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白いお題も久々ですか。
刹那の話です。



09.0がひとつ多い



 駆け回って走り回って逃げ回って惑い回って。
 ようやく敵襲があまり無い場所へとたどり着いた刹那は、建物の影に隠れるように座り込んだ。敵襲がないとはいえ、所詮は『殆ど』である。警戒するにこしたことはない。ここでは、一瞬の油断が命取りなのだから。
 足元に転がっている同年代であろう子供の死骸を見て、何とも思わないことにはもう……慣れた。戦場においては、慣れるしかなかった。
 彼らは死ぬときまで、神の御許へ行けると信じていたのだろうか。信じて、死ぬ瞬間も至福を抱いていたのだろうか。悔いは、無かったのだろうか。
 神の元へ行けると信じ、そのまま逝ってしまったのだろうか。
 それは不幸なのか、幸せなのか、刹那には分からない。世界の中の一つの虚構に巻かれて、それに気付くことなく死んでいくことは、ある意味では幸せなのかも知れない。けれどそれは、可能性が閉じていることでもある。
 そんなのはごめんだ、と銃を握る手に力を込める。
 この世界に神はいない。救いなんて物もない。祈りはどこにも届かない。死んだ後に行ける場所なんて、どこにだって存在しない。
 だから生き抜く。
 生きぬいて、生き抜いて、閉じた……否、閉ざされてしまった可能性を、虚構をこじ開けてでも見つけ出してやる。
 仲間たちに自分の考えが伝わらなくても、自分は絶対に死なないし、出来うる限りでは仲間たちも救ってみせる。死んでしまえばそこで可能性は閉じてしまうのだから。たとえ命を救って憎まれようと、後悔だけはしない。
『ガガッ……の……ガッ……神の御許……聖戦……………ガガガ…』
 ふいに、直ぐ傍に落ちていた通信機から音が漏れた。
 またかと、刹那は顔を顰めた。
 この言葉は聞き飽きた。神などいないのに、さも、いるかのように話される言葉。全てが憎らしく、全てが憎悪の対象だった。時折流れるこの通信を聞いたせいで、何人もの仲間たちがMSに特攻していったのを、果たして通信機の向こう側にいる大人は知っているのだろうか?
 知っていようと知るまいと、関係はない。
 とにかく、不快だ。
 刹那は通信機をたぐり寄せ、壊してしまおうとそれを振りかぶった。
 だが。
『今…ガッ…御許へ行った……ガガガッ…』
 いつもと違う言葉に、ピタリと動きを止める。
「御許へ行った………犠牲…者、か?」
 一体、何故、このような放送を。
 訝しく思いながらも理由を考えてみれば、それは案外簡単に分かった。
 こうやって犠牲者の情報を伝え、それだけの子供が『神の御許』へ行ったのだと、そう思わせてやる気を向上させる。
 そういう手口なのだと、そう気付いた瞬間に刹那は激情のまま、それを地面に叩き付けていた。
 しかし通信機は壊れることなく音をはき出し続ける。
『……ガガガッ…………四人………ガッ…』
「…四?……四人、だと!?」
 その言葉を聞いて、思わず刹那は叫んでいた。
 そんなワケがない。至る所に死体があるこの場所で、そんな生やさしい数字が出てくるわけがないではないか。そんなの、どこのおとぎ話なのだろう。
「ふざけるな……ッ」
 現実はそんなに甘くない。最低でもその十倍は犠牲者がいる。
 …きっと、それ以上の犠牲者がいるのだろうけど。
 何で、と刹那は思った。
「何故……世界は…」





いつもより短いです。
…刹那も、きっと頑張ってたんだ。
自分だけでなくて、誰かのためにも多分。だってほら、仲間の一人を止めてたし。
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