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天気雨…かぁ……途中から虹になってるきがする…けど。
とにかくほのぼのしたのが書きたかったのです。
03.天気雨
四年間で、世界は結構変わったらしい。
けれど、普通の街はあまり変わっていない気がする。
たくさんの店が並ぶ表通りを歩きながら、アレルヤは思った。
まぁ、そちらの方がホッと出来るけれど。何せ四年間、とても長い間を世界から隔てられた場所で過ごしていたワケであり。突然たくさんのことが変わっているよりは、こうである方がありがたい。
「ね、ティエリア。昔、一緒に行ったあのお店はまだあるのかな?近場だよね」
「あぁ……あのカフェか。確か残っていたかと思うが」
「そっかぁ…繁盛してるのかな?」
「さあな。ある程度の利益は出しているだろうが」
隣を歩くティエリアはそう言って視線で、そちらへ行くのかどうかと問いかけてきた。
それにアレルヤは少し悩んで、コクリと頷く。社会見学というか何と言うか……とりあえず、細かい変化は肌で感じた方がいいだろうと言うことで街に駆り出されたのだが、久しぶりの普通の街に来てまでそんなことを意識する余裕はない。はしゃぎたい気持ちでいっぱいだった。
やはり外は、良い。空気はよどんでいないし、人はたくさんいて笑顔もたくさんで。
「何食べよっかな……ケーキとかかな、こういうときって」
「僕は甘ったるい物は遠慮する」
「モンブランとか?あ…メニューとか変わってるのかな…?」
「四年だからな。有り得なくはない」
有り得るかも知れない、と続けられて少しだけ落胆する。
もしかしたら美味しかったチーズケーキも、お土産にと買っていったクッキーも無くなっているかも知れないのだ。店は残っていると、ティエリアが言っていたから確実だが……たとえそうだとしても。
にしても。ティエリアの言い方だと、この四年で一度も例のカフェに行ったことがないような口ぶりである。それでよく自分が言った店のことを的確に当てることが出来たもので……さすがは暗記力が優れている彼、だ。……あるいは他の色々なことも覚えているのかも知れない。
うんうんと納得しながら歩いていると、ふいに、鼻の頭に冷たい感覚。
見上げれば、水滴が落ちてきた。
「……え?」
晴れているのに、水滴というのは。
一瞬どういうことか分からなかったが、直ぐに合点がいった。
天気雨。
「ティエリア、早くカフェに行こ!このままじゃ濡れちゃう!」
「分かった……と言いたいところだが…カフェはそこの店だぞ」
「あ、近!?」
そうして。
何とか雨が酷くなる前に入ることが出来たアレルヤたちは、そのまま席に座って注文して、雨が上がるまでノンビリしようと言うことになった。
ふぅ、と息を吐いてメニューから消えていなかったチーズケーキにフォークを入れて、ゆっくりとガラス越しに外の風景を見る。
晴れている中で、雨粒が降っている、ちょっと不思議な光景を。
「直ぐ止むかな?」
「だろうな」
コーヒーを飲みながら、向かいに座っていたティエリアは静かに頷いた。
「天気雨だ。空に蜘蛛も少ないしな…そう長くは続かないだろう」
「そっか…ちょっと残念かな」
「何故だ?」
「だって風景が綺麗だから」
明るい中で降る雨は、キラキラと光を反射してとても綺麗だった。
だが、直ぐにその光景も見ることが出来なくなるのかと思うと……はぁ、と溜息を吐いて切ったチーズケーキを口に運ぶ。残念だった。
ただ、雨が止まずに降り続けるのも困る。唐突だったから、雨具なんてものは自分もティエリアも持っておらず、それでは降っていたら濡れて帰るしかなくなってしまうのだ。それは……出来れば風邪なんて引きたくないので遠慮したい。
もぐもぐと咀嚼しながら、あ、と思いつく。
「ティエリア」
「何だ」
「虹、架かったりするのかな?」
だとしたら見たい。とにかく見たい。
四年ぶりとか何だとかは関係なく、純粋に見たい。
その思いが伝わったのか、ティエリアはフッと笑う。
そうしてコップを再び口に持って行って、近づける前にポツリと呟いた。
「架からないとも言い切れないな」
カフェを覚えていたところとか、最後の優しげな言葉とか、そんな微妙な箇所でティエアレ。
さり気ないのもいいと思うんだ…。