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前回の 22.三角定規 と繋がってる感じで。
大御所さんとGPの長男次男の話です。
23:ドーナツ
「あっちは上手くいってるかなぁ」
「何の話だ何の」
「ていうかそれ以前に、どうして君たち自然とここに」
ホワイトベースのとある一室で、突然の来訪者を迎え入れたガンダムは呆れながらも二人を見た。三人目はいない。遊びにいかせたそうだ。
が、むしろ自分としては彼ら二人だけよりは末の弟を含めた三人の方が、かなり扱いやすいので何とも言えない。この状態で二人がケンカ……というか片方が片方が怒らせたりしたら、自分だけでは押さえてしまう自身はこれっぽっちも無いというのに。あれはどちらかの気が済むまで続けられるか、末の弟たる彼がどうにかするしかないのだと、こちらではもう諦観と共に頭の中のマニュアルに記してあるのだけれど。
ということは……この状況で何かが起こった場合、決して自分だけではどうしようもないのは確定済みの事実であり。
そうなった場合って、一体どうしたら良いんだろう。
こっそりと頭を抱えつつ、そこはどうしようもないんだろうなぁと思いながら問いの答えを促す。それを訊かないと、こちらとしても対応のしようが無いというものだ。
「で、どうして?」
「あ、そうそう、ガンダムさんにこれお土産です」
「……ヒトの話、聞いてる?」
差し出された長方形の箱を受け取り、じっとりとした視線を浴びせてやると、ニコニコとした笑顔が返ってきた。隣のGP-02が浮かべているのは同情の表情だろうか。彼は自分以上にGP-01のある意味での素晴らしさを知っているから、こうなったらどうしようもないのだと分かっているんだろう。分かっていても懲りないから、毎回のように突っかかっていくのかもしれない。ふと、そう思った。その辺りの事実がどうであったとしても、どのみち勝つことは出来ないのだろう。
箱を開いてみれば丸くて中心に穴が空いている菓子。ドーナッツ。チョコレートがかかっていたり、何もかかってなかったり、形が普通と違ったりと、とりあえず色々な種類をぶち込んだ感じだった。
「えっと、コレは?」
「賄賂です」
「へぇ、賄賂……え……賄賂?」
「はい。賄賂ですけど」
「賄賂ぉ!?何の、え、本当に何の賄賂!?何に対して!?誰に対してッ!?」
「この状況下で、お前以外に誰がいるんだ……?」
GP-02の言葉にハッと我に返って、ガンダムは軽く頭を振った。あまりに聞き慣れない、というかあまり聞きたくない言葉に少し混乱してしまったらしい。彼の性格なら簡単にそんなことを言い出そうと、それほど疑問は無いというのに。
自分がコレを賄賂として受け取るかはさておこう。そちらよりも、どうして賄賂が必要となるのかが重要だ。
いざとなったら返品可能なようにと箱を綺麗に閉じて、何となく姿勢を正してGP-01に向き直る。
「何で賄賂?」
「実はですね、ほら、悪童三人組っているじゃないですか」
「あぁ……いるけど、それが?」
「そこに後輩さんたちがいるでしょ?」
「うん、それも知ってる」
「その中のカオスに『この時間のアリバイを作って欲しい』と依頼が来て」
「……は?」
アリバイ?それは一体、どうしてまた?
頭の上に疑問符をたくさん付けていると、つまり、と笑顔でGP-01が言った。
「ドーナッツあげるんで代わりと言っては何ですけど、今この瞬間にあそこの後輩三名がここにいたって口裏を合わせて欲しいんです。オレだけじゃ信じてもらえるか五分五分だし、協力して欲しいかなと。あ、ダメっていうのは無しで」
「ドーナッツのクーリング・オフ期間は?」
「ありません」
「……やっぱり?」
「返品不可です」
人間の状態だと余計に胡散臭さの増した気がするさわやかすぎる笑顔に、これはもう賄賂じゃなくって詐欺じゃないだろうかと思っていると、ポンと唐突に肩を叩かれた。
見れば、眉間を揉みほぐしている次男の姿。
「諦めろ」
「……いやホント彼の弟っていう点だけでオレ、GP-02のこと尊敬できそう」
ていうか現在進行形でやってる。
心の中で呟いて、それから溜息。
こっちはこっちで色々と、それはもう明白な原因解明からディスティニーたちが持ってきた手がかりによる犯人捜しまで、たくさんとやるべきことがあるのだけども。
何だろう、これは。今日は野外活動に自分は加われないのか。
そう思うと、他の、奔走している皆に多大な申し訳なさを抱いた。
ていうかゼフィランサスだけだったら本当に信用してもらえないと思う。言葉。