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式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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拍手再録です。



~ボクらの日常~

 一日の授業も全て終わって放課後、生徒会メンバーは生徒会室でゲーム……もとい話し合いをしていた。話の内容はどうやったら次のダンジョンがクリアできるか……でなくて、問題解決のための方法だ。
 ……いや、単にゲームをしているワケなのだが。
「平和だねぇ…」
「今だけだろ?」
「……うん、まぁそうだけどさ…」
 きゃのっ八の指摘にガンダムは溜息を吐いた。
 そうなのだ。今は自分はゲームをしてのんびりできている。他の生徒会メンバーだって、同様に思い思いのことをしている。
 けれど、これは絶対に打ち壊される平和なのだった。
 何故なら。
「ガンダムさん、ゼータのやつがまたジ・Oに突っかかって行きました!」
「なー、トールギスⅢ知らない?ウイングとエピオンが止まらなくって…」
「大変です!たんくとサンダーガンダムが喧嘩始めました!」
「ゴッドさんとマスターさんの組み手で武道場が壊れましたぁ…」
「あの三人がまた運動場ジャックしましたよ…?」
「ターンAが穴掘ってるんですけど、どうしましょうか?」
「ノワールが保健室に立てこもって呪術の儀式やってます…」
「ギャンの怪しげな薬が一つ消えました!」
「ガンダム…オレと勝負だ」
 ……という感じで、一気にたくさんの問題が駆け込んでくるからだった。一部、問題と何か違う気がするのも混じっているのだけれど。
 はぁ、と溜息を吐いてガンダムは立ち上がった。
 まずはどれから片付けようか?付き合いだしたら一番長いのは最後の勝負事だろう。逆に一番楽なのはトールギスⅢの居場所を伝えることだろうか。それは、居場所を教えてしまえば自分たちの手が掛からない。一番危険なのは……ギャンの薬か、あるいはゴッドとマスターの組み手…という所だろう。
 とりあえず手分けをしようと、ガンダムは振り返る。
 皆、分かってくれているようで、生徒会メンバーはしっかりとこちらを見ていた。
「じゃあ…」
 そして役割を振って、出撃だ。
 こうして生徒会メンバーは行動を開始するのだった。

(2009/01/04) 
 

~仁義無き戦い~

「くらえッ!」
 気合いと共に自分の顔面目がけて放たれた羽根を体を半歩ほど横に逸らすことで避け、その間際に軽く振りかぶった羽子板で羽根を返す。
 鋭い球となったソレは相手の頬を切り裂かんばかりに飛び、ぼす、と彼の後ろに落ちた。
「またオレの勝ちだな」
「ッ…ナタクずるい!強すぎ!どーせ勝負事って冬休み前に誰かと特訓してたんだろ!」
「良く分かったな」
「分かるに決まってると思うが。いつも放課後、そういう系の音が聞こえていたからな」
「そうか?」
「そうだよ、ウイングの言うとおり。ということで、はい」
 呆れ顔のサンドロックから墨が付けられた筆を受け取り、右頬に丸、左頬には罰、他にも色々と、挙げ句の果てには首筋にまで書かれているデスサイズと向き合う。これはまぁ、全て自分の手による物だが……ここまでいくと、本当に申し訳なく思えてくる。勝負事なので仕方がないが。
 だからこそ、先ほどの彼の殺気の籠もった羽根の弾丸にもそれほど腹を立ててはいない。確かにあれは褒められた行動ではないだろうが、納得できる根拠は有り余るほどあるのだ。何となくだろうと、彼の気持ちはよくよく分かった。そういうわけなので同情の気持ちの方が強い。
「……足にでも何か書くか」
「足ぃ!?ちょ、何でそんなところにいくんだよ!」
「書く場所が無いだろう、そろそろ」
 と、そんな会話を続けている間に次の試合が始まりウイングとヘビーアームズが羽根を撃ち合い始めた。
「あれ、どっちが勝つと思う?」
「十中八九ヘビーアームズだな」
「言い切るね……」
「練習相手はアイツだったからな。ちなみにオレよりもに強いぞ」
「え……」
 呆然とサンドロックが呟いたところで物凄い音が鳴った。
 その、ずごん、という何かが何かにめり込む音にデスサイズが意識を向けた瞬間、ナタクは素速く手の甲に小さくハートマークを書いてやった。足はダメだと言われたので、代わりに……ということで。
 さて、いつ気付くだろうと少し笑う。模様が模様なので、きっとかなり怒られる。

