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02. いつか運命に変わる偶然
「おい、そこのお前」
「……?」
町外れの誰もいない、廃墟の様な場所を歩いていると、ふいに呼び止められた。
何気なしに振り返って見えたのは、見も知りもしない……軍人。しかも何人も。
どういうことかと刹那は困惑した。おかしい。理由がない。帯剣はしているが、それだけで軍人に呼び止められることはないだろう。入国の際に問題ないという話を聞いているし、それを軍人が知らないわけがない。
ということは別の要因があって然るべきなのだが、生憎、刹那には心当たりはどこにもなかった。旅人としてのモラルは十分に守っているはずだ。
だからこそ解せないのだ。
どうして、軍人は全員が全員、酷く険しい顔をしているのかが。
「少し付いてきてもらう」
「……俺が何かしたか」
「いいや」
その返事に、刹那は軽く目を見開いた。
問いかけに答えがあったことにもだが、返事にも驚かされる。
何もしていないというのに、どうして連れて行かれなければならないのだろうか?
「何故だ」
「お前はこの土地の一般人と似てもにつかない」
「……まぁな」
異邦人で旅人で、帯剣までしていたらそれは似ないだろう。
それが何だ?と首を傾げていると、軍人の一人が言った。
「だからだ」
「…………………は?」
「怪しいから連れて行く。それだけだ」
さらりと、相手は何でもないように言っているが……勝手過ぎるにも程がある。
乱暴すぎる連行理由に、刹那は付き合う事を止めることにした。
腰に吊している剣の柄に、誰にも気付かれないように自然な動きで手を伸ばす。殺す気はない。ただ脅しをかけれればいい。そして、とっとと国から出てしまえばいのだ。今までもやってきた手段である。
カチ、という音と共に若干ほど鞘から刀身を出した、その時。
空から巨大な火の玉が降ってきた。
「……っ!?」
「お前、勝手に動くんじゃ……って…え?」
一瞬早く察知して慌てて飛び退った刹那は無事だった。
だが、軍人たちは、一人が呆けた声を上げただけでリアクションも起こせず。
全員が瞬時に蒸発した。
灰すら残らない惨状を呆然と眺めている内に、とん、と廃墟の上に降り立つ影を目の端に捉える。黒いローブに、フードを目深に被った誰かの姿を。
この人物が犯人か……と視線を向けると、自分が見ている中で相手はフードを取り、
「危ないところだったな、名も知らない誰か。僕が通りかからなければ、連れ去られて殺されていたぞ?……そして話を変えるが、軍隊に追われたくないのならば僕と一緒に来い。取って食う気もないし、ヤツらと違って殺す気もないから安心しろ」
涼やかな赤の瞳に刹那の姿を映した。
状況に追いつけずに唖然としていると、相手は紫の髪を風に遊ばせながらフッと笑う。
「僕はティエリア・アーデという。君は?」
「……刹那・F・セイエイ」
「そうか。では刹那、僕に付いてきてもらう」
どうやら、付いていくことは決定事項らしい。
呆れながらもティエリアという名前らしい相手を見て、手を剣から離す。
助けてくれたのは事実だし、付いていくことに異論はない。