろう。四年間、ずっとあんな、とても酷い状況だったのだから。四年前でもごくたまに苦しげな顔をしていたりしたから、今なら……尚更かも知れない。
 そんな顔は、見たくない。
 だから……ある意味だが、祈るように彼の顔を覗き込んだ。
 結果。
「……変わってない」
 少量の驚きと共に、刹那は呟いた。
 本当に信じられないことに、彼の寝顔は相変わらず穏やかだった。それどころか、以前よりも安堵に満ちているようにさえ思える。
 願ってはいたが想定外の表情であったことに虚を突かれた刹那は、信じられない……と、傍にあった端末の存在を忘れて彼の寝顔を見た。
 どうしてここまで穏やかに、安心して、完全に心を預けたみたいにグッスリと眠っていられるのだろう。自分が顔を覗き込める程に近くにいるのに、身じろぎ一つしないのはどうしてなのか。警戒心という物は、どこに。
 しばらく食い入るように見つめていたのだが……ハッと我に返って、忘れてしまわない内にと端末に手を伸ばす。
 それから、彼の肩を揺すって起こしにかかった。
「……アレルヤ、起きろ」
「ん……」
 軽く身じろぎをして、それから彼はクルリと自分に背を向けてしまった。
「あと五分……」
「……」
 寝ぼけているらしい。
 どうしようかと思案したのは一瞬だった。
 刹那は以前ティエリアから聞いた彼の起こし方を思い出し、実行に移す。
 つまり、首筋を後ろから前へツツツ…と滑らしてみた。
「ひゃうぅぅっ!?」
 効果は素晴らしく抜群だったようで、ビクリと体を震わせる彼を見て、ティエリアは正しかったと心中で頷く。ただ、どうやって彼のこういう弱い場所を見つけたのかは、是非とも後で、じっくりと訊いてみたい物だが。場合によっては……まぁ。
「世界の歪みと断定して、駆逐でも…」
「あぅ………あ、刹那?」
「起きたか、アレルヤ」
 ようやく目覚めたらしい彼を見て、直ぐにティエリア抹殺計画を頭の隅に追いやる。そんなことは後でも出来るので、今はこちらである。
 ぼうっとしながらも体の向きを九十度ほど変え、最初に眠っていた状態と同じ様になったアレルヤの隣に座って、刹那は手元にあった通信端末は手に持ったまま、アレルヤの方を向いた。
 見られているアレルヤはと言うと、目が覚めたものの、まだ少し眠たげな表情でこちらへ視線を寄こした。少し驚いている様子で。
「その起こし方…ティエリアかと思ったよ……」
「……彼から教わったからな。いつもこういう?」
「うん。そーいう起こし方だよ、刹那………………って刹那!?」
 ようやく現状を呑みこんだらしい。
 口をパクパクと開けたり閉じたりしている彼に、こくりと頷いてみせる。
「あぁ、俺だ」
「……どうしてここに?」
「おいていた通信端末を取りに来た。そう言うアレルヤは?」
「僕?僕は……」
 チラリと、アレルヤは壁にある大画面の方を見た。
 刹那も彼に倣ってそちらを向く。
 あったのは、たくさんのデータが流れる画面だった。
 これは……?と視線で彼に問いかけると、アレルヤは少しだけ赤面して俯いた。
「えっとね……ほら、僕って今というか…ここ四年間の社会とか何だとか……あまり理解できてないでしょう?」
「……まあな」
「だから頑張って勉強してて、どうせなら一度にたくさん覚えられたらな…って思って」
「それで、」
 流れるデータを眺めつつ、刹那は続きを引き継いだ。
「一度に出来るだけ多く情報を見るために……と?」
「うん。結果は全然だったけど……」
「当然だろう、それは」
「だよねぇ……出来たとしてもティエリアとスメラギさんくらいかな?」
 僕が挑戦するには無謀すぎだったよ。顔が赤いままにそう言って苦笑を浮かべるアレルヤを見て、ふと、刹那はさっきの疑問を思い出した。すなわち……どうして、とても安心した様に眠っていたのか、ということ。
 だから訊いてみれば、彼はキョトンとした面持ちになった。
「僕、そんな風に寝てた………………というか刹那、寝顔見た!?」
「しっかりとな」
「え、ちょ……どうしよう、何か恥ずかしい……」
「…今更だな……四年前も何度も見せただろうに」
「いやまぁ、そうなんだけどね?うぅぅ……改めてみると、何か恥ずかしいんだよ…」
 アレルヤはそう言って、耳まで赤くしてさらに縮こまった。
 どうしてこんな反応を……と、今度は刹那が苦笑を浮かべる。四年前は何でもないようだったのに。四年も空白時間があれば、と考えればこの反応も分からなくはないのだが。人が変わるのには十分すぎる長さだ。
 というか。
「アレルヤ、話が逸れてるぞ…」
「え?あ!ホントだ……ごめんね。えと……そうそう、僕が安心しきって寝てたこと、だっけ……?」
「あぁ」
 頷けば、アレルヤはうぅんと唸りながら顎に手をやり考え始めた。
 結論が出るまでの、その少しの間の沈黙を心地よく思っていると、あ、と彼は嬉しそうな声を上げた。
 答えが出たのかと訊けば、うん、と答える声。
「ここが僕にとっての帰る場所だからだよ。それに……クルーのみんなは家族、みたいなものだから、ね」
「……家族」
「そうそう。家にいたら落ち着くものなんでしょう?なら、そういうことだよ」
「そうか……」
 つまり、自分も『家族』なのか。
 それを嬉しく思う反面、少し物足りない思いも抱く。出来ればもう少し、家族よりもトクベツでありたいと思うのだけれど。
 だが……今は、それでいいかもしれない。
 これからも時間はあるのだから、その間に変えていけばいいのだ。
 僅かしか残っていなかったとしても、少しでも、一歩でも変えていけばいい…。
 そんなことを思っていると、ふいに、肩にトン、と重みが加わった。
「……?」
 見れば、そこにはアレルヤの頭が乗っていた。
 しばしの混乱の後、状況を理解して刹那は溜息を吐いた。
「まだ眠るか……」
 完全に起きたと思ったのだけども……違ったらしい。
 相変わらず穏やかな寝顔を浮かべて眠る彼を見て、もう起こすのは止めることにする。部屋が部屋なので誰かが来るかも知れないが、その時はその時。場合によっては自分が相手を駆逐すればいいだけの話だ。
「…ゆっくり休め」
 出来る限り優しく声を掛けてやると、彼の顔に笑みが浮かんだ、気がした。




ブリーフィングルームじゃなくても良くね?というコトは言ってはいけません。
というわけで、ブリーフィングルームで刹アレでした。
三万打ありがとうございました!
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
カウンター
プロフィール
HN:
式ワタリ
HP:
性別:
女性
自己紹介:
ガンダム大好き生物。キャラも好きですが、機体も大好きです。実は(?)、今は軽く三国伝にすっ転んでます。
最新CM
[09/28 ナワ]
[06/15 オシロマミ]
[11/02 banana]
[11/02 式ワタリ]
[11/01 犬っぽい]
最新TB
バーコード
ブログ内検索
フリーエリア
忍者ブログ [PR]