(2009/02/11)


~屋上かまくら~

「いっぱい雪が降ったねー」
「だな。まさかかまくら作れるとは思わなかった」
「雪合戦も出来そうな量だな」
「…よし」
「エクシア、だからって雪合戦勝負をガンダムさんに申し込んできたらダメだよ?」
「……分かった」
 キュリオスの言葉に素直に頷いたエクシアに安堵しつつ、デュナメスは持ち込んだ道具をかまくらの中で展開していた。座布団、もち、それを焼くための道具など……そんなものを入れても、まだ余りあるほどにかまくらの中は広い。出来る限り大きく作ったとはいえ、これほどまでの大きさの物が出来るとは。
 誰かが上に乗っても崩れそうにないな、とかまくらの天井を見ながら思う。ヴァーチェが頑張っていたから、本当にしっかりと天井の役割を持っている。
「そういえば、雪にかき氷のシロップ掛けて食べたら美味しいのかな?」
「おぉい……何で突然そんな話になるんだ?」
「あ…な、何かボク、変なこと言った……の?」
「そーいうわけじゃなくてな、ちょっと気になっただけだから気にするなよ」
 唐突にシュンとなるキュリオスに慌ててフォローの言葉を掛けて、デュナメスは床に当たる部分にある白い雪を少しだけ掬ってみる。
 食べられないことはないだろう、が……
「食べたら腹が壊れるんじゃないか?」
「十中八九、だろうな。だから君が持っているソレは不要だ」
 ヴァーチェが頷き、どこから持ってきたのか知らないがエクシアが持っていたシロップを取り上げた。色は青とオレンジ……つまりブルーハワイとオレンジのシロップ。どうしてそのチョイスなのかは、後で彼に訊いてみようか。
 そんなことを思いつつ、やや不満げな表情を浮かべるエクシアをかまくらの中に引きずり込んで座らせる。
 何をするんだ、と言わんばかりの視線に苦笑しながら答える。
「折角なんだし全員で座ろうってコトだよ」
「……そうか」
 そうして大人しく座ったままでいてくれるところ、彼は結構素直だ。

(2009/02/11)


~冬の昼下がり~

「シャアー、そこのリモコン取ってー」
「そのくらい自分で動け」
「だってお前の方が近いじゃんか良いじゃん別にー」
「……だらけてるな」
「休みなんだしいいだろ?」
 生徒会室にこたつを持ち込んだガンダムは、そこでダラリと時を過ごしていた。ソレは隣に座っているアレックスも、向かいでミカンを消費し続けているゼータも、そのそばで呆れ顔でいるマークⅡも、こたつに下半身をつっこんだままに眠ってしまっているきゃのっ八ときゃの九も同様で、今、自分が使おうとしているシャアも、彼の傍らでほのぼのとしているララァも同様だった。
 渋々ながらもリモコンを取ってくれたシャアに礼も言わずにテレビを付け、正月の特番の中で面白いモノを探す。
「アレックスは何か見たいものある?」
「特にはないです」
「そう?ならララァさんは?」
「私もよ。でもそうね……クイズ番組なんて、アレックスちゃんが見たいんじゃない?」
 微笑みを浮かべたララァがそう言うと、アレックスが目に見えてわたわたとしだした。図星らしく、彼女らしく遠慮しようとしていたらしいところを暴かれて……という状況か。別に、遠慮なんて要らないのに。
 苦笑を浮かべながらポチポチとクイズ番組を探すと、お兄さん良いですよ!と慌てた声が横から聞こえてくるが気にしない。誰も見たいものが無いのだし、どこを映していたって問題はない。
「ガンダム……ミカンが切れたんだが…」
「速ッ!?ゼータ、ちょっとお前食い過ぎだろ!?少しはアレックスちゃんみたいに遠慮しろよな!?」
「……食べていいと言われたんだが」
「限度があるだろッ!?」
 目の前で繰り広げられる漫才もどきも、ガンダムを笑ませた。
 こういうだらけた昼下がりも、たまには良い。

