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本編でハレルヤは、一体何時になったら登場してくれるんでしょうね…。
待ち遠しいですが、状況が何か恐いです。
てちょっとした不安は全く関係ない話です。
16.暖色
ベッドの上にちょこんと置いてあるオレンジ色の毛玉数個と、広げられた手芸雑誌のとある一ページ。それから編み物をするための棒等々。
それらが広げられている様を見て、ハレルヤは小さく息を吐いた。今回は、一体何だ。
『オイ、アレルヤ……』
「あ、ハレルヤ起きた?おはよう」
『おう……じゃなくってだ!』
思わずいつも通りに返事をして、それからハレルヤはビシッとベッドの上のそれらの品々を指……そうとしたが出来なかった。ただ今体のコントロール権を握っているのは、アレルヤの方である。本気を出せば奪い取ることも出来るだろうが、正直、こんな馬鹿馬鹿しいことに全力を出す気は無い。
代わりにため息を吐いてベッドの上に座って棒を持っているアレルヤに尋ねる。
『お前は何やってんだ?』
「えっとねぇ……ほら、そろそろ冬だからマフラーでも編んでみようかなっていう、ね?トレミーの中はともかくとして、外って寒いじゃないか」
『そりゃまぁな』
プトレマイオスの中は冷暖房完備であり、他にも色々な設備が整っている暮らしやすい場所だ。毎日を快適に暮らすことが出来る場所で、ただしそこに暮らすには生命の安否の保証がない、というかなりの悪条件を呑まなければならないのだが。というか、そういう条件があるからこその快適さであり。
そんなプトレマイオスの中なのだから、冬であっても暖かいのは当然である。
だが、クルーたちと違ってアレルヤの場合はミッションで地上へ降りなければならないことだって、当然ながら訪れる。まさか寒いからと拒否するわけにもいかないので、それは完全に避けることは出来ないのだ。
そういう事情があったので、片割れがマフラーを編もうかと考えていることには納得できた。確かにこの季節、長袖の服やコートだけでは寒さを凌ぎきれない場所もある。
『毛糸のオレンジはキュリオスか?』
「そうそう。僕らのパイロットスーツもオレンジだし。暖かそうな色だしね。視覚から暖かくなれたらいいなとか思ってみたりして、さ」
『馬鹿。目で見ただけで暖かくなれるかよ』
「だから気分の問題だってば。何となくで良いんだよ」
『何となくねぇ……』
「そう、何となく」
そんな会話を続けている内にも毛糸はどんどんと姿を変えて、徐々にマフラーの形になっていく。あまりの手際の良さに思わず笑えてきそうだ。こういうことは基本的には、女性の方が良くやるのではないのだろうか。……なのに自分の覚える限りでは、この艦のクルーがそいうったことをしていた場面は無い。
何だか、何かが違うような気がする。
だが、そこにツッコミを入れるのも少し怖いので放っておくことにして、とりあえず……と、何もやることがないので、アレルヤがマフラーを作り上げていく過程を見ておくことにする。それはそれで面白くも何ともないのだが。何もしていないよりはマシだろう。
「そういえばハレルヤ」
『ん?』
手を止めずに言ったアレルヤに返事をすると、彼はやはり手を止めずに訊いてきた。
「君は何色が好き?暖かい色じゃなくて良いから、何か」
『んだよ……また作る気か?』
「うん。オレンジ色は僕用って事にして、君には君が好きな色で作ってみようかなって。どう、かな」
『いらねぇよ』
「え」
『いらねぇって言った』
「……何でだよ。良いじゃんか別に作るくらい」
ちょっとだけ機嫌が斜めに下がったアレルヤに、ハレルヤは思わず吹き出しかけた。
いやもう、何でこんなに片割れをからかうのは楽しいのだろうか。一応さじ加減は大切だが、とうの昔に覚えてしまったので気にすることはない。身についている。だから、まぁ……これ以上やったら完全に不機嫌になるだろうということも分かるわけで。
軽く肩を竦めたい気持ちになりながら、ハレルヤは言った。
『俺はお前のと兼用でいいんだよ』
「良いの?オレンジ色だけど?君ってもっと派手なのとか好きじゃないっけ……」
『んなこたぁどうでも良いんだよ。視覚からも暖かくなるんだろ?』
「それ……君が無理って言ったんじゃなかったっけ」
呆れ顔で呟くアレルヤだったが、直ぐに気持ちを切り替えたのかクスリと笑った。
「うん、でもそういうのって君らしいね」
『はぁ?俺らしいって何が』
「どうでも良いことでは自分を棚に上げるところ」
『そうか?』
「そうだと思うけどな」
早くハレルヤが再登場してくれないかなぁ…。