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四万打企画②、発動いたします。
…というか、アンケートより先にコレの方が案としては出てたけれど。
これを更新している間、『王の庵』は更新ストップします。
…もしかしたら、たまにupするかも、ですが(こそっ)
01. 平穏は赤黒い炎に呑まれて消えた
いつもと同じ日常だった、はずだった。
昨日と何も変わらない。朝は寝坊して起こされて、二人っきりで楽しく朝食を取って。村で暮らしている他の同族たちの手伝いをして小遣いをもらって、大切な片割れに何か買い与えたりして……ここらで隣人と合流してみたりして。
何も変わらなかったはずなのに。
夕刻、空が赤く染まる頃。
村も、紅く染まった。
視界いっぱいに広がる紅は日の光だけではない。血の色、炎の色、全てが入り交じった凶悪で凶暴なアカイロ。
その光景が、信じられなかった。
あそこで内蔵をぶちまけて壁にもたれているのは、サービスだと言って、要りもしない野菜を押し付けてきた節介焼きの女性。
向こうに俯せになっている首が無い男性は……親が早くに死んで、それからずっと迷惑なほどに自分たちを気にしていた叔父だろうか。
そして。
今、振り上げられた凶刃の前に曝されているのは。
『……ッ』
呆然と刃を見上げている隣人と、それを守るようにしっかりと抱きかかえている自分の片割れ。
考える暇はなかった。
ただ、走った。
走って……剣を振り上げていた男の、振り下ろされた刃を横から蹴り飛ばした。
その行動は上手くいき、逸れた剣は二人の直ぐ傍の道を抉って止まる。
突然のことに隙の出来た男の側頭部を蹴りつけ、完全に沈黙したのを確認して、へたり込んでいる二人を引っ張り起こす。
『逃げるぞ!』
『うん……っ』
頷いた次の瞬間、片割れはハッとした様子で、ドンと自分ともう一人を突き飛ばす。
何故?そう思ったが、その疑問は直ぐに解消された。
自分たちと片割れの間に……否、片割れの周りを囲うように、光の壁が出来ていた。もしも自分たちが元の場所にいれば、壁の生成に巻き込まれて無事には済まない…そんな位置に、壁が。
『これはこれは面白い』
壁の出現に困惑していると、ふいに声が響いた。
バッと上に視線を向ければ、浮いているニンゲンが見える。
そのニンゲンはクツクツと楽しそうに言った。……良いサンプルが手に入ったと。
『サンプル……?』
『人外どもの生態構造を調べるためのサンプル。にしても……面白い。人ならざるモノどもが、まるで人間のように互いを想い合うなんて』
男の言う言葉、全て。
それは、聞き捨ててはならない言葉だった。
だが、何かをするにしても自分には力がない。
『では、コレはもらっていくよ』
代わりに村への攻撃は止めさせようと……片割れと共に消える前、その男は言った。
だが、止めようと止めまいと、自分たち二人以外のヒトは、この村にはいない。
自分たち以外にあったのは、モノとなったヒトビトだけだった。
そして、モノたちも、赤黒い炎が呑みこんでいった。