(2009/02/11)
 

~冬の帰り道~

 見上げれば空は白く、ちらちらと真綿のような物が降っていた。
「なーんか、空が降ってるみたい」
 何気なく呟く。実際、そうであるように見えたから。
 すると隣を歩いていた彼が、ピクリと片眉を上げた。興味を引く話だったらしい。
「何故そう思う?」
「ほら、空が白くて雪も白いから。空の白が少しずつ削れて、それで雪が降ってるような感じがしてさ」
 もちろんそんなことが無いのは分かっている。ただ、何となく思っただけなのだ。
 どうだ?と自分よりも背の高い相手へ視線をやると、白いコートを着ている彼はふむ、と顎に手をやった。
「ならば、オレたちは空の中を歩いていると言うことになるのか?」
「……あぁ!確かにそうかも」
 だとしたら、それはとても素敵なことであるように思えた。
 ふふっと笑って、でも、と彼を見る。
「お前のこと、見失いそうだな。髪が白い、コートも白い、よく見たらズボンも白いし、挙げ句の果てにはマフラーまで白ってどんだけ白ずくめだよ」
「マフラーに関してはお前が編んだんだろうが。……逆にお前はやけに目立つな。髪が黒い、上着も靴も黒い、目はまぁ紅だが。どのみち目立つな」
「…そりゃどうも」
 こんな白の中、これで目立たない方が確かに不思議ではある。
 それでも何だか微かな疎外感を覚えてふて腐れていると、柔らかな笑みが降ってきた。
「だが、これならお前がどこにいても見つけられそうだ」
「……へぇ?見つけたら来てくれるワケ?」
「一人が嫌いな寂しがり屋を置いておくわけにはいかないだろう?」
 その言葉に顔が赤くなっていくのを感じた。
 そして叫ぶ。
「んなっ……んなワケないだろ!?誰が寂しがり屋だっ!」
「ムキになるな。否定したいようだが逆効果だぞ」
「うっ…」
「安心しろ。ちゃんと一人きりにはしないからな…『寂しがり屋』?」
 最後にウイングにポン、と頭を叩かれて、デスサイズは顔を赤くしたまま俯いた。
 凄く恥ずかしい。
 ただ、その恥ずかしさはあまり不快ではなかった。

(2009/03/14)


~ふとした疑問~

「オレらって悪い事してなくね?」
 始まりはレイダーのこんな一言だった。
 その言葉に少し、三人は今までの活動状況を考えてみる事にする。
 今日はそれとなくやる気がないので授業は全て寝てた。
 昨日は野球をしていたのを見て釘バットを持って乱入しようとしたら、柔らかくストライクフリーダムに止められて、気付いたら普通に野球に参加してた。
 一昨日はカラミティが万引きしようかとか言ってたけど、結局計画倒れ。
 それからその前は……
「…うわホントだ」
「悪童三人組とか言われてるわりに悪いことしてなくね?」
「ていうかどうしてこれで悪童って呼ばれるわけ?」
 三人は腕を組んで首をかしげた。全く理由が分からなくなってきた。
 それは三人の態度が間違いなく悪いからだが、その辺りは思い至らないらしい。ただ、あまり悪いことを具体的にしていないことしか思い出すに至っていない。
 とりあえず、とフォビドゥンが挙手した。挙手の理由は恐らく『何となく』だろう。
「どーする?改名運動でもやってみるー?」
「それ誰にもの申すんだよ。ワケわかんね」
「そもそも運動って何するかが分かんないしー」
「改名する必要も無い気がすんだけど?悪いことしとけば別に良いんじゃね?」
 悪いこと。その言葉に三名は一斉に考え込んだ。
「やろう、とはしてるよな…」
「ことごとく邪魔が入るだけだよな…」
「それが一番問題なんだよな…」
 どうしたら邪魔が入らないのだろう。
 次の議題に移り、再び黙って考え出す三名。
 恐らく、この高校に在籍している間は、邪魔が入らない状況を作り出すのは不可能だ、ということに気付かないまま。
 
