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すんでの所で打撃を回避したリジェネを見て、エクシアは思う。
これは偶然か、ギリギリか、あるいは余裕か。そのどれから来た行動なのか。
そして答えは明白だった。
余裕。それ以外の何者でもない。
確実に避けられると知っているからこその紙一重であり、いわゆる『お遊び』の一環なのだ。そう言い切ることが出来る。何故なら……相手は、自分たち三人の目の前で父を殺した張本人なのだから。
自分たち三人が揃っていて尚、父を殺すことが出来た相手なのだから。
それが指す事実とは、つまり。
「……っと、危ないなぁ。もう少し仲良くしようとは思わないの?」
「…るせぇ。テメェの言い分なんて聞く気もねぇんだよ…」
「それは僕も同感だね。君と仲良くするなんて反吐が出そう。あとね……」
瞬時に人型に戻ったセラヴィーの、首に巻いていた長い布がひらめく。
どうして人型になったのかと首を傾げたが、直ぐに気付いた。そちらであるほうが機動性が高い。そして、アリオスでは彼の力を最大限に引き出すことは出来ないのだ。
「そちらの金眼のおにーさんも、みたいだよ?」
「……だろうねぇ」
ちらり、と相手が視線を向けたのはハレルヤの方。その視界には、きっとライルの姿も入っているだろう。他の三名の姿も……多分、入っている。そういう点で彼は非常に抜け目がない。少しでも隙を見せれば自分がどうなるかを酷く理解しているからだろう。その程度に自分の行っていることの自覚はあるらしい。あるなら直せと叫びたいが。
「…エクシア」
「あぁ、分かっている」
物言いたげなダブルオーの視線に頷いて、エクシアは彼女の腕を取った。
次の瞬間、そこにあるのは自身の身の丈ほどもある巨大な大剣。
「ケルディム」
「はいはい。分かってるよ」
「セラヴィー、お前もこちらへ来い」
「了解っと」
デュナメスの手に二丁の拳銃が現れ、ヴァーチェが先ほどアリオスの握っていた杖を握り、彼らも静かに身構える。
アリオスだけは元からあの格好なので、すっと素速くキュリオスの傍へ向かい、彼を後ろ手に庇うような素振りを見せた。過保護だというのに、それが分かっていながら直そうとしない。彼は多分、ずっとあのままだろう。
ついと視線をやれば、そこにいた五人の人ビトもそれぞれリジェネを見据えており、こちらから打って出る体勢は整った。そう言ってしまって問題はないくらいになった。
どうだ?と視線をやれば相手は……苦笑を浮かべた。
「うわ、本当に嫌われてるなぁ…」
「当然だ。お前が何をしたか、まさかお前自身が忘れたのか?」
「いやぁ、流石にそこまでぼけてないから大丈夫だよ。うん、憎まれるのも良く分かる」
何でもないようにそう告げて、彼は苦笑を別のモノへと変えた。
即ち、微笑みに。
「いいよ。相手をしてあげる。せいぜい早く壊れないでくれるかな?」
自分たちを嘲っているかのような微笑みに。