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番外編・3


 二人の心配は杞憂に終わり、マリナが買ってきた三つの菓子は全て普通の、同じものだか種類が違うという統一された物だった。

「というわけで、シーリン、はい、これは貴方に」
「私のは別に良かったのだけど……」
「良いの。たまには上司らしいところを、ね?」
「……上司とは違う気がするが」

 菓子が案外まともな物だったからだろう、刹那は幾分か安堵の表情を見せていた。
 それを見ながら、シーリンは半分押し付けられた菓子を受け取り、袋も一つほど受け取って、中にその菓子とリンゴを一つ入れておいた。
 それから、リンゴの入っていた袋の方も同じように菓子を入れる。

「そういえば、今日ってラサー、家にいるのかしら?」
「いるでしょう。あの人は滅多なことがなければ街に出てきませんもの」
「まぁ、滅多に来てしまえば外れに住んでいる意味がないな…」

 しかし、だからといって出ていないという事にはならない。
 先に確認を取っておくべきだっただろうかと悔やみ、あの状況ではそもそも出来なかったかと思い直す。今回のこれは百%マリナの思いつきによるものであり、事前確認など出来るはずもなかった。というか……出来るとしたら、それは未来予知能力保持者くらいのものだろう。生憎、シーリンはそんなものではない。

 様々な能力を保持しているという異端のうちの誰かならば、持っている可能性もあるだろう。あと、あるいは本来ならば特殊な力を持たないハズの……人間の中にも、いるのかもしれない。

 人は、こんなことを聞けば一笑に付すだろう。人間に出来るわけがないと。
 けれど、シーリンは知っている。人間の中にも妙な力を持つ者がいるということを。
 そして……その中の二人が、直ぐそばを歩いている両名なのだということを。

「あぁ、そうだわ。刹那、ラサーの所に行った帰り、よかったら貴方の住居に転がり込みたいのだけれど、良いかしら?」
「……は?」
「突然なんだ?って顔をしているわね、無理もないけれど。で、良いの?」
「…先に理由を訊きたい」

 帰ったら政務でも何でもあるだろうと、言外にそう述べている刹那の顔には呆れが色濃く出ている。それに…諦めか。
 そんな彼の様子にさえ微笑んで見せ、マリナはふっと王宮の方を見た。

「だって、今日は私を嫌っている皆さんが来るようだから。あんな場所にいたら、正直……参ってしまうわ。暗殺だって有り得そうなの」
「…シーリン・バフティヤール、本当か?」
「えぇ。姫様の言うことは事実よ。政務とも責務とも関係ないから、王宮から一晩ほど出ていて問題無いのも事実」

 始まりは、補佐役の一人が、王宮で宴を催そうと言い出したことだった。
 あまりに唐突な事を訝しく思い、招待された客が誰々かを調べてみれば……誰も彼もがマリナを良く思っていない人物。しかも全員、過激派。
 ……これで警戒するな、というのは無理があるだろう。
 それを話すと、彼は今度は完全に呆れだけの表情を浮かべた。

「…そいつはバカか?」
「逃げてくださいって言っているようなものだものねぇ…」
「子供だから分からないだろうと、甘く見ているのよ」

 何事でも甘く見すぎていると、その内に手ひどい仕返しが来ると思うのだが。
 多分、今回だって例外ではないのだろう。
 何故なら相手は自分、そして『この』皇女なのだから。

 

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