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拍手再録です
~留守番組~
「失敗だったかなぁ……」
「何が」
「買い出しに行ってもらった二人のことだよ、ハレルヤ」
そう言って、アレルヤはハァ、と溜息を吐いた。
「大丈夫かなぁ……ティエリアとライル、なんて」
「クジで決めたんだし、不平はねぇだろ。不満があってもな」
「それも何だかなぁ…」
まぁ、片割れが言いたいことは分かる。ティエリアがライルを毛嫌いしているのは周知の事実。なのに組で一緒になった二人のことが、どうなってしまうのかと酷く心配だと、つまりはそういうわけなのだ。
だからなんだと、ハレルヤは思うわけだが。
ピコピコとゲームをしながら言葉を返す。
「こういうのってアレだろ?運命みたいなもんだろ?」
「こんな運命は遠慮したいんだけど……」
「ンなモン、どっかにいるカミサマとやらにでも頼めよ。俺は知らねぇ」
それも神様とやらがいれば、の話だが。
ちなみにハレルヤは無神論者である。
「ここが平和なんだし良いじゃねぇか」
「それはそうなんだけどね……やっぱり不安だよハレルヤ…」
「……だからって見に行くなよ」
見るからに落ち着きのない片割れに、半眼になって釘を刺す。そうでもしないと、本当に出て行きかねない感じがした。せっかく家に二人きりだというのに……それを、そんなくだらない理由で中断させてたまるか、というのがハレルヤの正直な気持ちだった。
ゲームを止めて、隣に座っていたアレルヤにもたれ掛かる。
突然の事に驚いている気配を感じつつ、口を開く。
「行くの防止。こうでもしねぇと本当に行きかねないしな。あと眠ぃ」
「大丈夫だよ、行かないよ……ていうか、眠いんだ」
瞼を閉じれば、クスリという笑い声が耳に滑り込んだ。
「いいよ。おやすみ…ハレルヤ」
「おう。アイツら四人の内、誰でも良いから帰ったら起こせ。俺の寝顔をアイツらに見せてたまるか」
「はいはい」
最後の言葉は苦笑混じりだった。
(2009/01/04)
~買い出し組~
ティエリアはイライラしていた。とてもイライラしていた。
夕食の買い出しに出ているからではない。そこはクジで決めたので、さほど思うところはないし…運にまで呪いをかけるほど、狭い心の持ち主ではないつもりだ。ちなみにクジに買ったハレルヤの「ざまぁみろ」的な表情にイラッときたのは、そこは当然とする。
それよりも問題は……
「お、こっちの方が安いな」
……隣にいる彼だろう。
彼、つまりライルは、慣れた様子で品物を見て、安く新鮮な物を選んでカゴへと入れていく。おかげでティエリアはカートを押すだけで良いのだが……何だか気に入らない。これが、これまたクジで勝って家で留守番をしているアレルヤだったら違うのだろうが、ライルという点で若干の苛立ちを覚える。
にしても…それを差し引いても、彼の手際の良さは賞賛に値するだろう。
「ライル、やけに慣れているようだが…?」
「ん?あぁ、一人暮らししてたしな。出来ないと生きていけないって」
「てっきり出来合いの物ばかり買っていると思っていたが」
「最初はそうだったけどな…そうすると金があっという間に無くなるんだよ」
必要だったから慣れた、ということか。
成る程と納得しつつ、ティエリアは足を進める。
「今日のレシピはシチューだ。次の目標はジャガイモだな」
「ジャガイモって…そんなん買うなら兄さん連れて来いよ…」
「ロックオンは刹那とオモチャ屋だ。仕方あるまい」
しかも、少し前から約束していたのだと言うし……ならば、優先すべきはそちらだろう。目的がガンプラと、それをより良く仕上げるための器具の補充、というのが悲しいところなのだが。
「あー、プラモな…全く、刹那は何であんな物が好きなんだ?」
「その意見には賛同する。ところで…ライル」
「ん?」
きょと、とこちらを向いたライルに、ジャガイモのコーナーを示してみせる。
「どれが新鮮なのか探せ。それを使う」
「俺って小間使いかよ…」
「文句を言うな。とっととやれ」
「そう急かすなよな…」
(2009/01/04)
~ガンプラ組~
オモチャ屋にたどり着いたのは一時間前。
そして、刹那がガンプラコーナーの前から離れなくなったのも約、一時間前。
つまり……ロックオンは、一時間ほど刹那の横で何もすることなく立っているのだった。
「刹那……いい加減に出ようぜ?」
「ダメだ」
提案してみれば、あっと言う間に却下された。
まぁ、結果は容易に想像することができたので、それほど衝撃は受けない。ただ、やっぱりか……と思いながら諦めの感情を抱くのみである。こんな状態に陥った刹那は、おそらくテコでもガンプラの前から動こうとしないだろう。
その執念をもっと別の所に活かしてくれないだろうかと、少し黄昏れている間も刹那はガンプラの箱を手に取り、じっくりと見ていく。
「ダブルオー……だがエクシアも……」
「…いっそ、両方買えば?」
「ダメだ」
「……そりゃまた何で」
刹那の、モデルの仕事の給料が入ったから買いに来た…はずだ。金ならいくらでも有り余っていると思うのだが。
しかし彼は首を振り、自分の方を見る。
「今回使用出来る金額は五千円までと決定した。ガンプラを買い、線を入れるためのペンなど道具を買うのならば……やはりガンプラは一つだけだ」
「…さいですか」
何か、色々と考えているらしかった。
けれど、それでいいんだろうとロックオンは彼の部屋の様子を思い出して、溜息を吐く。これで際限なく買われた日には、きっと部屋はガンプラだらけ。足の踏み場も無いほどだろう。箱まで取っているから……収納スペースがとんでないことになりそうだ。
その部屋の中心でとても嬉しそうに笑っている刹那まで浮かんできて、慌てて頭をぶんぶんと振る。絶対間違いなくそうなるだろうが、自分が思うだけで実現しそうで怖い。
「よし、ダブルオーにする……ロックオン?」
うっすらと未来に対して怖気を覚えている間に、刹那は何を買うのか決めたらしい。
ダブルオーガンダムのプラモデルの箱を持って訝しげにこちらを見る視線に我に返って、ロックオンはレジへ向かう刹那と共に歩き出す。
自分がいた意味ってあっただろうか?……と思いながら。
いや、約束だから別にいいのだけれど。
(2009/01/04)