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「そこにいるのは誰だ」
すっと、ケルディムの目が細められたのをダブルオーは見た。
彼が誰かを完全に『敵』として認め、その気配を察知している様子。
それをしっかりと確認したダブルオーはさり気なくエクシアのそばに寄った。意識を周りに向けてみれば最初からそばにいたデュナメスとケルディムだけでなく、キュリオスとアリオス、ヴァーチェとセラヴィーも寄っているようだった。
微かな、臨戦態勢。
それに気付いたのか、ヒトたちも静かに身構えてケルディムが見据えていた方を見た。何か害するモノがいるのだと分かってくれたらしい。
そして、誰もが注目する中。
現れたのは一人の青年だった。
「やぁ、久しぶりだね、数人の人形さんたち?」
「……リジェネ・レジェッタ」
低く、怨念が籠もっていそうな声。
それは意外と自分たち人形の中からではなく、ヒトたちの中から発せられた、
見れば一つの金色の瞳が憎々しげに青年を睨んでいた。けれどもそれは相手には何の効果もないらしく、青年は微かに微笑んでいるままだった。
「ハレルヤも久しぶりだね。怒りっぽくなった?」
「テメェ……まだ生きてたんだな」
「凄い言われ様だけど、うん、そうだよ。僕はずっとここで生きてた」
「人の住んでた場所を燃やし尽くしといて、そりゃないと思うけどな」
「……君は?」
会話に入っていった茶髪青年の事を見て、初めてリジェネという青年は目を細めた。覚えがないというよりは、見たことがあるような気がするけども思い出せない、そんな様子の表情であるように思える。
「…名前、教えてくれない?」
「ライル。ライル・ディランディ」
静かに名乗るライルに、リジェネは数秒ほど考え込む様子を見せて、あぁ、と手を打った。何かを思い出したらしい。
「そっか、君があの二人の子供の一人か。成る程、それならハレルヤと一緒にいることにも納得がいくね。あの頃に友達にでもなったの?」
「生憎だがコイツはそんなんじゃねぇ」
相変わらず敵意しか籠もっていない目でリジェネを見て、ハレルヤは吐き捨てる。それは内容どうこうという事ではなくて、もっと、相手が彼だからこそ何て言う態度にも見えた。
対して肩を竦めたリジェネは、本当に口でやれやれと言いながら溜息を吐き、こちらを向いて眉をひそめた。何か不思議な光景があった、とでもいうような態度に、逆にこちらが僅かばかりの躊躇を覚えた。もちろん、表に出すなんて失敗はしなかったが。
「……ねぇ、アリオスとセラヴィーは?」
「え?」
気付けば、確かに二人がいない。呆けた声を上げたキュリオスの隣にアリオスはいなかったし、驚いて辺りを見渡しているヴァーチェの隣にも、同様に。
一体これは?と訝しく思っていた、その時。
リジェネの後ろに時空の裂け目としか言い様のない裂け目が現れ、そこから杖状態のセラヴィーを振りかぶったアリオスが現れ。
「くらえッ!」
「父さんの仇!」
そして、杖状態のセラヴィーが力一杯、情けもなく振り落ろされた。