(2009/04/15)


~恋文~

 靴箱を開いて中を見て……思わず、閉じた。
 それから深呼吸をして、もう一度。
「……」
 あった。
 靴箱の中にある上履きの上にある可愛らしい封筒。しかも一つなんて話ではなくて、二つ、三つと……何か多い。最近は来なくなっていたから油断していたのに、これでは安息など遠いどこかへ行ってしまいそうだ。
 ため息を吐いていると、横からヒョコリと覗くデスサイズの頭
「おー、やっぱウイングってもてるんだ」
「まぁ、普通に格好良いタイプだと思うし変じゃないよね」
 サンドロックも苦笑を浮かべ、彼は開いた靴箱の中から上履きを取りだし入っていた手紙を取り出し、とんと纏めて全てバッグの中に突っ込んだ。帰ったら処分するのだろう。というのは置いておいて、何も騒がないのはやはり凄いと褒める箇所だろうか。
 とりあえずと自分の所に来ていたのもサンドロックと同じようにしていると、その隣でデスサイズが靴箱を開いた。
 結果…流れるように出てきた手紙に、彼はピシリと固まった。
「これはまた……多いね」
「昨年度も似たような物だったろう?」
 この手紙はつまりだが、この高校に来たばかりの生徒からの物である。入学式は昨日だったのだ。そして、それは全校生徒が出るようにと定められている物で。
 そんなこんなで、こういうのは恒例行事になっているらしい。
 未だに石化の解けないデスサイズの足下から一通の手紙を取り、断りはいらないだろうと黙って手紙の封を切り、中にあった便箋の文字に目を通した。
「…男の字か?」
「あー、うん、まぁ、遠目で見たら分からないかもねぇ…」
「近くで見ても怪しいがな」
「それはそうなんだけど、ね?」
 言わない方が良いんじゃない?と呆れたように眉を下げるサンドロックに、これが事実だろうとウイングは言って返した。というか、自分たちにとってこの手の間違いは既に『普通』の物と化しているから、思うところはあまりないのである。
 しかし当事者の方はバッチリとダメージを食っていて、ウイングはどうやったらデスサイズが我に返るだろうか、と腕を組んだ。

(2009/05/10)


~その薬、危険につき~

「というわけでギャンさん、毎週恒例のお薬没収の時間です」
「嫌だ!私は絶対に貴様らに屈しない!」
「…毎回結局最後は没収されるんだし、諦めても良いと思うんだけど」
 呆れたようにそう呟いたのは、きゃの九。彼はアレックスと一緒にギャンの作った怪しげな薬の回収に来ていたのだ。二人も必要なのはギャンの抵抗が激しいからではなく、ギャンの作った薬が危険物である上に量が多いからだった。一人では全部運べない量なのである。
 じり、と下がる白衣の理科教師に、にじりっと寄っていくアレックスと、きゃの九。
「生徒のくせに貴様ら生意気だぞ!少しは先達を敬え!」
「敬ってますよ。けどですね、その薬は敬っていても危険なんです」
「ていうか、敬意と危険は全く別物だよね」
「ですねー」
「ぬぅっ……かくなる上は」
 と、ギャンが懐から取り出したのは……一本の瓶。
 しかもご丁寧に、ドクロマークのラベルまで貼ってある品だった。
 え、と思っている間にギャンの手が、瓶のフタに伸び……触れた。
「それ以上動くな!動けばこのフタを開くぞ!」
「ぎゃ…ギャンさん落ち着いてください!そんなことをして故郷のお母さんはきっと悲しんでしまいます!」
「ちょ、アレちゃんの方も落ち着こう!?」
 慌てた調子のきゃの九の言葉に、アレックスはハッと我に返った。何か、少し混乱していた気がする。恥ずかしい。
 アレックスが顔を赤らめて俯いている間にも、きゃの九はギャンの方を向いて口を開いていた。
「……で、その薬ってどんなのなの?」
「ふふふ…聞いて驚くな!これは撒いたらガスを発生し、そのガスを吸った物は直ぐに眠くなると言う代物だ!凄いだろう!」
「凄いのは凄いけど…使ったらアンタが一番最初の被害者じゃない?」
 すぱっと切り返したきゃの九の言葉に、ピシッと音を立てて固まるギャン。……気付いていなかったらしい。いつものことと言えばいつものことだが。
 その後は、動くに動けなくなったギャンを監視しながら、いつものように薬を回収していった。

