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「大佐ぁ…何でコイツらと仲良くしてんですか!?」
「固ぇコト言うなって。ほらバカ、テメェもクッキー食えよ」
「誰がバカだ!俺にはパトリック・コーラサワーっていうちゃんとした名前がなぁ!?」
「あ…あのパトリックさん!紅茶淹れましたけど飲みますかっ!?」
「お……おう」
男性陣三名の様子を見て、マネキンはフッと笑った。
ミハエルが貶し、コーラサワーが怒り、沙慈という少年が仲裁に入る。
ミハエルは沙慈に対して敵対心を抱いていないし、コーラサワーもまた同様。したがって、この中で数少なく戦いから遠い位置にいるこの少年の仲裁は、実にしっかりと機能していた。
中々…面白い光景である。
構わないというのに半ば強引に沙慈が淹れてくれた紅茶を飲みつつ、並び座っているネーナとルイスの方を見た。
「で……君たちの話は本当なのか?」
「簡単に信じてもらえないのは分かるけど、ホントよ。ね、ルイス?」
「……」
こくりと頷く金髪の少女……ルイスの表情には、嘘を吐いているような様子はうかがえない。ネーナもまた同様で、たしかこのトリニティの末っ子は感情が良く出る方だったから、きっとコレは本当なのだろう。
しかし……とソファーの背にもたれ掛かる。
その話が本当なのだとしたら。
「それは『月代』が関与しているな…」
「……『月代』?」
「あぁ」
キョトンと目を丸くするネーナとルイス、何だ?とこちらを見るミハエルと沙慈、そして……コーラサワーは焦っていた。
「大佐!それは凄い秘密じゃなかったんですか!?」
「その通り。やたらに喋ってはならない秘密だな」
「じゃあ何で!」
「…被害者がいる」
チラリとルイスを見れば、コーラサワーはグッと詰まった。何も知らないままに『力』に翻弄されるというのは人間であれ、異端であれ、その辛さは変わることがない……それを彼は分かっている。
「私もあまり詳しくは知らないのだがな……一時期、軍に身を置いていたことがある」
「軍って……あぁ、都の狩人連中のコトか」
「基本的に都では『軍』と形容されるな」
「あ、だから『大佐』なの?で、そこのバカは部下だったとか?」
「大佐、に関しては正しいが……パトリックに関しては違うな」
彼とは、軍から身を引いた後に出会ったのだ。
狩人としての仕事で偶然に組み、その時からコーラサワーは自分に付いてきた。一目惚れしたから、と本人は言っているが……当時は疑ったものだ。軍で余計なことまで知りすぎた自分を、裏で都の実験を握っている存在が消しに来たのでは、と。それほどまでに唐突だったわけだが……今では、そんなことは思いもできない。
「……とにかくだ、その時に私は月代、という存在を知った。人間でも異端でもない、別の種族。『奪う力』を持ち……都の真の支配者として君臨している」
「人間の都を……人間以外が統べている……んですか?」
「矛盾だろう?」
驚いている沙慈に、くつくつと笑って返す。
初めて聞いたときには自分だって信じられなかった。
けれど、今では疑う余地もない。
「だが、これは本当だ。ルイス・ハレヴィ……君の声は間違いなく彼らが奪い去った。そして……君臨者であることは、私が保証しよう。知識でなく、経験で保証する。
現に私は、それを知ってから何度も命を狙われているのだから。
虚実ならば、そのようなことは起こりえないだろう?」