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「成る程……君は眠り姫の妹君だったか」
「いやいや、弟なんですけど」
「では何と呼べばいいだろうな?」
「聞いちゃいないなこの人」

 人形たちがワイワイとやっているのを横目に見つつ、今は、とこちら側で同じ『ひと』としてのグループの相手をしなければならない。そこは良いのだが、何だかこの金髪の誰かの相手は面倒そうだ。ハレルヤにチラリと視線を送れば諦めろとの返答があった。おそらく弟妹というのは彼とソーマのことだろうし、関係者であるのだろうから……この金髪に関しては彼の言うことは間違いないだろう。

 もう一人の知らない誰はと言うと、ソーマが相手をしていたりする。あちらは酷く穏やかな空気が流れていて羨ましい。出来れば自分も平和でのんびりとした空気の中で会話を行いたいのだが。多分無理だろうとは分かっている。

「ハム、そいつはライルってんだ」
「ライル……ふむ、かの眠り姫の御家族となると、姓はディランディで良いのかな?」
「あぁ。俺はライル・ディランディだ」
「よし!では君は今から茨姫というこ……」

 ゴッと鈍い音が響き渡った。
 その音が金髪の頭に金属製の調度品がめり込んだが為に生まれたもので、それを投げたのが人形の一人のキュリオスそっくりで目つきの鋭いのであることに気付くのに一拍ほどの間を必要としたが……その後は皆、わきまえていた。

 誰もが何も見なかったことにして、変わらず先ほど行っていたことを続けようとする。
 ライルも当然その一人だが、被害者となりかかっていた自分は他の皆ほど先ほどどおりにはなれず、心の中には調度品を投げた彼への感謝の気持ちがいっぱいだった。

 扱い慣れてるなぁと感心していると、後頭部をさすりながら何だったんだ?とでも言わんばかりに首を傾げている金髪に、もうこれはどうしようもないんだと気付いて脱力する。あそこまでクリーンヒットだったのに気絶すら、負傷すらしていないとは。

「ふむ……茨姫はご不満か?鈴のき……でなかった、アリオス?」
「俺はねぇけどキュリオスが混乱してるから止めろ。なぁ?」
「え?いやその……良いんですけど…何で男性に姫……ですか?」
「気分だな」
「……そうですか」

 諦めたような顔になったキュリオスはこちらに同情の視線を送って、我関せずの態度を取ることにしたらしいアリオスに引き摺られていった。
 二人を見送って、再び。

「俺はライル・ディランディ。分かる?ラ・イ・ル、だぜ?」
「何だ?その単語を入れればいいのか?」
「違ぇわこの金髪変態馬鹿狩人!コイツは普通に呼べって言ってんだよ!」
「普通に?何故だ?」
「テメェのあだ名が恐ろしいから以外に何があんだ!?」

 ギャーギャーと叫ぶハレルヤとそれを軽く受け流す金髪、そんな彼ら微妙に良いバランス関係を感じつつ、何かを忘れているような気がして首を傾げる。このとんでもなく非日常的な出来事のせいで、何か重要なことが飛んでしまった気がするのだが……。

 さて何だっただろう。
 ……という問いの答えは直ぐに出た。

「なぁ、ここってどこ?」
「……分からねぇ」
「あとな、アレルヤいないんだけど」
「……え?」
「だからアレルヤ」
「あ……………………………あーッ!?」

 突然光が辺りを満たし、気付いたときにはこんな場所。驚きの連発で気付きづらいこともあるだろうが、まさかハレルヤまでもが思い至っていないとは。いやはや、状況のあり得なさすぎさ加減に拍手を送りたいと本気で思う。

 

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