(2009/05/10)


~自転車、紹介します~

 それを発見したのはずっと前だったのだけれど、何でそれがそこにあるのかと訊くのは今日が初めてだった。先延ばしにしていた理由は他でもなく、兄の内…次男の方が、それを目にするとき酷く忌々しそうに……というか、複雑そうに見るからである。何となくそれを見て、触れてはいけない話題なのかもしれないと……思ったのだ。
 けれど、やっぱり好奇心は募る。
 ついに耐えきれなくなって、GP-03は兄に話を聞くことを決意したのである。
「ねぇ、01にいちゃん…」
 もちろん、訊く相手は長兄である。
 GP-01は、ん?とこちらを見て、どうしたんだ?と首を傾げた。
「何かあったか?」
「えっとね…あの、自転車のことなんだけど…」
「自転車…あぁ、ノイエ・ジールのことか」
「の…ノイエ?」
「あの自転車の名前。オレが考えた」
 格好良いだろ?と朗らかに笑う兄に、ちょっとどういう反応をすべきかと迷う。自転車に名前を付けるのは良いけれど、何というか……あの自転車、GP-02が何とも言えない思いで見ているようなのに…それを知って付けているのだろうか…。
 だとしたら、何となく次兄に同情してしまいそうだ。
 そんなことを自分が考えているとも知らず、長兄は何かを思い出すように言葉を続けた。
「あの自転車な、昔、サイサリスのやつが自転車練習の時に乗ってて」
「…て?」
「そん時にまぁ、色々あったわけで」
「…その色々が気になってるんだよ?」
「そこは…」
「そこは?」
「ご想像にお任せします」
 そう言って長兄はひらりと手を振って、視線を机の上に広げていた宿題に戻した。
 ほんの少し拍子抜けな気分で長兄を見て、それから……まぁ、これで良いのかもしれないと思い直す。どうせ、また機会があれば知ることになるだろうし。
 もしかしたら知らない方が良いのかもしれない…なんて、次兄の事を思い出しながら考えた。

(2009/07/10) 
 

~三人で買い物~

 今日の夕飯はどうしようか。
 カートを押しながらスーパーの中を見て回り、考えるのはそれだった。
 確か、本日はナタクの所の部活は純粋に特訓だけをするのだというから、量はいつもよりも割り増しで作らなければならないだろう。特訓大好き部のくせに組み手とかやって満身創痍で帰ってくるときは、基本的に直ぐに寝るから普段より少なめで良かったりもするけれど。そして次の日の朝は大量に作らなければならないけれども。
 そこまで思い、何だか思考が思いっきり普通の男子高校生じゃなくなってるよな、とデスサイズは苦笑を浮かべた。普通の男子生徒はこんなことを考えなくても良いはずだ。メンバーがメンバーだからか、いつの間にかこういうことを任されていた結果だろうが。
 愚痴はあっても文句はないので、その思考はそこまでで中断して、再び今晩の献立についての考えを巡らせ始める。
 野菜やら魚やら肉やらを見終わる頃にはそれも決まっていて、ふっと足を向けたのは菓子売り場の方だった。そっちにウイングとヘビーアームズがいるはずである。
 何で二人がいるのかは、どこに二人がいるかで分かるという物だろう。実際に菓子が切れていることもあるから構わないが。
 そうして。
 自分の姿、というか自分が押しているカートを見た瞬間に、二人は結構な速さでこちらにやってきた。同時に、カゴの中に入れられる菓子。
 …というのは良いのだが。
「……ウイング、何でこんなにガム入れてんの」
「何となくだ」
「…そ。ヘビーアームズは…抹茶味の菓子パン?」
「…」
 こくこくと頷くヘビーアームズと、どうかしたのかと言わんばかりのウイングに、デスサイズはにこりと笑って言った。
「選び直せ」
「…ガムは嫌いか?」
「嫌いとかそーいう問題じゃねーの!?分かる!?偏りすぎなんだよこのチョイス!」
 こんなの全部買って帰ったら、絶対にサンドロックとナタクから苦情が出る。
 二人だけに任せたのがいけなかったんだろうかと、デスサイズも菓子の選択に加わりながらため息を吐いた。

