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あぁ、ダメだと思った。
このままでは、あの『ひと』たちは全員ともがリジェネに壊されてしまうだろう。誰も彼もが強い力を、あるいは意志を持っているのは良く分かる。一目見るだけでしっかりと分かる。けれど、それだけでは世界はどうしようもならないのだ。だって世界は、少しばかり他人にイジワルだから。イジワルというか、興味がないから。
だから、多分、このままやったら結果は変わらないだろう。
それは何だか、嫌だと思う。
良く分からないのだけれど、どうやら自分は彼らに対して何らかの感情を持っているらしかった。何なのかは不明だけれど、それが暖かな何かであることは分かった。
そもそも、自分が何者なのかさえも分からないのに、そんな感情なんて繊細な物が分かるとも思えないから、これはこれで自然なのかも知れなかった。何度も繰り返すようだが、良く分からないけれど。
考えようとすると、考えがどんどんと消えていくのだ。まるで手から砂がこぼれ落ちていくかのように。あるいは書いて置いておいたメモを横からどんどん奪われていくかのように。思考の結果が何も残らない。
困った。
本当に困った。
思考の結果は残らないはずなのに、感情による結論はしっかりと自分の中に根付いてしまっていて、引っ張り抜こうとしても離れない。
こう言うときはどうするべきなのだろうか。
見当も付かなかったけれど、一つ、分かることはある。
つい、と顔を上げて、自分を抱き上げているティエリアを見る。
イトがとてもたくさん絡み巻き付いている彼を。
たくさんのイトはティエリアを放さないように、逃がさないようにとしているかの様で、初めて見た瞬間からイトを取ってあげたいと思っていた。取り方が分からなかったから、取ろうとする素振りは見せなかったけれど。
一方の自分はと言うと、イトなんて生やさしいものではなかった。
もっと切れにくく、重く、身動きを封じる物。
それは鎖。
正直、重くて重くて仕方がない。いい加減に取り払ってみたいのだけど、イトと同じようにこちらも取り方が分からない。全く、困ったことだ。
困った。本当に困った。
けれど、何となく対処法が浮かんできたのも本当で。
まぁ、対処法なんて程ちゃんとした物でもないのだけど。
やるだけやってみようか。
そう思って、自分を繋いでいるのだろう鎖に手を掛け、ただ、切れるようにとだけ命令を下す。それだけだったが、それだけだからこそに強い意志をもって。
そうすれば世界に、この意志が届く気がした。
だって世界はイジワルで他人に興味がないけれど、代わりに、自分には本当に甘いのだ。