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イライライライライライライラ。
そんな擬音語が聞こえてくるようだとライルは肩を竦めた。
原因は、紛うことなく目の前で腕を組み、トントンと右の人差し指を上下させ続け、瞳を閉じて、イガイガのオーラを纏い続けている青年だろう。
分かったから、と溜息を吐く。
確かにいつの間にかアレルヤが『消えていた』ことに気づけなかった不甲斐なさ、不安さ、不透明さ、不可解さ。どれも彼の気持ちで、そこはライルも分かる。心が勝手にさまよい出ることが以前もあったようだが、ここまで近くにいて気づけなかったことは無かったらしい。そして、彼が嘘を言う理由はない。
気絶しているケルディムの、人形とは思えない……あるいは銃だとは思えない柔らかな頬をプニプニとつつきつつ、壁にもたれ掛かっている彼を見る。
「どうすんだ?アレルヤ探しに行くのか?」
「行けるかよボケ。コイツを置いていけるか」
コイツ、と言って指さしたアレルヤの抜け殻を見て、そりゃなぁ……と苦笑する。確かに置いていくことは出来ないだろう。何せ、彼はとんでもなくブラコンなのだから……自分みたいな人間、あるいは他人と一緒に放置して行けるワケがない。その程度に信頼がないのは知っている。
やれやれと呟いて、ふと、自分の膝に頭を乗せているケルディムに視線を再び向ける。
……思ったのだが、この衣装の下はどうなっているのだろうか。
「気にならない?」
「なんねぇよ……」
何気なく言ってみれば、呆れたような嘆息が返ってきた。
今のハレルヤなら頭は別の事でいっぱいだろうから、と納得してライルの体にもたれて寝ているデュナメスを起こさないように慎重にケルディムの衣装に手を掛ける。
「やっぱりツルペタかねぇ」
「本気でやんのか?」
「当然。思い立ったが吉日ってな」
「……何か違う気がすんだが」
「気のせい気のせい」
ジト目で見てくるハレルヤに笑い返して、まずは……と上の服を脱がせる。動きやすくシンプルな服だったので、実に簡単に脱がすことが出来たのだ……が。
「継ぎ目もないし……俺らとあまり変わらないな」
「てーか、全く違わねぇと思うんだが。……人形がこんなんでいいのかよ」
「俺に言われてもな…」
人形ではなく生き物だと言われても通じそうな彼の上半身を見て、下半身は……止めることにした。そこはさすがにマズイ気がする。
再び服を着せながら、ふと心臓があるだろう部分に手を当ててみれば。
「……あ、心臓はねぇんだ…心音が無い」
「さすがにそこまで生き物っぽく出来なかったってことか?」
「どーだろうな」
ここまで生き物そっくりに作られると、敢えて心音の無い構造にしたのではないかとさえ思えてくる。彼らは人形で、生き物ではないのだと伝えるためにそこだけ……なんて思えてくるのだ。
考えすぎだとは思うけど。
「……なぁ」
「ん?」
「コイツらって、壊れても動けるのか?」
「……だから俺に訊くんじゃねぇよ」