(2009/08/02)


~危機感知係~

 実は、というべきなのだろうか。
 ゼータは結構絡まれやすい部類に入る、と思う。
 白いあの髪の色もあるし、しかもその髪が長いから目立つし。それにいつもボウッとしているから、標的としては最適なのかもしれない…のだけれど。
 それは外面だけなんだけれどなぁと、メタスはゼータの隣を歩きながら肩を落とした。
 さっきから、ちらちらと向けられる視線が気になって気になって仕方ないのだ。さっき少し確認したら、白辺高校ではない別の高校の制服を着ている男子を数名ほど確認した。しかも、その制服は自分の記憶違いでなければガラが悪い高校の物であって。
 どうしてこういう日に限って二人で一緒に登校なんだろうと、心の中で嘆く。マークⅡとかプラスとかがいたらまた別の反応を相手は見せてくれるだろうに。
 嘆いても仕方ないとはいえ、嘆きたくもなる。
 しかも、最大の『困る点』というのが。
「…ねぇ、ゼータ」
「……どうかしたのか?」
「ほら…あそこの人たち。何か危なそうじゃない?」
「…そうか?」
「……そうだよ」
 …という、ゼータのゼロと言っていいほどの危機感だった。
 これで拙いなとか思ってくれたら、こっちとしても他の対応とかがあるというのに。けれども、こう言うところを含めてのゼータだから、メタスにはあまり色々とは言うことは出来ないのだけれど。
 まぁ、そういう状況なら状況なりに、頑張るしかないわけであって。
 じゃないと絡んでくる相手の皆さんの身の安全が保証できないわけで。
「ゼータ!ちょっと走って学校行こう!」
「…?別に構わないが…」
「じゃあ競争ね。ゼータが勝ったら、今日の晩ご飯の後、デザートにミカン出してあげる」
「…分かった」
 こく、とゼータが頷いたところで、メタスは笑みを浮かべて走り出した。
 こう言うときは、速やかにここから去るのが一番適切な対応なのだ。

(2009/08/02)
 

~この位はお手の物~

「すみませーん」
「ん?あ、サンドロック?」
「どーも」
「…」
「と…デスサイズとヘビーアームズ?どうしたんだよ、三人とも」
 放課後、生徒会室に突然現れた三人をガンダムは驚きながらも迎え入れた。滅多にここに来ない彼らが来たと言うことは、何らかの理由があってのことだろう。
 椅子を勧めると三人は素直に座り、自分も座ったところでサンドロックが口を開いた。
「あの、落とし物でメモっぽいのとか来ませんでした?」
「メモっぽ、て…あぁ、ヘビーアームズの筆談道具?」
「そう言うことなんですよね……忘れたのか、落としたのか分からないって本人も言ってて。だからちょっと訊きに来たんですけれど」
「うーん…悪いけど、そういうのは無かったかな」
「……」
「あ、そうなんだ?なら帰って捜索しよーぜ」
「もしかしたら部屋に置いてあるかも知れないしね」
「…ちょっと待って」
 普通にヘビーアームズの沈黙から続いて会話を始めたデスサイズとサンドロックに、思わずガンダムはストップをかけていた。
 かけたくもなるだろう。無言の後に会話が続くなんて到底有り得ない事だ。
 しかし、ストップをかけられた方はと言うと、とてつもなく不思議そうな顔をしている。
「…?どうかしました?」
「いや…何で無言の後で会話がって…」
「あ、別に筆談しなくても分かりますんで」
「マジで!?」
「マジですよー、マジ」
 デスサイズはさらりとそう答えて、がた、と席を立った。
「んじゃ、そう言うことなんで。お騒がせしました」
「もしも見つかったらお願いしますね?」
「…」
 そうして。
 ガンダムにいくら考えても納得できない不思議を残して、三人は去っていった。
 
(2009/12/15)

 
~幼年者の証言~ 

「…お前ん家って大変だよな」
「……まぁね」
 同じ組の友達の肩にポンと手を置くと、彼はちょっと困ったように笑った。
 まるで『いつも見てるからそれほど、もう気にしないけれど…』と言うような笑い方だなと思ったけれど、多分、きっとそうなんだろう。
 だって。
 今、僕らの目の前でドタバタとケンカしてるのは……彼のお兄さんたちだから。
 正確に言うと……二番目のお兄さんが一番目のお兄さんに殴りかかっている、のだ。
 仲は良いんだろうなぁ、とは思う。そうじゃなかったらお兄さん二人で彼を迎えになんて来てくれないだろう。来るとしたってどっちか二人だけだろう。
 ただ、一番上のお兄さんが問題らしくて。
 二番目のお兄さんの名前で遊ぶから困ったもの、らしい。
「なー」
「何?」
「お前であの二人止められない?」
「…えっとね、先生が言ってたよね」
「何を?」
「『くんしあやうきにちかよらず』って」
「……そーいや言ってたっけ」
「ボクは『くんし』っていうのじゃないけど…」
「いや、お前けっこう頭いいじゃん。『くんし』でイケるって」
 正直、僕も彼もその言葉の意味を理解しているわけじゃないけれど、何となく意味は分かってるから納得は出来た。『くんし』というのが何なのかも、当然ちゃんと分かっているわけではないけれど、何となく言いたいことは分かるので使えるわけだ。
 ていうか、こういう言葉を使うのって大人みたいで格好良いし。
「…でもさ、あの人たちどうすんだよ」
「そろそろ止まるころだと思うけど…」
 彼がそう言ったところで、二番目のお兄さんの蹴りが一番目のお兄さんのにヒットした。
 どうやら今日は二番目のお兄さんが勝ったらしい。

(2010/05/006)


~街中散策~
 
 その日、晴れ空を見て散歩に行きたいと言ったのはアリオスで、暇だったので付いて行くと言ったのはキュリオスだけ。他の面々は面倒だと言ったり、用事があると言ったりで……結果、二人して街へと繰り出す事になった。
 そうして今、二人は奇妙に自動販売機が欠けている自販機コーナーの傍を通っている。
 ……何で欠けているのだろう。撤去でもしたのだろうか…でも一つだけ…?
 キュリオスは少し奇妙なその景色に違和感を覚えたが、空ばかり見ているアリオスはそんな物に気付きさえしなかったらしい。空が青い事が何よりも嬉しいのだと言わんばかりに上機嫌で、満足そうに口を開いた。
「良い天気だねぇ…」
「…あぁ、そういやそうだよな。青すぎて空に喧嘩売りてーくれぇには良い天気だな」
「…何でそうなるかな…」
 普通に良い天気、だけで良いじゃないか、と。
 半身は拗ねるように口にしたが、生憎とそんな言葉に揺れ動くようなヤワな心は持っていない。ハン、と軽く笑って受け流してやった。
 そんな態度に対してか、アリオスははぁ、とため息を吐きだした。
「……もう…ひねくれちゃってるよね、君って」
「お前が思ってる、そこまでヒネてはねーよ。本当のひねくれ者だったら、とっくの昔に空に喧嘩売ってんだろ」
「喧嘩、そもそも売れないじゃないか…空と地上じゃ随分と距離があるもの」
「やろうと思えば出来るかもしれねぇぜ?試してみてやろうか?」
「止めてよ…君がそんな事言ったら、本当にしちゃうんじゃないかって不安になるから」
「良いじゃねぇか」
「良くないよ!?」
 と、そんな事を話している間に路地は終わってしまったらしい。
 急に開けた視界と、目の前で横に流れる人ごみの多さに二人して何となく口を閉ざし。
「……昼飯、勝手に外で食って帰るか」
「…怒られないかな」
 互いに先ほどとは全く関係のない話をして、タクシーやワゴンなどが通る車道の脇にある道の、その人ごみの中に入って行った。

(2010/06/06)

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